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by misaki80sw

中国、情報統制の実態 その1・・金盾プロジェクト

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中国では、情報は統制を受け、
インターネットにも検閲システムが
取り入れられていることはよく知られている。

この中国の情報統制の実態に関して
数回程度シリーズで書いていこうと思います。

今日はネット検閲について。
まずはジャブとして
数年前の3つのニュースを載せておきます。

中国政府、グーグルを遮断

 中国政府は、
 米グーグル社の検索サイトに対するアクセスを遮断した。
 中国共産党の第16回党大会を控え、
 報道規制の強化を政府が指令しているさなかの出来事だ。

 3 日(現地時間)、
 中国のインターネット・サービスを介して
 グーグルのサイトを閲覧しようとしたが、
 該当するサイトが見当たらないというメッセージが表示され、
 閲覧の試みは拒絶された。
 ユーザーや、中国のインターネット動向を
 モニターしている技術系コンサルタントによると、
 グーグルのサイトは数日前からブロックされていたという。

 中国政府は11月の党大会に向けて準備を進めている。
 同大会では、新世代の指導者たちに政権を移行するため、
 世代交代のプロセスに着手するものと見られている。

 政治的に慎重な対応が必要なイベントの前後に、
 中国は決まってニュースや情報の規制を強化する。
 国営報道機関が8月明らかにしたところによると、
 江沢民国家主席は中央宣伝部に対し、
 党大会に備えて「健全な雰囲気作り」を
 心掛けるよう指示したという。

   (WIRED NEWS 2002/09/03)


中国政府、『グーグル』へのアクセス遮断を解除

 中国政府は、
 米グーグル社のインターネット検索エンジン、
 『グーグル』へのアクセス遮断措置を突然、解除した。
 遮断措置を開始した詳しい理由も謎に包まれていたが、
 終了も唐突だった。

 北京や上海に在住するユーザーから、
 グーグルのサイトがまた閲覧できるようになったという、
 報告が寄せられた。
 グーグルは、オンライン上から中国語で書かれた資料を
 見つけ出す強力な検索機能を持っており、
 3000万人以上と言われる中国のネット・ユーザーに
 広く普及している。

 しかしなお、
 何か新しい検閲技術が運用されているようだ。
 今週に入ってから、選択的な遮断状態――
 ウェブサイトへはアクセスできるが、
 政治的に微妙な内容を扱った特定の記事や
 コンテンツが読めないケースが増えているという不満が、
 ユーザーから出はじめている。

   (WIRED NEWS 2002/09/12)


『Googleニュース』中国版、中国政府の検閲に追従

 米グーグル社(カリフォルニア州マウンテンビュー)が
 先頃中国で提供を開始したニュース・サービスでは
 中国政府がブロックしているウェブサイトからの
 結果が表示されないことが判明し、
 「邪悪なことはしない」(do no evil)を
 謳い文句にしてきた検索エンジン企業に、
 扱いの難しい疑問を提起している。

 オンライン検閲に断固として立ち向かう調査会社、
 米ダイナミック・インターネット・テクノロジー社が
 行なったテストにより、
 中国でインターネットに接続しているコンピューターを通じて
 『Googleニュース』中国版で検索を実行したところ、
 中国政府がアクセスを禁止したニュースサイトの
 検索結果が削除されていることがわかった。

 まったく同じ条件で
 米国内でインターネットに接続している、
 コンピューターを使って検索すると、
 中国政府が遮断しているサイトからの結果も表示される。

 中国政府は2年前、グーグル社に対して厳しい処置をとり、
 一時的に『Google』へのアクセスを遮断した。
 この遮断はその後、世論の圧力を受け解除されている。

 グーグル社は、中国語のGoogleニュースでは
 政府がアクセスを禁止しているサイトからの結果を
 削除していることを認めているが、
 これは検索エンジンを
 効率的かつ利用価値の高いものにするという、
 長年の使命に沿った行為だと考えている。

 グーグル社の広報担当者は24日(米国時間)、
 「グーグル社は、中国本土のユーザーに
 可能な限り最良の検索体験を提供するために、
 アクセスが禁止されているコンテンツを含むサイトは
 含まないことに決めた」と説明した。

 グーグル社は、
 Googleニュース中国版で排除されているのは
 「ごく一部」のウェブサイトに過ぎないと述べている。
 だが、シアCEOは、自分が行なったテストでは
 『ザ・エポック・タイムズ』[中国名:大紀元]や
 『ボイス・オブ・アメリカ』(VOA)など、
 少なくとも8つのサイトからの結果が
 表示されていないと指摘する。

   (WIRED NEWS 2004/09/25)


この3つのニュースの流れを見ていると
あのグーグルが中国のネット検閲制度に
身を屈していった過程が分かると思う。

 アクセスを遮断される。
   ↓
   解除
   ↓
 自己規制

「邪悪なことはしない」
と言っていた誇り高きグーグルが、
検閲に負けて自己規制に走る過程は、
かつのGHQ統制下の日本のマスコミにそっくり。

グーグルだけではなくヤフーも同じで、
中国政府からの規制をかわすために
中国的・政治的に問題のあるサイトは
自己規制をかけてアクセスできないようにしている。

もちろんこれに抵抗する動きもある。
中国のネットユーザー達は
グーグルのミラーサイトを多数立ち上げ、
政府の裏をかこうとしている。

たとえば、こことかね↓

elgooG

グーグルの反対版(笑)。
検閲を逃れるあの手この手の仕組み。

ただ、英語しか検索できないようで
漢字を入れても反応してくれない。

あと、たとえば中国からのアクセスが禁止されている、
米国の国営放送「Voice of America」のサイトだけど、
これの親元である米国務省国際報道局(IBB)は
2003年、中国政府が設けたネット検閲システムを、
中国のネットユーザーが
乗り越えられるようにするソフトを開発した。

“サイバー万里の長城”に穴を掘るソフト

このソフトを使うとユーザーは
MicrosoftのWindows XP/2000を走らせているPCで、
簡易版の迂回Webサーバを設置することができる。

また、米セーフウェブ社が
米CIAのベンチャーキャピタル部門『In-Q-Tel』から
100万ドルの資金提供を受けて開発したソフト、
「トライアングル・ボーイ(Triangle Boy)」は、
匿名で検閲をかいくぐってネットに接続できるソフトで
2001年6月の発表以来、
多くの中国人ネットユーザーがこれを使用し、
当局の目をかいくぐって禁止サイトへの接続を行った。
これには中国当局は大慌てだったらしい。

匿名サービスの米SafeWeb、新たな検閲回避ソフト
 「Triangle Boy」を正式発表


しかし、2001年11月、
米セーフウェブ社はこのサービスを停止した。
何かの圧力があったのか否かは分からない。

セーフウェブ、無料プライバシー・サービスを停止

これらの一連の流れを見てると、
中国当局は検閲の障壁を防御しようとし、
中国のネットユーザーや米国はこれを破ろうとする。
何のことはない、
これは「万里の長城」の攻防の現代版で、
中国の王朝と異民族の争いが現代に再現したようなもの。

それ故、この中国のネット検閲システム、
巨大なる国家的ファイヤーウォールは
しばしば「電子板:万里の長城」の俗称で呼ばれてきた。

しかし、今年の2月に日本でも発売された、
何清連さんの「中国の嘘」という本によると、
このシステムは
「金盾(ゴールデン・シールド)プロジェクト」
という正式名称であることが明らかになってきた。

金盾プロジェクト。
中国では情報関係の国家プロジェクトに
全て「金」の頭文字を付けている。

◇金橋プロジェクト:
  国家公共用経済情報ネットワークプロジェクト
◇金衛プロジェクト:
  「衛生省」の医療保健関連分野の情報化プロジェクト
◇金企プロジェクト:
  「経済貿易委員会」の情報化プロジェクト
◇金建プロジェクト:
  「建設省」の情報化プロジェクト
◇金宏プロジェクト:
  政務管理とマクロ計画関連の情報化プロジェクト
◇金才プロジェクト:
  「人事省」の情報化プロジェクト
◇金版プロジェクト:
  「新聞出版署」の情報化プロジェクト
◇金農プロジェクト:
  「農業省」の情報化プロジェクト
◇金旅プロジェクト:
  「旅行局」の情報化プロジェクト
◇金関プロジェクト:
  対外貿易業務の情報化プロジェクト

「金盾プロジェクト」もそのうちの一つで
国家規模のネットワーク監視・検閲システム。
2001年から部分的に稼働し、2008年に完成予定。

その最終目標は巨大なオンライン・データベースと
監視ネットワークの統合であり、
そのために音声と顔認識、CCTV(監視カメラ)、
スマートカード(ICカード)、クレジット記録、
インターネット監視のテクノロジーが導入されている。
中国政府が構想しているのはデータベース駆動型の
全国規模のリモート監視システムであり、
全国―地域―現地の安全部門当局を結ぶ、
包括的な監視ネットワークである。

当局にとって「要注意」の海外の情報サイトをすみやかに発見し、
これに対するアクセスを遮断する。
国内の「不良」情報コンテンツも発見次第ブロックし、
公権力によって首謀者を逮捕する。

また、単なる「有害」サイトの遮断に留まらず、
サイトやメールの文字検閲はもちろんのこと、
言語音声情報処理技術により、
電話による会話などをモニタリングし、
キーワードとフレーズによって検索する。
また、映像情報処理技術によって
監視カメラを通じて群衆の中から特定人物の顔を識別する。
これらの能力はデジタル記号処理技術を応用であり、
「アルゴリズム的監視」と呼ばれている。

この「金盾プロジェクト」にあっては、
ネット検閲などはその一部でしかない。
ネットを含めた社会全般に対する監視ネットワーク網の構築、
それがこのプロジェクトの本質である。

だが、この高度に先進的な人民監視システムは
とても中国独力の技術レベルでは不可能であり、
このプロジェクト開発には
多くの米系企業が関わっている。

シスコ・システムズ、モトローラ、
サン・マイクロシステムズ、ノルテル、
AOL、ネットワーク・アソシエイツ、等々等。

彼らは中国政府の提示する巨額の予算と
市場参入の甘い密に惹かれて、
このオンライン監視システムの開発に関わっている。
これに関わったエンジニアの一部が
後にこの内容を暴露した。

今年の4月14日、
金融家ジョージ・ソロス氏から資金援助を受けている、
オープンネット・イニシアティブ(ONI)は、
ハーバード大学やケンブリッジ大学、トロント大学と共同で、
中国のネット検閲に関する報告書を発表した。

これの内容は東京新聞の記事に詳しい。

中国のネット検閲 その“手口”

 「法輪功」「天安門」「台湾」「チベット」…。
 報告書によると、中国当局が決めたこういった単語を含む、
 サイトやアドレスに接続できなくするのが検閲システムだ。

 当局が神経をとがらせるであろう単語それぞれについて、
 検索エンジンで上位百位に入るサイトを対象に、
 中国国内から接続できるかを調査した。

 その結果、中国語サイトで
 接続できなかった率が高かったのが「中国労働党」で93%。
 「ナインコメンタリーズ(九評)」
 「天安門大虐殺」が90%でそれに続く。
 「ナインコメンタリーズ」は、
 台湾、香港、日本などで発行されている週刊華字紙、
 「大紀元時報」による中国共産党の批判的論評だ。

 非接続率をその他の微妙な政治問題で見てみると、
 「法輪功」は44%、「法輪大法」で73%に上った。
 「チベット」は9%だが、
 「ダライ・ラマ」になると54%に跳ね上がる。
 なぜか「台湾」(8%)「台湾独立」(25%)には寛容だ。

 何を接続妨害するかで、
 かえって中国当局の関心度を「裸」にしているともいえる。
 妨害は、中国のネットワークの
 「幹」の部分でも「枝」の部分でも行われている。

 同様に検閲体制を敷く他国の場合は、
 検閲で閲覧できなくしたことを利用者に明らかにするが、
 中国の場合「タイムアウト」「エラー」など技術的問題を装い、
 それが検閲による規制だとは
 利用者には分からないようにしてある。

 二〇〇四年八月には、
 中国人ハッカーが中国語、英語合わせて
 九百八十七に上る単語の一覧表をネット内で発見し、
 掲示板で暴露した。
 少数民族の独立運動や法輪功、共産党幹部の名前などだ。
 調査では、このリストに掲載された単語を
 中国国内の三つのプロバイダーのブログで使用してみた。
 二つのプロバイダーは
 それぞれ十八語、十九語に反応し「*」印に置き換え、
 単語の使用ができなかった。
 残りの一つは三百五十語に対し使用の警告を出した。

 法的な締め付けについても報告書は指摘している。
 プロバイダーは、
 顧客管理などを義務づけた法に違反すれば、
 免許の取り消しやスタッフが逮捕される可能性がある。
 〇一年にはインターネットカフェの集中的な取り締まりで、
 八千店が閉鎖を余儀なくされ、
 遼寧省だけで五千店で警察が検閲ソフトを導入させた。

   (東京新聞)


この強烈なシステム、
「金盾プロジェクト」が完成するのが2008年。
北京五輪に間に合わせようという発想だろうけど、
こいつが出来れば中国国民は
ますます真実の情報から遠ざかってしまうでしょうね。
恐るべき「1984」的国家の完成。


さて、今回を皮切りに
中国のネット検閲や情報統制の実態について
シリーズで書いていこうと思います。

あの国の内情とかを考察する時に
中国政府の公式発表を
日本のマスコミなんかはそのまま流してるけど、
私はブログを書く過程で、凄く違和感を感じてきました。
なんか実状とずれてるな、と。

まあ、そこらへんの感想なりを含めつつ、
10日に一回くらいの割で書いていきます。



中国の嘘―恐るべきメディア・コントロールの実態
 何 清漣 (著)


巧妙な中国政府のネット検閲、米の調査で明らかに

米議会委員会の警告:
 中国のサイバー版「万里の長城」があと一歩で万全に


「他国のネット検閲に対抗する」法案、米国議会に提出


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by misaki80sw | 2005-05-21 00:50 | 中国・台湾関連