中国、人民元問題・・チャイナ・バッシングは止まらず
2005年 04月 27日
☆米FRB議長、人民元改革促す…公聴会で証言
アラン・グリーンスパン米連邦準備制度理事会議長は、
21日の上院予算委員会の公聴会で証言し、
中国が通貨・人民元を
対ドルで低い為替レートに固定している問題について
「為替(の変動幅を広げる)柔軟化が早いほど、
中国経済にとって大きな利益になる」と述べ、
人民元の柔軟化を急ぐべきだとの考えを示した。
議長は、人民元の不当に低い為替レートが、
中国の労働生産性の向上を妨げているなどと指摘した。
ただ、中国政府が人民元改革に踏み出す時期については
「予測するすべを持たない」と述べた。
(読売新聞)
人民元の切り上げ問題で
米国がそうとう強硬的になってますね。
世界的にチャイナ・バッシングが起こってます。
発端はあの反日暴動ですが、
その根底には人民元の切り上げ問題がある。
中国当局は人民元に関して
為替の「管理フロート制」を取っている。
これは相場の変動幅に一定の枠を設け、
それを超えた場合に通貨当局が市場に介入するもの。
「固定相場制」と「変動相場制」の
中間的なやり方ではあるが、
実質的にはドルに対する固定相場と変わらない。
中国がこの制度を利用して
輸出偏重政策をとっているのは明白で
輸出がGDPにしめる割合は30%程度もある。
1994年の時点ではこれが21%であり、
安い人民元を使って輸出を振興してきた。
これに苛立っているのは米国で
米国の対中貿易赤字は
昨年は1616億ドルに達しており、
米国内では人民元が
実勢相場よりも約40%低い水準に維持され、
輸出を有利にしていることが
赤字の主因との主張が台頭している。
米国内では、高まる貿易不均衡に対する不満を背景に、
中国に人民元切り上げを求め、
応じなければ中国製品に一律27・5%の関税を課す、
対中報復法案が米上院で採決される見通しとなっている。
*人民元切り上げ拒否なら上院採決へ
米、中国に報復関税
また、米国だけでなくEUも
セーフガード(緊急輸入制限)措置発動の
検討を始めている。
ここのところ、
米要人の人民元切り上げ要請の発言が相次いでおり、
14日にはブッシュ大統領が
人民元の変動相場制への移行を要求。
*米大統領「人民元、変動相場制に」
中国に実質切り上げ要求
また、上記ニュースのように
グリーンスパン米連邦準備制度理事会議長も
人民元改革を中国に促している。
米国としては
この人民元の切り上げ問題は
ここ数年の課題だけど、
今、これがにわかにクローズアップされている背景には
対中貿易赤字の増大もさることながら、
私は米国の対中姿勢全般の変化があると思う。
米国が今までこの問題を手控えてきたのは
イラク情勢をめぐる国際的孤立と
北朝鮮問題で中国の支援を得たかったから。
米国は6ヶ国協議を通じて
中国に北朝鮮を説得させる、
あるいは恫喝する役割を期待してきた。
近隣諸国での核の拡散を恐れる中国と
この部分においては利害が共通すると思っていた。
ところが、ここ数ヶ月、
中国の戦略が変わり始めている。
中国は米国の意向に応じて北を恫喝するよりも
北朝鮮をそのまま生かして
米国への牽制材料に使う方向にシフトし始めている。
背景には、台湾独立問題を巡り
反国家分裂法制定など対外強硬派の勢力が増してきたことと、
2月に日米両国が
例の「2プラス2」で共通戦略目標を打ち出し、
対中包囲戦略を明確にしたことが大きいと思う。
*日米「共通戦略目標」発表・・中国封じ込めと攻守同盟
ここらへんあたりから
潮流がガラリと変わり始めた。
中国はこの流れに対し、
六ヶ国協議での対北説得役を
意図的にサポタージュし始めたように思うね。
米国もそれに薄々気づき始め、
じゃあってんで、
人民元切り上げ問題など対中強硬論に傾き始めている。
付言しておくと
日中会談の後、欧米のマスコミ論調は
中国非難と日本擁護に傾いているけど、
これはここ数ヶ月の
チャイナ・バッシングの流れが根底にあり、
首相の謝罪発言など関係ない。
あの演説で日本が堂々と正論を述べ、
日中首脳会談で原則論を貫いたとしても
この論調自体には変化はなかったでしょうね。
むしろ大きいのは反日暴動と
それに対して中国が一切謝罪しなかった影響の方が
決定的でしょう。
さて、焦点の人民元問題ですが、
中国としては微妙な選択。
今、上海などでは外資の流入により、
土地バブルが破裂寸前までいっている。
ちなみに中国全土で04年に不動産価格は、
商業ビルが14・4%、マンションが15・2%上昇、
北京では20・8%も急騰し、
上海では平均が15・8%だったが、
商業中心地は28%も上昇した
上海では不動産価格が上昇の一途をたどる一方で、
賃貸料金が下落を続けている。
流入する外資は
2年前までは香港、台湾の資金だったが、
最近は日本、韓国及びヨーロッパからも
不動産投機資金が雪崩をうって中国へ流入している。
これが人民元の切り上げと共に一斉に流出する可能性が高く、
そういう事態がおきれば
銀行は経営が苦しくなり、取り付け騒ぎに発展しかねない。
そうです、まさにバブル崩壊なんですよ。
中国にとっては苦悶の選択であり、
人民元をこのままにしておくと
国際社会の強硬姿勢を招きかねず、
しかし、切り上げれば
輸出は減るし、バブルも破裂しかねない。
米国もそれが分かっているから、
何か別件の取引材料にしてやってもいいと
圧力をかけまくる。
ここらへんは各国も丁々発止だね。
日本としては
米国の戦略も読み、中国の意図も見透かし、
巧妙に国益を増進させてほしいもの。
中国国内では、すでに反日暴動を受けて
日本企業の撤退と対中投資の手控えが始まっている。
*NNA調査:「中国シフトに大きな影響」日企の6割
日本企業の対中リスク感は
かつてないほど高まっており、
この流れは変わらないでしょう。
あの反日暴動ってのは
そういう意味では中国の敵失であり、
日本としては大いに利用すればいいよ。
また、この流れを作り出した遠因は
2月の「日米2プラス2」にあることを
もっともっと自覚すべきでしょう。
*G7閉幕 「中国リスク」に強い意思
人民元改革 議長国声明で踏み込む
*中国の不動産バブルは
どれだけ持ちこたえることができるのか?
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