「北朝鮮始末記」その4・・日本の経済制裁。
2005年 02月 28日
日本による北朝鮮への経済制裁。
なんだか膠着状態ですね~
やるのかやらないのか
ハッキリせいって感じですが、
今日は、この対北経済制裁について
書いてみたいと思います。
経済制裁、経済制裁と言いつつ、
対北朝鮮経済制裁の目的とはいったい何でしょうか?
目的は2つです。
「国家意志の表明」
「北朝鮮を崩壊させる手段」
この2つです。
それぞれ個別に解説します。
<国家意志の表明>
日本の経済制裁に関して
保守層の間で共通の認識と成りつつあるのが、
「効果があるか否かにかかわらず、
日本の国家意志の表明として
経済制裁行うべき」
これが主流になりつつあるように感じます。
私もこの考えには全面同意です。
首相は「対話と圧力」と言いいつつ、
圧力の方はおざなりになってますが、
ああいう北朝鮮のような力を信奉する実利国家は
本来ならば、圧力8:対話2ぐらいの配分が適当です。
現実は、対話8:圧力2ぐらいでしょう。
これだと北朝鮮が日本の意志をなめてかかるのも
当然だと思います。
だから「遺骨偽造問題」でも、
ああでもないこうでもない、と
適当に誤魔化そうとしてるわけでしょう。
「拉致」によって主権を侵害され、
「核」によって安全を脅かされている日本。
この状況下では経済制裁を発動することで
日本の確固たる意志を見せるのが
外交手段として当然のことだと思います。
この際に「関係各国と協調して経済制裁を」
という意見がありますが、
そんなものは意味がありません。
まず、各国の協調は成功しません。
呉越同舟の米・中・韓・露が
まともに経済制裁で協調するとは考えられません。
協調など待っていてはキリがありません。
仮に協調に成功しても、
それは北朝鮮を巡る状況が最後の沸騰した段階、
つまり「北朝鮮制裁」「北朝鮮討伐」へ
各国が合意した段階であって、
そうなれば日本は否が応でも
米国や中国などと協調せざるを得ない状態になります。
国家意志の表明どころの騒ぎではありません。
むしろ米国あたりから
突き上げられることになるでしょう。
日本は主導権を失い、時機を失した状態となります。
<北朝鮮を崩壊させる手段>
国益の観点から考えますと、
結局、かの国の問題は
直接的には2つなわけです。
「核」と「拉致」
それ以外は、どうでもいいといえばどうでもいい。
もちろん日本がアジアの大国として
「朝鮮半島の安定」というところまで
心配りをするというならば別ですが、
今のところ、この日本という「引きこもり国家」は
そこまでの大きな料簡を見せていません。
直接的な要解決事項は「核」と「拉致」。
この2つです。
ではこれをどうやったら解決すべきか?
「拉致」に関しては
外交又は経済的な圧力を加えることによって
突破口が切り開かれる可能性があります。
何故ならば「拉致」は
北朝鮮の金体制の根幹に抵触しないからです。
金正日が再び頭を下げて
「スイマセン、まだ多くの人を拉致してました。
再調査したら判明しました。
全て部下の責任です。銃殺刑にしておきました」
と言っても、別に彼の体制が
致命的な打撃を受けるわけではない。
しかし、「核」は別です。
これは彼の体制の根幹に関わる問題。
核兵器を増産し、弾道ミサイルに搭載してこそ、
「無敵」になれると彼は信じている。
金正日の心理は、
「世界から孤立した北朝鮮にとって
核ミサイルの開発こそ、
自国を存立させる唯一の保証となる。」
こういう発想でしょうね。
「拉致」と「核」。
どちらも日本にとって由々しき問題ですが、
「拉致」は外交と経済の圧力で解決する可能性がある。
しかし、「核」は容易には解決しない。
彼らは亡国の直前にならなければ
核の開発を止めないでしょうね。
あの狂犬国家が核ミサイルを持つことは
日本の安全を揺るがす大事態であり、
これを容認するわけにはいかない。
ここらへん日本の納税者は大人しいですね。
他国なら内閣が突き上げられてますよ。
じゃあ、どうすればいいか?
彼らが核を手放さないと言うならば
いっそのこと国ごと滅んでもらうしかないでしょう。
では、どうやって滅ぼすか?
日本は軍事的手段によって、
かの国を滅ぼすことは残念ながら不可能です。
そういう軍事力を持ってませんし、
そういう軍事戦略自体を持ち合わせていません。
米国頼み、中国頼みという手法がありますが、
他人の力をアテにしてもしょうがありません。
唯一の残されたオプションが経済制裁です。
これで金体制を揺さぶるしかない。
経済制裁の2つの目的に触れましたが、
では、経済制裁とは実際に効果があるのか否か?
これは制裁の中身次第です。
中途半端な制裁ならば効果がありません。
一応、前記の通り、
経済制裁を国家意志の表明の手段として行使するならば
北朝鮮に与えるダメージが少なかろうと
それはそれでやるべきですが、
でも、やる以上は効果がある方がいいにきまってます。
さらに「北朝鮮の崩壊」まで視野に入れるならば
実質的に効果が無ければ意味がありません。
自民党などが検討している送金と交易の停止。
私はこれでもダメージが大きいと見てます。
*北朝鮮GDPが最大7%減
自民、経済制裁発動で試算
*<町村外相>北朝鮮への送金報告下限額を
引き下げ検討
制裁のオプションとしては
具体的に以下のような
法律を駆使したパターンが考えられています。
◇改正外為法
1,財務相、経済産業相の判断で、
資金送金、貨物の輸出入、
技術移転、仲介貿易などを禁止
2,北朝鮮への出国者の手荷物検査の強化(従来からの措置)
◇特定船舶入港禁止特措法
日本の平和と安全の維持に必要な時、
万景峰号など北朝鮮船の日本入港を禁止
◇改正油濁損害賠償保障法(3月1日施行)
国土交通相が指定する36社の船主責任保険か、
国交相が証明書を発行した船主責任保険に加入していない、
100トン以上の船舶の入港禁止
◇日本農林規格法
北朝鮮産アサリの原産地表示を厳格化し、
国内産のように装った販売の取り締まり強化
◇協同組合金融事業法など
朝銀系信用組合への監督強化
◇地方税法、各自治体条例など
固定資産税が減免されている朝鮮総連施設の
使用状況の監視強化
私が、これにもう一つ付け加えてほしいのが
「朝鮮総連に対する全面捜査」
これをやってほしものです。
捜査の口実は何でもいいです。
疑惑は山のようにあるでしょう。
公安調査庁にでも聞けば
総連の悪行の資料なんていくらでも出てきます。
総連を全面捜査し、必要資料を全て押収し、
取りあえず「拉致」「朝銀の不正融資」「不正送金」。
ここらへんに関連する人間を
全て逮捕すればいいでしょう。
後は捜査によって
過去と現在の彼らの非合法活動の状況を
白日の下に晒せばいい。
全世界に公開すればいい。
このインパクトはかなり大きいと見ます。
経済制裁そのものよりも大きなダメージを
北朝鮮に与えるでしょう。
それは世界、特に米国世論を動かすことにつながり、
さらに北朝鮮指導層に心理的ダメージを与えます。
結論として言えることは、
日本政府は日本国民の安全保障に対して
もっと真剣に取り組むべきです。
国民が拉致されても見過ごし、
ようやく動き出したと思っても、
腰がふらつき、定見がない。
また、ああいう犯罪国家が
核開発と核ミサイルの実戦配備に狂奔しているのに、
手を出しかね、半ば放り出してる状況。
あくまでも米国頼みで
己の力量で打開しようという意志が見えません。
不誠実な政府だと思います。
本来ならば日本国政府はこの危機的状況に対して、
いかなる手段を用いても、
ありとあらゆる手法を行使してでも
国民の安全を確保すべくかけずり回るべきでしょう。
あのイスラエルを見れば分かります。
極端な例かもそれませんが
彼らの、国家と民族の生き残りにかける執念は
凄まじいものがあります。
現在、イランの核開発問題が起きて、
米国は力の比重を北朝鮮よりイランに
移してるように感じられます。
その原因の一つは、
いざとなればイスラエルが自国の安全にために
イランの核施設を攻撃することを米国は恐れているからです。
これをやられれば中東の大混乱は必至です。
イスラエルはいざとなれば必ずやります。
米国もそれを承知しているからこそ、
イランの核問題の位置づけを上げているわけです。
歴史上の国家の興亡、民族の攻防は
数え切れないほどありましたが、
国が滅びる時は自らを守る意志を失った時です。
外敵の存在よりも、内面の気概の喪失こそ問題です。
自国民を保護できない国家は
この地上に存在する値打ちがありません。
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