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misakiのオールジャンル時事評論!


by misaki80sw
国家と情報機関 その3・・防衛庁情報本部_a0018138_0383432.gif


防衛庁情報本部。
人員は約2000名。
6個の部と通信所から構成されている。
英語名は
「DEFENSE INTELLIGENCE HEADQUARTERS」
略称は「DIH」。

設立は1997年1月。
対外情報収集とその分析を主な任務とする。
防衛庁・自衛隊内の複数の情報組織を統合し、
防衛庁設置法第28条に基づき、
統合幕僚会議の下に設置された。

本部長は、自衛隊の将官クラスが任命され、
副本部長に防衛庁内局のシビリアンがつく。
その下に4名の情報官が補佐役として配置され、

1,各国保安・国防政策情報担当

2,周辺国情報担当

3,周辺国以外の他国情報担当

4,電波情報担当

それぞれの分野を担当する。
1と4が防衛庁キャリアの文官で
2と3が自衛官から選抜される。

組織構成は以下。

◇総務部

◇計画部:情報の配付の計画、業務計画の作成。
     情報伝達。

◇分析部:収集した情報の分析・評価。
     地域別の5つの課に分かれる。

◇緊急・動態部:緊急事態時の情報収集と分析。
        24時間体制での勤務。

◇画像・地理部:衛星画像の解析

◇電波部:電波情報の収集と解析


まあ、ざっと見れば分かると思いますが
「画像・地理部」と「電波部」が情報を収集し、
「分析部」が情報を分析する。
「緊急・動態部」が24時間年中無休で突発事態に備える。
「計画部」は情報本部の全体計画の策定を行い、
「総務部」は事務・庶務担当。

情報本部自体の情報収集ルートは、
公刊情報、電波情報、画像情報の3つしかないが、
防衛庁や自衛隊内の他情報組織からも
情報本部に情報が上がってくる。

たとえば中央調査隊。
全国の各師団の傘下にある調査隊から
情報が集められ、ここで集約される。
任務は情報収集と防諜で、
1973年の金大中拉致事件の際には
ここの部員が関係してるのではないかと
騒ぎになったこともある。

あと、中央資料隊。
内外の公開情報を集めて翻訳・分析を行う
他にも幾つかの情報収集機関が存在する。

さて、防衛庁情報本部の情報収集において
メインになっているのが
電波情報(SIGINT)の電波部と
画像情報(IMINT)の画像・地理部。
以下、この2つを詳しく解説しましょう。


<電波部>

情報本部の定員は2千名。
このうちの半分の千名が電波部の所属。
どれだけ電波情報をこの組織が重視してるかが分かる。

電波部は傘下に6つの通信所を持っている。

◇東千歳通信所(北海道)

◇小舟渡通信所(新潟県)

◇大井通信所(埼玉県)

◇美保通信所(鳥取県)

◇大刀洗通信所(福岡県)

◇喜界島通信所(鹿児島県)

さらに、それぞれの通信所が分遣隊を持っている。

これらの通信所には
「ゾウの檻」と呼ばれる巨大な電波収集アンテナが設置され、
飛び交う電波情報を収集している。

ここから得た情報が電波部に集約され、
地域別に分かれた各セクションの中で
情報の解析、暗号通信の解読などを行っている。

たとえば北朝鮮は第三課の担当であり、
北朝鮮全土で発信される北朝鮮軍の部隊同士の無線交信は
わずか数秒程度で位置を特定する精度を持つ。

1994年6月の金日成死去の際には、
急死が発表されて間もなく、
防衛庁から五十嵐官房長官のもとに
「北朝鮮軍に動き無し。
全土が静まりかえっている」との情報をもたらした。

もともと電波情報の収集と解析は
旧軍以来のお家芸であり、
前大戦中は埼玉県大井町の通信所などを中枢として
米軍の艦船や航空機の動きを
かなり正確に把握していた。

防衛庁電波部の前身は
陸上自衛隊調査部第二課別室、通称「調別」。
さらに、その前は調査第二課二部別室、
通称「二別」と呼ばれていた。

その二別時代に
この電波傍受組織がにわかに世間の脚光を浴びた。
1983年9月1日午前3時26分、
サハリン近辺、ソ連領空にて一機の旅客機が撃墜された。
大韓航空機撃墜事件である。

日本は中曽根内閣の時代で、
官房長官は後藤田正晴。
彼のもとに事件の情報が入ったのは午前8時。
内閣調査室長の鎌倉節からの情報で
鎌倉は後藤田に「大韓機は撃墜されました」と断定した。

内閣調査室(内閣情報調査室の前称)は
前の記事で書いたとおり、

国家と情報機関 その2・・内閣情報調査室

かつて「二別」を実質上傘下においており、
ここから情報がダイレクトに入ってきていた。

自衛隊の稚内の電波傍受基地は
大韓航空機撃墜に至るソ連戦闘機と空軍司令部の
双方の無線のやり取りを完全に傍受していた。

事件発生から5日後、
日米両政府はこの傍受記録の一部を公開し、
国連においても、この生々しい交信のやり取りが
米代表によって公開され、
ソ連は自国の非を認めざるをえなくなった。

この大韓航空機撃墜事件は
自衛隊の電波情報収集力の凄さを見せつけたが、
一方で、この電波傍受組織の持つ致命的な弱点が
浮き彫りにされた。
それは過度の米軍との一体化である。

内調室長から後藤田のもとに
撃墜の情報が上がったのが午前8時だが、
実は米国は撃墜直後に
この自衛隊の傍受無線情報を入手していた。

後藤田の回想録には以下のように書かれている。

  僕はこの情報経路がけしからんと思ったね。
  東京より先にワシントンに報告が行ってるんだ。
  ただ、無理もない面もあってね。
  傍受施設には米軍の担当者もいたからね。

東京より先にワシントンに報告が行ってる?
傍受施設には米軍の担当者がいた?
これはどういうことなのか?

稚内の「二別」傘下の電波傍受基地は、
ソ連関係の無線傍受の専門基地として設置された。
正式名称は東千歳通信所稚内分遣部隊。

実は、この稚内基地には
米軍の通信情報部隊が同居していた。
この通信部隊の名は「プロジェクト・クレフ(CLEF)」。
米空軍電子保安司令部、海軍保安群、
陸軍情報保安司令部の三者によって
1982年に創設された極めて特殊な機関であり、
米国家安全保障局(NSA)の管轄下にあった。

プロジェクト・クレフは三沢の米軍基地や
メリーランド州フォート・ミードの基地と
密接に連絡を取り合っており、
この大韓航空機撃墜の電波情報は
日本の官房長官に届くよりも先に
米国のNSAに流れていた。

後藤田は当時を振り返ってこう語る。

  情報のルートが間違っているんでは
  日本の危機管理体制不足ということになる。
  官邸に情報が上がってくるのが遅いしね。
  日本の国というものはね、本当の意味で
  独立しているのかといったような気がしましたね。

当時の防衛庁の夏目事務次官は
この事件を振り返り語っている。

  プロジェクト・クレフの存在は知っていましたよ。
  存在そのものは事件が起こる前から知っていた。

  防衛庁でも、ごくひとにぎりの人しか知らなかった。
  知らせないようにしてたんです、事実。
  大臣も次官も知らないでおられた方が
  いっぱいいるとおもいますね。

  日本の傍受したものも
  米軍三沢基地に入ってたわけですね。
  みんな入るんです。
  そのシステムが問題であったわけです。後で考えると。
  ただし、そのころは、
  そういうことが問題になるという認識がなかった。
  なぜそういうことがなかったのか。

  ご承知のように、
  日本の防衛のいちばん大事な点というのは、
  アメリカが日本占領中、朝鮮動乱あるいは
  平和条約が発効し引き揚げていったその過程で、
  アメリカが核として残したものを
  日本がそのまま引き継ぎ、
  それが基本になっていることです。
  そのいきさつからアメリカに情報が行くことというのは
  当然みたいに思っていたんですね。

後藤田は後にこの件について夏目を叱責している。

夏目は語る。

  こんなものが生で
  ストレートにいっちゃうとは思わなかった。
  どっかにクッションがあっていくんだろうと
  思っていたんです。それがなかった。
  ある意味では情報管理が
  まだ確立されていなかったことは否めない。
  私が後藤田さんに叱られたのは
  そのことだったとおもいますね。

日本の国家機密そのものの電波傍受基地に、
何故か米軍部隊が同居し、
その得た情報を米国にダイレクトに伝えてしまう。
凄い現実です。

2005年の今、
この「プロジェクト・クレフ」が存在してるのか、
基地内に未だに米軍人が同居しているのかは分からない。

ただ、あれから日米同盟はさらに密接になり、
情報のリンクは当たり前になってきた。
あの時以上の、この種の「情報同居状態」が
行われている可能性は高いね。

同盟国といえど、所詮は他国であり、
こうも情報の半植民地化状態が許されていいものか、
疑問に思ってしまう。


<画像・地理部>

画像・地理部の前身は
陸上自衛隊の中央地理隊。
人工衛星や偵察機から得た画像の解析を行う。

この衛星画像は
以前は米国の民間衛星会社から買っていた。
米国の商業衛星「イコノス」が
1メートルの分解能(識別能力)を持つため、
ここからの画像に依存していた。

しかし、いくら民間衛星と言えど、
そこは米国企業であり、
米国の国益に反する画像は売ってくれない。
米軍のアフガン侵攻やイラク戦争時には
米国は民間衛星会社のアフガン・イラク方面の
衛星画像を「独占契約」し、
他国に流さないようにした。

また、1998年の「テポドンショック」の際には、
米国からもたらされる情報が杜撰であったり、
政治的にねじ曲げられたものであったことから、
日本も独自の偵察衛星を持つべきだという意見が沸騰し、
ついに2003年3月、
2基の情報収集衛星の打ち上げた。
カメラを搭載した画像偵察衛星と
合成開口レーダーを搭載したレーダー偵察衛星である。

この情報収集衛星の画像情報は
内閣情報調査室の「内閣衛星情報センター」に入る。
そこから必要な画像が
防衛庁情報本部画像・地理部に回ってくる。

防衛庁の本音としては
自分らで偵察衛星を運用したかったのだろうが、
「宇宙の平和利用」という過去の国会決議のため、
それは断念せざるを得なかった。

現在、画像・地理部は
わずか三百名程度の人員で切り盛りしている。
米国防省の国家地理・空間情報庁(NGA)の1万人や、
英国の国防地理画像情報庁(DGIA)の千人にも及ばない。


さてさて、防衛庁情報本部について解説してきました。
ここは前回の内閣情報調査室の人員の少なさに比べれば
規模的にはましと言うべきか。
ただ、カウンターパートに当たる米国防省の
国防情報庁(DIA)の一万人以上に比べると
やはり小規模な組織だなと思う。

予算の問題もあるのだろうが
この人数はもっと増員しないとね。
専守防衛とか言って己の手足を縛ってるのだから、
情報には他国よりも敏感じゃなければ困るよ。

最後に一つ付け加えておくと、
防衛庁情報本部は
自衛隊の統合幕僚会議の下に置かれており、
統合幕僚長を経れば
防衛庁長官に報告を上げられる建前だが
実質はそうはなっていない。

あの防衛庁の悪しき内局優越制度によって、

 防衛庁情報本部
   ↓
 統合幕僚会議議長
   ↓
 防衛庁防衛局調査課
   ↓
 防衛局長
   ↓
 防衛庁次官
   ↓
 防衛庁長官

この過程を経なければならない。

この馬鹿馬鹿しいまでの
複雑ルートを通過しなければ情報は上げられず、
途中で防衛局調査課長が「こんなもんいらん」と言えば、
そこで報告が途絶えてしまう。
また、タイムリーに情報が上げられない。
緊急時にこの調子では困るでしょ。

これは前防衛庁情報本部長の太田文雄氏が
「情報と国家戦略」という著書の中で嘆いてることで、
まあ、ここで防衛庁の内局優越システムの是非や
背広組と制服組の争いについて書こうと思わないが、
この種の報告システムの欠陥を改めないと
せっかく情報本部を作って、
良き情報収集と良き分析を行っても、
これでは宝の持ち腐れになってしまうよ。
ここらへん改善を希望します。



防衛庁情報本部

情報、官邸に達せず:麻生 幾 (著)

公安アンダーワールド:宝島社文庫

「情報」と国家戦略:太田 文雄 (著)

誕生 国産スパイ衛星 独自情報網と日米同盟 
 春原 剛 (著)


法の男 後藤田正晴―21世紀への伝言

時代の証言者 (5):後藤田正晴


娘通信♪関連過去記事
国家と情報機関 その2・・内閣情報調査室
国家と情報機関 その1・・敵を知り、己れを知れば
# by misaki80sw | 2005-05-26 00:50 | 日本(政治経済)

中国「靖国が原因」副首相の会談キャンセル

 中国外務省の孔泉報道官は二十三日深夜、
 談話を発表し、呉儀副首相の訪日期間中に、
 日本の指導者が連続して靖国神社参拝問題で
 中日関係改善に不利になる言論を行ったとし、
 「中国側はこれに強い不満を感じている」と述べた。
 呉副首相が同日突然、
 小泉純一郎首相との会談をキャンセルして
 帰国した理由を強く示唆したものだ。
 
 報道官が「不満」を示した日本の指導者の発言とは、
 小泉首相が十六日の
 衆院予算委員会で靖国神社参拝について
 「どのような追悼がいいか
 他の国が干渉すべきでない」と答弁。
 さらに先に訪中した自民党の武部勤幹事長が
 中国共産党の王家瑞中央対外連絡部長との会談で、
 中国の靖国参拝中止要求は「内政干渉」と発言、
 激論になったことを指しているとみられる。
 
 武部氏は二十二日に
 胡錦濤国家主席とも予定通り会談したが、
 中国側はこの後、
 呉副首相の予定を繰り上げての帰国を決定、
 二十三日朝、「緊急の公務のため」との名目で
 日本側に首相との会談キャンセルと帰国を通告した。
 
 中国外務省は孔泉報道官談話に先立ち、
 呉副首相の帰国は
 「緊急な公務」のためとの談話を出していたが、
 副首相が北京ではなく大連に帰着し、
 二十四日からのモンゴル訪問も予定通りと判明、
 日本国内で中国側の名目に疑問や批判が相次いだ。
 このため改めて談話を出し、
 責任は日本側にあるとの立場を示したとみられる。

   (産経新聞)


今日は更新を休む予定でしたが
これを言われちゃ書くしかないでしょう。

まあ、想像どおり「靖国」絡みの帰国だったわけだけど
腹も立つし、許す気もないし、
非礼、無礼、傲岸不遜と罵倒もしたいけど、
ちょっと不可思議なのは
中国は何がしたいのかってことだよね。
こんなガキじみたやり方をして意味があるのかと。

前日の記事にも書きましたが、

中国副首相、会談をドタキャン・・何を考えてるのやら。

ああいうことをやられて
日本側から譲歩するはずはないし、
むしろ国民の反中感情に拍車がかかっただけ。
「効果論」の観点から見るならば
彼らのやり方は無意味としか思えない。

結局、ドタキャンの背景は2つだね。

1,日本の世論の動向を読み誤っている。

2,中国国内の対日強硬世論に押されている。


まず、1の「日本世論の読み誤り」からいくと、
我々日本人のおかれた情報環境と
胡錦涛氏がおかれた情報環境は違うわけです。

我々日本人がテレビでニュースを見たり、
ネット上でブログを見たり、掲示板で議論したり、
そういう情報環境の中で
「中国はどういうつもりだよ?
頭がおかしいんじゃないか?」とか思うけど、
胡錦涛氏はそう思ってないんじゃないか。
胡錦涛氏は「強く押せば日本は必ず譲歩する」と
思ってるんじゃないかな。

胡錦涛氏の情報環境ってのは
まず、中国の民間の情報は信用できないわけです。
なんせ、御用新聞に御用ネット。
言論をビシビシ取り締まった結果、
お上にへつらう言論に成り果てている。

だから胡錦涛氏は
そういう精度の低い民間の情報や、民間の情報分析に
自分の思考整理を委ねるわけにはいかないわけです。

日本の政治家みたいに、新聞やテレビや書籍や
はたまたネット上のサイトやブログから影響を受けることは
情報収集と情報分析の観点において
中国においては無意味なわけです。
だって言論自体が抑制されて歪んでるから。

じゃあどうするか?
どこから情報を得て、
誰の情報分析を参考にすべきなのか?
結局、公的組織の収集情報と
情報分析に身を委ねるしかないわけです。
要するに彼らの情報のパイプってのは
我々日本人が考えてる以上に
狭く細いものでしかないわけです。

この狭隘なパイプから得る情報と情報分析が
正しいうちは問題ありません。
だけど、これが狂えば国家の指導者の判断も狂う。

情報収集官と情報分析官に
日本に対する偏見と思考のバイアスの無い人間を
多数配置しとかないと、
当然、上がってくる情報と分析は狂ってくるわけ。

あの手の非自由主義国家の欠点は
言論の自由の欠如が、思考の幅の欠如につながること。
体制にとって望ましきタイプの人間のみが出世し、
そうじゃない人間は落後してしまう。
情報官と分析官も
型にはまった人間が選ばれがちでしょうね。

だから、我々日本人が見ている日本像と
胡錦涛氏の見ている日本像は
大きな食い違いが生じているのかもしれないね。

  「日本とはこういう国だ。
  日本人の国民性はこうであり、
  こういう傾向性を有している」

胡錦涛氏以下の中国政治指導者層の日本像は
かなり歪んでる可能性がある。
実像と食い違いが大きくなってる可能性がある。

だって、彼らの情報環境は貧しいから。
官の細いルートから上がってくる情報と分析に
依存してるから。

日本から見たら
どう考えても意味のない行動でも
彼らから見れば
「へっへっへ、してやったりだぜ!」って思ってるかもよ。

ここで中国が強硬論で押せば
日本の迎合世論は騒ぎ、政治家は折れて、
日本は譲歩せざるを得ないと大まじめに思ってるかも。

これは中国側の情報ルートの問題だけじゃなく、
日本にも原因がある。
つまり、他国なら
反日暴動などで中国から非礼な仕打ちを受ければ
「暴動での破壊行為を謝罪せよ、賠償せよ」と
首相以下、国民世論が強硬論で沸き立つものを、
日本人の場合、何故か100%怒ることをせずに、
原則論で強固に構えることをせずに、
柔らかく言い、一部に媚態をこめてしまう。

まあ、これは日本人の良さだけど、
他国から見れば、日本の弱気の表れと捉えるだろうね。
で、「じゃあ、もっと強硬に押せば
日本は譲歩するだろう」と計算してしまう。

具体的に言えば、反日暴動の後に、
首相自身が明確に謝罪と賠償を求めずに、
下手に出る発言を繰り返したこと。
ここらへんは日本的には謙虚の美徳だろうが
中国はそうは受け取ってないよ。
「弱さ」の表れと取ったでしょう。

また、先日の訪日ビザの中国全土への拡大と、
新幹線売り込みに際してODAをつけようとしたこと。
これなんか中国的感覚から見たら信じ難いでしょうね。
あれだけ暴動でいいようにやられてるのに
すぐに「関係正常化」を日本の方から行おうとする。
これも弱さの表れと受け取ったでしょう。

だから彼らは今回も強気に出た。
非礼・無礼、そんなことは百も承知。
これだけ我が国は靖国問題で激怒している。
責任は日本にあり。
日本は大胆な譲歩で日中関係を正常化させるべきだ、と。

彼らは日本の世論の動向を読み誤っている。
その原因は彼らの情報環境の貧困さと
日本の他国とは違う態度表明の仕方にある。
まあ、基本的には読み誤る彼らが馬鹿なんだけど、
日本も、国家の原則を前に打ち出して、
シグナルの送り方をもうちょっと考えないと、

 中国の誤解
   ↓
 中国の傲岸不遜な態度
   ↓
 日本世論の硬化

この連鎖を繰り返すでしょうね。

お互いが自己を正当化し、相手の非を声高に非難し、
その過程の中で双方の妥協点を見いだしていく。
これが万国風の交渉の流れであり、
はなっから手の内見せて、媚態をふくむ日本風は
やはり誤解の原因となって国益を損なうよ。


次に2の「中国内の対日強硬世論に押されている」。

これは最近の幾多の中国関係のニュースに接して
日本人もようやく分かってきたと思う。
あの国はバリバリの反日国家であると。

その反日世論を作り上げたのが他ならぬ中国共産党であり、
彼らは共産主義に変わる新たな統治の正統性として、
「反日」と「経済成長」と「対外覇権の拡張」を選んだ。

その自らが育成した反日世論に
自らが押され、怯え、自縄自縛されている。
まあ「ざまみろ」と言いたいとこだけど、
これは彼らにとって外交上の選択肢を狭めている。

外交の手段に柔軟性が無い。
これが最近の中国の対日戦略の特徴。
大胆な譲歩が出来ず、
国内の強硬世論に押されて
強気・強気の連続で突き進むしかない。

逆に言うと、日本にとっては
中国の対日戦略が読みやすくなった。
彼らの手持ちの選択肢が少ないから。
非常に読みやすいね。


さて、今回のドタキャンの背景を
2つ解説してきました。

1,日本の世論の動向を読み誤っている。

2,中国国内の対日強硬世論に押されている。

じゃあ、日本はどうすればいいか。

答えは簡単。
毅然として国家原則を貫けばいい。
単なる精神論・道義論じゃなくて、
実利的にもこれが最強でしょう。

これ以上の譲歩の必要性無し。
これ以上は、びた一文あげません。
で、首相は粛々と靖国に参拝し、
中国は反日暴動の嵐が吹き荒れ、
反日は反政府に転化し、共産党は弱体化する。

なんとも素敵な話しじゃないですか。



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# by misaki80sw | 2005-05-24 22:46 | 中国・台湾関連

<昨日と今日の更新>

政府、中国への新幹線売り込みにODA供与 (-_-#)

イラク情勢再激化・・移行政権と米国の泥沼

中国副首相、会談をドタキャン・・何を考えてるのやら。


今日は本当は
「国家と情報機関」の3で
防衛庁情報本部について書こうと思ってたのですが、
昨日、書店で情報収集衛星に関する本を買いまして、
これを読み終わってから書こうと予定を変更しました。
たぶん、明後日あたりに上梓します。

防衛庁情報本部は
電波情報と画像情報がメインなんで、
衛星画像の知識も入れとかないとまずいかな、と。


さてさて、昨日から保守系の各ブログは
中国関係の話題で持ちきりですな。
ホント、ネタに困らなくていいよ(笑)

実際、今が戦後の日中関係の
巨大な転換期なんでしょうね。

昨日は久々にイラク情勢の記事を書きましたが、
イラク情勢も東アジア情勢と連動しています。
米国を通じての連動ですね。

即ち、米国の現国力から言えば
イラクと朝鮮半島の二正面作戦はきついから。
あっちの情勢が激化すれば
こっちは米国的に手薄と成らざるを得ない。
厳しい状況ですね。

こういうのを見てると、米国という国は
すでに単独覇権能力を失ったと思わざるを得ません。

せめて2正面か2.5正面ぐらいは
単独でこなせないと世界の覇者は難しいでしょうね。
今は1正面だけだもんね。

これから米国は
世界の各地域に同盟国を作り、
そこと提携し、地域の問題を収めようとするでしょう。
「米国+地域覇権国」連合による世界秩序です。

東アジアに関しては
一時期は中国に執心でしたが、
今は日本に傾いていますね。
中国は明確に仮想敵と思い定め始めたようです。


さて、本日の補欠ニュースです。
なんか久々な気がする (^^;)

<国際>

イラクでテロ相次ぎ、19人が死亡
  省庁幹部の暗殺続発


  イラク国務省によると、
  バグダッドの高級住宅街マンスール地区で同日朝、
  国家安全保障を受け持つ同省の
  作戦指令室所属担当官の車が銃撃され、
  同担当官と運転手の2人が死亡した。
  担当官は出勤のため、自宅を出た直後だった。

 このニュースを見てると
 政権内、あるいは軍や治安機関の内部から
 情報が漏れてるんだろうね。
 反政府武装組織のスパイが入り込んでるんでしょう。 

 イラクの治安機関の育成は
 米CIAが担当してるそうだけど、
 同時並行でスパイの割り出しをやらないと
 要人暗殺は止まらないでしょうね。

シーア派権威シスタニ師、スンニ派への報復攻撃禁ずる

 シスタニ師はイラク・シーア派の最高権威。

 スンニ派との確執の中で、彼が報復を禁じたのは、
 暴力の連鎖を嫌ったこともあるけど、
 それと同時に第三者が漁夫の利を得るのを恐れたから。

 シーア派とスンニ派の争いで漁夫の利を得るのは、

 1,アルカイダ等の外国系武装組織

 2,シリア等の近隣諸国

 3,クルド人

 この3つ。


<露参謀総長>北朝鮮の核実験許さず

 ロシア軍としては北朝鮮の核武装は利害に反する。
 ただ、問題は政治の領域で
 プーチン君が何を思うかだね。

 彼としては
 この問題で米国の力が消耗されるのはプラスだし、
 痛し痒しと考えてるんじゃないかな。


靖国に代わる追悼の場を
 金大中・前韓国大統領が講演


 他国人にそんなことを言われる筋合いはない。

 金大中氏、あんた無礼だよ。


<カザフスタン>言論の自由訴え約2000人が集会
カザフなどで反政府デモ=勢いづく旧ソ連諸国の野党
TV放映中止など妨害続く ウズベクで強まる言論統制

 中央アジアは変革の嵐。

 当の中央アジア諸国だけじゃなくて
 ロシアと中国は気が気じゃないだろうね。

 一連の民衆革命で米国はホクホク顔。
 だって武力を使わずに政権を転覆した。
 しかもロシアと中国の裏庭で。
 コストパフォーマンスの観点からいえば
 米国にとって最上の流れでしょう。

 この件、どこかでもう一回記事にします。


<国内・政経>

自民党総裁としてメッセージ送付へ…首相が朝鮮総連に

 人さらいの出先機関にメッセージですか・・。


日本は成熟した国なのか?

 朝日の電波な文章をご覧あれ。

 そりゃ部数も減るさ (^◇^)


個人の判断と国益は違う 奥田会長が小泉首相に苦言

  日本経団連の奥田碩会長は23日、
  放送各社のインタビューで、
  小泉純一郎首相の靖国参拝に関して
  「個人の判断と国益を見ての判断は違うから、
  是非、両方の判断でうまく調整していただきたい」と苦言、
  参拝について慎重な対応を促した。

 君こそ、私情のバイアスのかかった発言はやめなさい。

 この人は三河で自動車売ってるのが一番似合ってるよ。


慎太郎都知事10月国政復帰か

 あり得そうで、あり得ない。
 あり得なさそうで、意外にあり得るかもしれない。

 実現したら嬉しいんだけどね。


外相、中国の対応を批判 異例の会談キャンセル

  町村信孝外相は23日夕、
  中国の呉儀副首相が「緊急の公務」を理由に
  小泉純一郎首相との会談をキャンセルし
  予定を早めて帰国したことについて
  「理由を説明すべきだ。
  最低限の国際マナーは守ってもらいたい。
  先の大使館への破壊活動と一脈通ずるものがある」と述べ、
  中国側の対応を厳しく批判した。

 マッチー、正論ありがとう。

 戦後日本の政界で一番欠けていたのは
 外交での硬骨な正論ですよ。


幹事長が発言撤回 内政干渉批判に中国激怒

 これ見てたら情けなくなってきた。

 感想?
 涙が出てきますよ (>_<)


<国内・社会>

ネットで「香り」配信 NTTコムが実用化

  香りをデータ化し、ネットを通じて
  パソコンに接続された「香り発生装置」に送る。
  香り発生装置の内部には液体香料が入っており、
  データ情報を基に液体香料を調合し、
  香りを発散する仕組みで、
  「ほぼ無限の香りが出せる」(NTTコム)という。

 科学の進歩ってここまで来てるのね。
 香りをデータ化するんだとさ。
 凄いな~!

本日の雑談&補欠ニュース 2005/05/23_a0018138_3384854.jpg


 皆様、文明開化でございますなあ (^^*)


100円ショップ1000店展開へ ローソンが新規参入

  コンビニ大手のローソンは23日、
  100円ショップを新たに出店し、
  今後3年で最大1000店程度を展開する計画を発表した。
  ローソンの商品開発のノウハウや物流網を生かし、
  生鮮食品や日用雑貨を消費税別で100円で販売する。

 インフレなんて
 しばらく起きそうもないね(笑)。


<IT系>

アップル社がインテル製MPU採用検討 米紙報道

 えっ、マジですか?

 長年の相棒のIBMはどうなる?
 モトローラは?

 でも、過去にもやろうとしたことがあるんだよね。
 インテルのチップでマックOSを走らせようと
 両社が極秘に研究したことが。

 あともう一歩のところで中止になったけど。


ネットスケープ、「Netscape 8」の正式版をリリース

 日本語版は出るのかね?

 取りあえず、
 IEエンジンとGeckoエンジンの切換えは
 「Lunascape2」があるからいいや

 *タブブラウザ Lunascape

 Lunascape 2.1が公開されましたよ~


<仰天・面白系>

ショッピングカートを押す古代人の絵見つかる

  大英博物館の
  ローマ時代の美術品を展示したコーナーに、
  石器時代人がショッピングカートを押している絵が
  展示されているのが見つかり、
  博物館側を困惑させている。

 イタズラの絵が気づかれないまま
 数年間も置かれていたとのこと。

 タイトルは「市場に行く古代人」

本日の雑談&補欠ニュース 2005/05/23_a0018138_3392115.jpg


 普通、気づくだろって (ーー;)


遠隔ニワトリ愛撫システム――触感を伝える技術の現在

 ペットを遠隔で愛撫する装置の試作品。
 取りあえず、ニワトリ版で作ったとのこと。

 *概念図
     ↓
 *愛撫装置
     ↓
 *ニワトリには触覚ジャケットを着せる
     ↓
 *で、遠隔で撫でる

 まあ、凄いと言えば凄いんでしょうが (^◇^;)


<その他>

『スター・ウォーズ』に身をささげるファンたち

  シェイン・タージョンさんは、
  愛してやまないこの映画シリーズへの敬意を
  永遠に消えないかたちで残そうと、
  何時間もかけて刺青を入れた。
  タージョンさんのふくらはぎには今、
  ダース・ベイダーとストームトルーパー部隊の
  絵柄が刻み込まれている。

  「この27年間というもの、『スター・ウォーズ』は
  私の人生にとって大きな存在であり続けた。
  これから何があってもそれは変わらないだろう。
  たとえいつかこの映画を見なくなったとしても、
  かつて私という人間と切り離せない存在だったことは
  永遠に変わらない」とタージョンさんは話す。

 ファン魂、恐るべし!


<他のサイト・ブログ紹介>

マリードフットノート:祝辞御礼/文庫版出版のことなど

 まずはこちらのニュースをどうぞ↓

 *宮崎学氏などに賠償命令
  「同和利権の真相」反論本で虚偽記述-大阪地裁


   同和問題を題材にした共著、
   「同和利権の真相」(宝島社)シリーズへの反論本で
   うそを書かれ、名誉を傷つけられたとして、
   フリーライター寺園敦史氏が、
   反論本出版元の解放出版社と作家宮崎学氏を相手取り、
   1100万円の損害賠償と出版差し止めなどを
   求めた訴訟の判決が19日、大阪地裁であった。
   塚本伊平裁判長は虚偽の記述と認定し、
   宮崎氏と解放出版社に110万円の賠償を命じた。

 というけで、この裁判は
 「同和利権の真相」の共著者、
 寺園敦史さんの勝訴となった。

 その寺園さんのブログ。
 最近、更新が止まってたので心配してたけど、
 その意味からもホッとしました。

 解同相手じゃ、
 何があってもおかしくないもんね。


アジアの真実:
 靖国問題 ~日本が中韓に対してとるべき行動~


 更新再開と言えば、こちらもブログもそう。

 産経の「正論」に載った屋山太郎氏の論文の紹介。

 *日本外交を「海洋国家連合」に転換せよ

 この種の構想が公論と成りつつあるね。
 東アジア共同体構想が
 危ういものであることがハッキリと認識されてきた。
 
 中国の敵失に万歳だ \(^-^)/

 
log:5月22日は屈辱の日

 5月22日は、あの小泉再訪朝から一年目。

 logさんの怒りがにじみ出てます。


川崎市の教育を考える会(仮):オーストラリアの性教育

 Bruckner04さんが
 オーストラリアの性教育について考察。

 日本と比較すればよほど健全な印象。


中岡望の目からウロコのアメリカ:
 米財務省の「国際経済と為替政策に関する議会への報告」
 アメリカは中国人民元の切上げ問題を
 "本音"でどう考えているのか


 内容も小難しいが
 相変わらずタイトルが長い(笑)。

 でも、勉強になります m(__)m


<今日のAA>

中国副首相の小泉首相との会談中止
 国民は非礼の気持ちに・自民安倍氏


【韓国】「太陽政策が北朝鮮を変えた」…羅鍾一大使

【朝日】「相手の国家主義を非難しながら
 自分の国家主義を鼓舞している」と日本を非難 その1


【朝日】「相手の国家主義を非難しながら
 自分の国家主義を鼓舞している」と日本を非難 その2


【朝日】「相手の国家主義を非難しながら
 自分の国家主義を鼓舞している」と日本を非難 その3


【朝日】「相手の国家主義を非難しながら
 自分の国家主義を鼓舞している」と日本を非難 その4


【朝日】「相手の国家主義を非難しながら
 自分の国家主義を鼓舞している」と日本を非難 その5




<追記>:コメント欄のレスはちょっと待ってくださいね。
       もう遅いんで寝ますわ (^^;)
# by misaki80sw | 2005-05-24 03:52 | 補欠ニュース
中国副首相、会談をドタキャン・・何を考えてるのやら。_a0018138_20474675.jpg


中国副首相が会談中止 小泉首相不快感

 来日中の中国の呉儀副首相が、
 二十三日午後に予定されていた小泉純一郎首相との会談を
 急遽(きゅうきょ)取りやめ、帰国することになった。
 細田博之官房長官が同日午前の記者会見で明らかにした。
 首相との会談が当日になって
 キャンセルされるのは極めて異例だ。
 
 小泉首相は同日昼、首相官邸で記者団に対し、
 「別に会いたくない(と相手が言う)のを会う必要はない。
 会いたいと(相手が)言えば会う」と不快感を示した。
 
 これに先立ち、細田官房長官は記者会見で、
 会談が中止になった経緯について、中国政府から同日朝、
 「国内で(呉副首相に)緊急の公務が生じたため、
 本日(二十三日)午後に帰国せざるを得なくなった」と
 首相サイドに連絡が入ったと説明。
 公務の内容は「承知していない」とした。
 外務省筋も「こちらから中国側に
 『靖国問題と関係があるか』と聞いたところ、
 『ない』ということだった」と述べた。
 
 首相との会談後に予定されていた、
 民主党の岡田克也代表との会談も
 中国側の申し入れで中止された。
 呉副首相は愛知万博に参加するため、今月十七日に来日。
 二十四日に帰国する予定だった。

   (産経新聞)


( ゚Д゚)ポカーン・・・

何でしょうか、この人は?
子供ですか?

  「国内で緊急の公務が生じたため」

そんなもん理由になるか、馬鹿馬鹿しい。
国家の副首相として会いに来て
「今、忙しいから」でキャンセルするやつがあるかよ。

そもそも、この人物は
次の予定に関してはスケジュールどおりこなすわけで、

小泉会談中止の呉儀副首相、モンゴル訪問は変更なし

意図的にやったのがミエミエ。

  外務省筋も「こちらから中国側に
  『靖国問題と関係があるか』と聞いたところ、
  『ない』ということだった」と述べた。

外務省もそんなこと、こっちから聞くなよ。
担任の先生じゃあるまいし、
欠席児童の欠席理由なんか、お伺いしてどうするよ。

首相も
「会いたいと(相手が)言えば会う」なんて言わずに、

  もうこんな非礼な人とは会いたくありませんね。

って言ってほしいもの。

でも何故、中国は
こういう傍目から見ても
馬鹿げたことをやるんだろうね?
無礼云々以前の問題として何の意味がある?

外交ってのは一定の目的をもってやるわけで、
このドタキャンの目的って何?
中国の靖国参拝に対する不快感を日本に伝えるため?
発想としては分からんでもないけど、
そんなことして日本側が折れるとでも思ってるのかね?
むしろ、日本でいっそう反中感情が高まって
逆効果でしょう。

先日の、訪日ビザを中国全土に開放する件と
ODA付きの新幹線技術輸出の件、

訪日観光ビザ、中国全土への拡大を恒久化
 首相が伝達へ


中国新幹線にODA 政府、採用なら供与方針

これを中国は日本の弱気の表れと受け取ったか?

で、「もう一押しすれば日本は譲歩する」
とか思ったのかな?

まさかあれが、
日本的な「脈絡のない外交戦略」から生じてるとは
中国も思わないだろうから、
意図を読み間違ったのかもね。

中国は「へっへっへ、譲歩しろ!」
日本は「( ゚Д゚)ポカーン・・・」

こんな構図かね(笑)。
# by misaki80sw | 2005-05-23 20:53 | 中国・台湾関連
イラク情勢再激化・・移行政権と米国の泥沼_a0018138_1413034.gif


イラク情勢が再び激化してます。

激化たって
「テロで被害」とか「米兵3名死傷」とか、
イラク発のその種の情報に
ある意味、日本人は慣れすぎてしまって
不感症気味になってる部分がありますが、
ここ数ヶ月小康状態を保っていたイラク情勢が
再び激化しつつあるのは間違いありません。

ここ数ヶ月の情勢を
ざっとおさらいしておきますと、
まず、1月末にイラク国民議会総選挙が行われ、
最大勢力であるシーア派が6割以上の議席を確保し、
第二勢力であるスンニ派は選挙をボイコット。
漁夫の利を得たのは第三勢力であるクルド人で、
シーア派に次ぐ議席を確保した。
人口比20%のスンニ派が議席数は2%、
人口比15%のクルド勢力が議席数28%。

それから3ヶ月以上もかかって組閣人事が行われ、
すったもんだのあげく5月3日に
シーア派+クルド人の二大連合による新政権が発足した。

移行政権の当面の課題は
2005年8月15日までに、
現在のイラク基本法に代わる正式・恒久憲法を
起草・発効すること。
そしてこの憲法に基づき同年12月15日までに
総選挙が実施され、正式政府が誕生する。
ここにイラク戦争後の同国復興プロセスは、
終了するというスケジュールになっている。

だが、暫定憲法である現在のイラク基本法は、
国内18州のうち3州で3分の2以上の反対がある場合、
新憲法が承認されないとの条項を持つ。
そのため各勢力が協調しなければ新憲法の承認はあり得ず、
これは数的に優位であるシーア派の権力保持を防ぐための
米国の苦肉の策でもある。

ジャアファリ首相は
4月28日に移行国民議会に閣僚名簿を提出したが、
石油相や国防相など重要ポストの人選をめぐり、
各勢力間の調整が難航。
結局、首相が国防相、
チャラビ副首相が石油相を暫定的に兼務し、
見切り発車の状態で移行政権はスタートした。

移行政権は首相を含めて計37のポストから成り、
シーア派の統一会派「統一イラク同盟」と
クルド人の統一会派「クルド同盟」のメンバーが閣僚となり、
選挙をボイコットしたスンニ派は
一部の傍流の人たちが少数加わっただけ。

イラク、閣僚宣誓式 移行政府が始動
 石油相ら先送り


で、ここから内戦が激化。
不満たらたらのスンニ派がシーア派を攻撃し、
従来からの反米武装勢力がそれに乗じるかっこうとなった。
移行政府発足後のテロによる死者は、
とうとう430人を超えてしまった。

イラク:シーア派×スンニ派、相次ぐ惨殺は憎悪の連鎖
 宗派間戦争、強まる懸念


宗派対立扇動のテロ激増 移行政府に早くも試練

イラク、3人の聖職者が暗殺される

憲法起草は「反イスラム」スンニ派参加を批判

イラクで武装勢力の攻撃激化、24人が死亡

これに危機感を抱いたライス米国務長官は
イラクを電撃訪問し、
バグダッドでジャアファリ首相と会談した。

ライス米国務長官 イラク訪問
 スンニ派取り込み促す


会談では、イラクの国内治安や憲法起草問題を協議し、
スンニ派勢力の政権への取り込みを促したとのこと。

米国としては
シーア派ではありながら世俗色の強い、
アラウィ暫定政府首相の続投を望んでいた。
しかし、アラウィ氏の「連合会派イラク」は第三党にとどまり、
閣僚には一人も加わっていない。
ここらへん米国としては失望そのものだろう。

一方の駐留米軍は、7日から14日にかけて、
シリア国境の町カイム周辺に、
海兵隊約千人と航空兵力などを投入して、
「マタドール(闘牛士)作戦」と称する大規模作戦を実施。
武装勢力125名を殺害し、39人を拘束した。

米軍がイラク西部で1週間の掃討作戦
 武装勢力125人死亡


米軍は、カイムから中部ラマディに通じる、
ユーフラテス川沿いの街道が
武装勢力の武器弾薬、資金の流入経路とみており、
今回の掃討作戦で、同経路を遮断できたとしている。
 
だが、15日も首都北方バアクーバ中心部で、
地元ディアラ県の県知事の車列を狙った、
自動車爆弾による連続自爆テロが発生。
知事は無事だったものの、計五人が死亡した。

イラク知事襲撃で犯行声明 イラク聖戦アルカイダ組織

さらに、イラク北部から
トルコへの原油パイプラインが破壊され、
原油輸出が全面的に停止した。

イラク北部からトルコへの原油輸出
 破壊攻撃で全面的に停止


また、イラク政府の高官も狙い撃ちされており、

<イラク>車で通勤中の貿易省高官が銃撃され死亡

イラク石油省高官、バグダッドで暗殺

テロリスト達の標的となっている。

このように武装勢力の活動は全く衰えておらず、
これに慌てたジャアファリ首相は13日、
北部のクルド人自治区を除く、
全土に出している非常事態宣言をさらに30日間延長した。

イラク、非常事態を再延長 半月で死者420人以上

さらに英紙「サン」に
フセイン元大統領の下着姿の写真などが掲載され、
イラク人の間で反発が強まっている。

フセイン元大統領下着姿、英紙が掲載
 「捕虜」条約に違反も


「サン」に写真を流したのは駐留米軍人とされ、
大統領を神格化して抵抗する武装勢力に
打撃を与えることが目的とのこと。
しかし、これにより反米感情が盛り上がりを見せ、
ほとんど逆効果となってしまった。

当然のことながら米軍の泥沼状態は続きそうで、
マイヤーズ統合参謀本部議長は4月12日の記者会見で、

 「武装勢力はイラクの新政権打倒を目指して攻撃している。
 この動きが3年、4年、あるいは9年か、
 いずれにせよ長く続く」

と語り、混乱の長期化という見方を示した。

もともと米軍は
ここのところ情勢が小康状態を保っていたこともあり、
イラク情勢に関しては楽観的な見方が支配的だった。
アビザイド米中央軍司令官は3月1日の上院軍事委員会で、

 「武装勢力は一般市民の支持を得られず、
 その力は衰退しつつある」

 「2005年末には、イラク政府の治安部隊が力をつけ、
 治安維持を担うことになるだろう」

と楽勝の予測をした。
まあ、大外れに外れたわけね(笑)。

この治安の悪化とシーア派・スンニ派の確執を横目で見つつ、
第三勢力であるクルド人は独立への動きを一層強めている。
彼らはその過程として自治権の強化を要求している。

その要求の内容とは、

◇10万人の兵力を持つクルド人民兵の維持。

◇民兵の指揮権をクルド自治政府が持つ。

◇中央政府の軍隊が自治区に入る場合は
 自治政府の許可を得る。

◇自治政府が徴税権を持ち、
 中央政府への納税額も自治政府が決める。

◇クルド居住区の境界沿いにある油田地帯、
 キルクークのクルド自治区への編入。

◇石油開発と輸出の主要な権限も自治政府が持つ。

これにはシーア派・スンニ派共に反発しており、
治安の悪化のからみもあって、
自派民兵集団の強化に走っている。

イラク政府はこの対応に苦慮しており、
米国も民兵集団の存続には猛反対している。


さて、就任したばかりのジャファリ首相は
早速、トルコを訪問し、
治安や経済問題を協議したとのこと。

ジャファリ首相がトルコ訪問 治安や経済問題協議

世俗的イスラム国家として
トルコが新生イラクのお手本になるということだろうか。
あるいはクルド人絡みで密約でもかわしたか。

また、隣国イランは
イラク国内のシーア派勢力の伸張にホクホク顔で
早速、外相をイラクに派遣し、
ジャアファリ首相ら移行政府幹部と会談。

イラン外相、関係改善へイラク訪問 移行政府を全面支援

イラン国境からの武装勢力の流入を阻止する、
国境管理の強化を約束するなど、
移行政府への全面支援を表明した。


さてさて、我々日本人にとっては
イラクの人名や組織名ってのは
あまりにもなじみづらく憶えづらい。

よって、ここで付録として
イラクのデータ、
主要人物名などをざっとまとめておきますね。

まず、イラク三大勢力の人口比率ですが、

◇シーア派:60%

◇スンニ派:20%

◇クルド人:15%

となってます。

次に議席の配分ですが、

◇統一イラク同盟(シーア派):140議席

 *イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)と
  アッダワ党、イラク国民会議の統一会派

◇クルディスタン同盟リスト(クルド人):75議席

 *「クルド愛国同盟」と「クルド民主党」の統一会派

◇連合会派イラク(シーア派):40議席

◇イラク人(スンニ派傍流):5議席

総議席275のうち、
シーア派が圧倒的多数です。

最後に各勢力の内訳を書いておきます。

<シーア派>

*最高権威はシスタニ師
 米軍の早期撤退を要求している。

◇イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)
  
 ◎リーダーはハキム師。

 ◎自派から副大統領としてアブドゥルマフディ氏を輩出。

 ◎親イラン

 ◎私兵集団バドル軍を抱える。

◇アッダワ党

 ◎リーダーはジャアファリ氏
  
 ◎ジャアファリ氏は移行政権の首相に就任。

 ◎私兵集団を抱える。

◇イラク国民会議

 ◎リーダーはチャラビ氏。

 ◎チャラビ氏は移行政権の副首相に就任。

 ◎弱小勢力
  
◇連合会派イラク(イラク・リスト)

 ◎リーダーはアラウィ前首相

 ◎シーア派だが世俗色の濃い政党

 ◎親米派

 ◎一人も閣僚に登用されていない。

◇サドル派

 ◎リーダーはサドル師

 ◎反米急進派

 ◎私兵集団マハディ軍を持ち、ナジャフで米軍と戦闘。

 ◎一部が「国民エリート団」として選挙に参加し三議席を獲得


<スンニ派>

*選挙はボイコット。

◇イラク・イスラム聖職者協会

 ◎イラクのスンニ派宗教指導者の連合体
 
 ◎スンニ派の最高権威機関。

◇イラク・イスラム党

 リーダーはモフセン・アブドルハミド氏

◇スンニ派宗教財団

◇旧フセイン派残党


<クルド人>

◇クルド愛国同盟(PUK)

 ◎リーダーはタラバニ氏

 ◎タラバニ氏は移行政権において大統領に就任

◇クルド民主党(KDP)

 ◎リーダーはバルザニ氏

 ◎自派からタイフール国会副議長を輩出

 ◎タイフール氏は、
  1996年にクルド民主党がフセインと手を結んで
  クルド愛国同盟を攻撃した時の司令官

◇クルド人の民兵組織は「バシュマルガ」
 兵力は10万人。


ざっとこんな感じですな。

それぞれの勢力も
かならずしも一枚岩ではなく、
穏健派・急進派に割れています。



持田直武 国際ニュース分析:イラクのテロ拡大

持田直武 国際ニュース分析:
 イラク選挙後、混乱の芽は消えず


イラク:Terrorist or Resistance ?:
 「分析・イラク新政権」酒井啓子(世界6月号)


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# by misaki80sw | 2005-05-23 01:52 | 中東関連・対テロ戦争