北朝鮮、鳥インフルエンザ感染拡大・・疫病と飢餓
2005年 04月 09日
☆北朝鮮支援の用意
鳥インフルエンザ対策で技術援助-FAO
国連食糧農業機関(FAO)と
国際獣疫事務局(OIE)は8日、
鳥インフルエンザが発生した北朝鮮から
支援を要請されていた問題に関し、
「北朝鮮国内で効果的な検査ができるよう、
技術支援を行う用意がある」との声明を発表した。
北朝鮮は外交ルートを通じて、
病気の診断や予防接種を含む技術支援を求めている。
声明の中でFAOとOIEは
「透明性を示す協力的な新しい北朝鮮の政策を
積極的に受け入れる」としている。
(時事通信)
北朝鮮での鳥インフルエンザ発生。
これから収束に向かうのか、それとも拡大するのか。
取りあえず、今までの経緯を書いておきます。
3月4日、北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」が、
突然、鳥インフルエンザの防止を呼びかける論説を掲載した。
◇発生や被害に関する資料を迅速に伝達
◇家畜類や卵製品の検査強化
◇渡り鳥の監視強化
これらの対策を列挙したが
「鳥インフルエンザが再び多くの国と地域を襲っている」
と書いてるだけで、
この時点では自国での発生は隠していた。
今から振り返れば、
この3月4日の時点で感染拡大が確認され、
あわててマスメディアを通じて
感染予防策のみを掲載したんでしょうね。
この労働新聞の掲載を受けて韓国の関係当局は、
北で鳥インフルエンザが発生したのではないかとの疑念を持ち、
一斉に調査に入った。
3月5日、北朝鮮は
9日に予定していた最高人民会議(国会に相当)の開催を
突然、延期すると発表した。
*北朝鮮 最高人民会議を延期
41年ぶり飛び交う憶測
最高人民会議の延期は異例であり、
マスコミは一斉に「金正日総書記周辺の異変か」と報じたが、
今思えば鳥インフルエンザの感染拡大が
原因ではなかったかと思われる。
この時点で相当の衝撃となっていたのだろう。
3月15日、韓国の聯合ニュースが
北朝鮮の平壌市内にある大手養鶏場で
1カ月前の2月中旬に鳥インフルエンザが発生し、
数千羽が処分されたと報じた。
北朝鮮消息筋が、北京に出張した北朝鮮当局者から
聞いた話として伝えた。
*平壌で鳥インフルエンザが発生か・韓国通信社
その時の報道によると、鳥インフルエンザが発生したのは、
5大養鶏場の一つのハダン養鶏場。
感染した可能性のある鶏は土に埋められたが、
住民が一部を掘り出し、市場に売ったとのうわさが
地元住民の間で広がっているとのこと。
この報道は衝撃を与えた。
これを受けて日本の農林水産省は16日、
北からの家禽肉の輸入を一時停止した。
なお、北朝鮮からの家禽肉の輸入は過去5年間では、
2002年の約5トンのみとのこと。
これに対して北朝鮮は
保健省の国家衛生検閲院長が朝鮮中央テレビに出演し、
鳥インフルエンザ発生説を否定した。
そして3月27日。
おそらく感染拡大がとまらなくなったのだろう。
もはや隠し通すことは不可能。
北朝鮮の朝鮮中央通信は、平壌市・ハダン鶏工場などで
鳥インフルエンザが発生した事実を初めて伝えた。
*北、鳥インフルエンザ発生を確認
朝鮮中央通信は国家獣医非常防疫委員会の話として、
「最近ハダン鶏工場をはじめ、
2~3か所の鶏工場で鳥インフルエンザが発生した」とし、
「感染した鶏数十万匹は埋沒、焼却しており、
専門機関関係者や科学者、技術者は
鳥インフルエンザ根絶に向けた研究事業を行っている」とした。
3月30日、韓国の東亜日報は
ソウルの北朝鮮消息筋の話として、
平壌地域で飼育していた鶏1000万羽すべてを
「感染拡大を防ぐ」ため当局が処分したと報じた。
同紙は、北朝鮮で飼育する鶏は1873万羽としており、
これがガセネタでなければ半分以上を処分したことになる。
本当かよ?
3月31日、
北朝鮮保健省国家衛生検閲院長が
再び朝鮮中央テレビに出演し、
「鳥インフルエンザは野鳥や家禽類から
人間に感染する病気であるため、
鳥インフルエンザに感染した家禽類や人間の症状を
両方とも把握しておく必要がある」と強調した。
この人、二週間前に同じテレビで
鳥インフルエンザの発生を否定した人で
厚顔としかいいようがなく、北の体質そのもの。
そして4月8日、
北朝鮮は韓国に支援を要請した。
韓国統一省によると、
北朝鮮の国家獣医非常防疫委員会は8日、
韓国の国立獣医科学検疫院に書簡を送り、
鳥インフルエンザへの対策に必要な装備、
薬品の支援を要請した。
*北朝鮮、鳥インフルエンザ対策で韓国の支援を要請
要するに「僕じゃ手に負えません」と言うわけ。
じゃ、最初からそう言えよという気もするけどね。
韓国の新聞は、
「南北関係に突破口が開かれるかが注目される」などと
脳天気なことを言ってるけど、
おそらく事態は相当のところまで悪化してると思うよ。
最初のニュースにあったように、
国連食糧農業機関(FAO)と国際獣疫事務局(OIE)も
北朝鮮に対する支援を表明。
米国も、国際機関を通じて
北朝鮮に検査キットを供与する方針を決めた。
*北に検査キット 米が供与方針 鳥インフルエンザ
一般的に言われている「鳥インフルエンザ」とは、
正式には「高病原性鳥インフルエンザ」という名称。
ウイルスはH5及びH7亜型の2種類がある。
*高病原性鳥インフルエンザQ&A
北朝鮮でどちらが発生したかについては
今のところ報道によって異なる。
*北朝鮮はH7型の可能性 鳥インフルエンザ
*北の鳥インフルエンザ、H5N1型ウイルスの可能性
どちらも猛毒で感染力が高いことには変わらないし、
ごく稀に人にも感染する。
人に感染すると、結膜炎、肺炎、多臓器不全などの症状を起こし、
死に至ることもある。
H5及びH7亜型のウイルスの場合、
流行当初は弱毒であっても感染を繰り返すうちに
数ヶ月後には強毒に変異する場合があるとのこと。
おそらく北朝鮮で感染が発覚したのが2月中旬で、
それから一ヶ月以上を経て感染拡大が続いてるわけで、
今現在のウイルスの状態がどうなっているのか?
考えただけでも空恐ろしい。
鳥インフルエンザへの対策は
ちまちまと鳥に対してワクチンを打っていては間に合わず、
発生農場の家禽をすべて殺処分するしかない。
そして死体は焼却・埋却するか消毒する。
これ以外に策はない。
ただでさえ食糧難で飢えている北朝鮮。
この鳥インフルエンザ発症と
感染拡大のもたらすインパクトはハンパじゃないだろう。

