日米「共通戦略目標」発表・・中国封じ込めと攻守同盟
2005年 02月 20日
☆日米2プラス2 世界規模の脅威に対処
中国「封じ込め」も視野
日米安全保障協議委員会、
(2プラス2)で合意される「共通戦略目標」は、
米中枢同時テロで顕在化した世界規模の「新たな脅威」と、
北朝鮮、中国というアジア太平洋地域の「不安定要因」に、
日米がより強力に共同対処していくという、
今後の針路を明確にしたものだ。
米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)に伴う、
自衛隊と米軍の役割分担や、
個別の基地再編案を検討するうえでの「基本理念」となり、
日米同盟の強化へ向けた協議は
ようやく「出発点」(大野功統防衛庁長官)に立った。
米軍は、冷戦時代のソ連、冷戦後の地域紛争への対処から、
テロや大量破壊兵器拡散という、
「新たな脅威」への対処に転換し、
軍事革命(RMA)を背景に再編を進めている。
日米間の再編協議もこの一環で、
共通戦略目標は
「9・11後の世界に日米同盟が安全保障面で
どう立ち向かっていくのか」
(政府筋)を打ち出している。
日本政府は昨年十二月、
新たな「防衛計画の大綱」を閣議決定。
米政府も来年二月の策定に向け、
「四年ごとの国防計画見直し」の取りまとめを進める。
その過程で合意される今回の共通戦略目標は、
両政府がそれぞれ描いてきた安全保障戦略を“屋台骨”に、
認識の細部まですり合わされた。
その過程で、最大の焦点になったのが中国に関する記述だ。
昨年十一月、中国原子力潜水艦が
日本の領海を侵犯した事件を受け、
「脅威認識を明確に指摘すべきだ」
(自民党国防関係議員)との見方も浮上した。
しかし、最終的に日米が中国との協力関係を発展させ、
地域の平和と安定に建設的な役割を果たさせることで、
中台問題の「平和的解決」を図るとの記述で落ち着いた。
これは「緩やかな囲い込み戦略」だ。
中国に日米への協調路線をとるよう促すが、
ひとたび中国が挑発的な行動に出れば、
「封じ込め」へと転換する含みがある。
(産経新聞)
日米2プラス2。
日本側は、町村外相、大野防衛庁長官。
米国側は、ライス国務長官、ラムズフェルド国防長官。
この協議の内容に関しては
町村大臣・ライス長官の共同声明という形で
米国務省のサイトにすでに掲載されてます。
*Joint Statement of the U.S.-Japan
Security Consultative Committee
私は早いところ日本語で読みたかったんだけど、
外務省のサイトにはいまだ掲載されてないんですよ。
たぶん、土日だから週明けの掲載ってことでしょうね。
土日も関係なく働けよって。
あ~読みたいなあと思っていたところに
おあつらえ向きのブログが↓
*中岡望の目からウロコのアメリカ:
日米の外交・防衛協議で何が話し合あわれたのか
「2プラス2会議」後の共同声明の全文
ここで日本語訳文が全文掲載されてます。
興味のある方は参照されてください。
一応、新聞各社もあれこれ論評してますが、
*読売:アジア安定、中国に「建設的役割」要求へ
*朝日:台湾問題、中国に平和的解決要求
*毎日:中朝にらみ同盟強化 戦略目標で合意
どいつもこいつもサラリとなぞるだけで
ろくに解説になってないね。
特に読売はどうにかならんもんか。
まともなのが上記の産経の記事と、
毎日が、正式な共同声明が発表される直前に掲載した、
こっちの記事が読み応えがある↓
*日米安保協議:
共通戦略目標は朝鮮半島と台湾海峡の安定
かなりズバッと書いてます。
共同発表文に盛り込まれる、
「朝鮮半島の平和的統一」への支持は、
北朝鮮の金正日体制の崩壊を視野に入れたとみられ、
北朝鮮への影響力が大きい中国に対しても
「責任ある建設的役割」を期待する内容になる。
ハッキリ「崩壊を視野」と書いてますね。
さらに、
日米両政府の共同発表文書に
台湾海峡への警戒感が盛り込まれるのは初めて。
米国としては、日米共同対処をちらつかせて
中国をけん制するとともに、
台湾側にも自制を求める思惑がある。
戦略目標として、台湾有事での
米軍と自衛隊の協力が明記されているわけではない。
しかし、中台の緊張に備えて、
自衛隊による対米協力に布石を打つ狙いが
共同文書からはにじみ出ている。
米国は米中軍事衝突に発展しかねない台湾海峡問題を
潜在的にはより大きな脅威と見なしており、
台湾海峡をにらんだ日米同盟強化に
中国が警戒感を募らせるのは間違いない。
ここもあけすけに書いてますね~
「中台の緊張に備えて、
自衛隊による対米協力に布石を打つ狙いが
共同文書からはにじみ出ている。」
確かににじみ出てますな(笑)。
最初の産経の記事とこの毎日の記事を読めばわかるとおり、
この「2+2」の共同声明は中国への牽制球であり、
事態が悪化すれば
「中国封じ込め」に移行するという含みがある。
さらに毎日の記事は、
AP通信とワシントンポストを引用する形で、
18日付の米紙ワシントン・ポストは
「日本が米国の台湾政策に参加」
との記事を1面に掲載。
「日本は中国との争いを回避する傾向にあったが、
北朝鮮の脅威と中国の台頭への懸念が刺激となって
約60年間の平和主義を転換しようとしている」
と報じた。
さらにAP通信は
「日米は安保条約改定を議論し、
中台の緊張を初めてアジアの発火点と確認する」
とまで報道。
米国務省のバウチャー報道官は
「改定などしない」と即座に否定したが、
米国での中台問題への関心の高さを示す動きだった。
ここまで明確に書いてるね。
自分の言葉じゃなく
他人に語らせる根性が理解できないけど、
これが「普通の外交感覚」での読みってもんでしょう。
少なくとも中国と台湾はそう受け取ったでしょう。
ちなみに、これが台湾の反応↓
*アジア安保に日本積極関与 台湾、協議を注視
日本の新聞各紙はこんなものだが、
毎日が引用したワシントン・ポストは
もっとハッキリ書いてます。
以下、訳文です。
日米両国は土曜日に合意書を発表し、
台湾を相互の安全保障上の関心事項と
宣言する予定である。
この声明によって日本は中国に対抗して
台湾を擁護する立場を鮮明にすることになる。
この共同宣言では台湾の安全保障を
日米の共通の「戦略的目的」とする。
日本側の高官によれば、台湾海峡有事になれば
日本の果たせる役割には制約があるが、
共同声明は日本の果たす共同作業の基礎を
作るために有効である。
「日本は中国を友好的な国と考えているが、
同時に中国には予想しがたいところがある」
とある日本の高官は述べた。
「もしも中国が攻撃的な態度をとるのであれば、
日本はただ傍観するわけにはゆかない」
おおっ!
ここまでくれば日米の「台湾防衛宣言」ですな。
少なくとも米国のマスコミは
ここまで読んでるということ。
で、私自身のこの共同声明の感想を言いますと、
これは戦後の日米安保体制の転換です。
もっとハッキリいうならば
東アジアにおける日米の「攻守同盟」化です。
日本のマスコミはこの共同声明の
表向きのソフトな文章に幻惑されているけど、
これは日米安保条約の改変宣言に等しい。
その眼目は、
◇東アジアでの日米攻守同盟への指向。
◇世界的に、同盟の緊密化。利害共同体化。
◇北朝鮮崩壊を視野に入れ、
日米が歩調を合わせる。
中国への共同圧力。
◇日米の台湾防衛宣言。
◇事態の推移次第では「中国封じ込め」。
こんなところでしょうね。
まあ、外相・防衛庁長官レベルで
よくもこんな重要な宣言をしたなあと思うけど、
これは中国に対する配慮とジャブだろうね。
首脳会談でこれを宣言したら、
インパクトはハンパじゃなかったでしょう。
さて、なかなかヘタレ外交の日本も
たくましくなったなあと思いますが
ここで醒めた言い方をしますけど、
私は米国経済は衰退傾向にあると見ているので、
この日米同盟緊密化の成果も、
おそらく、ここ数年のあだ花で終わると思います。
最も日米同盟が華やかだった時代と
記憶されることになると思います。
まあ、日本は
衰微する米国からアジア地域の覇権と秩序を
漸進的に受け継いでいけばいいんじゃないかな。
片方の手で中国を封じ込めつつ、
もう一つの手で、アジアの覇権を
ソフトに米国から引き継いでいけばいいでしょう。
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