週刊「ホリエモン考察」vol,02・・情報の重要性とは?
2005年 02月 18日
第二弾です。
ホリエモン対フジのニッポン放送株攻防戦も
一段落をむかえたみたいで、
昨日あたりから関連ニュースがぐっと減りました。
今、焦点となっているのは
フジの25%超の株集め。
そして村上ファンド保有株の行方でしょう。
フジの25%超集めは、商法の規定によって
ニッポン放送によるフジへの議決権を消滅させる狙い。
取りあえず、いろいろ報道を見てる限りでは
これは成功しそうな雲行き。
さらにフジが各株主からかき集めれば、
上位10位の大株主だけで80%以上の保有率となる。
すると規定でニッポン放送株は上場廃止となり、
おそらくそれを見越して株価は下落、
大株主ホリエモンは大打撃を受けるというわけ。
問題は村上ファンドの所有株ですな。
2月8日のライブドアによる大量買い占めの際に、
この村上ファンド所有の18%の株が
流れたのではないかとも言われていた。
ところが下記のニュース↓
*<ニッポン放送株>村上ファンド売らず
ライブドア大購入日
村上氏は売ってなかったそうですね。
で、ここからが
フジとホリエモンによる村上ファンド株の争奪戦。
どっちに売るかで局面がガラリと変わってくる。
いろんなニュースを読んでると
「長期戦に入った」という表現が多いけど、
こういう世界は一寸先が闇。
明日にでも劇的な展開があるかもしれません。
しばらくはハラハラドキドキものです。
さて、ここからが本論です。
いくつかの章立てで話しを進めていきます。
<ホリエモンの言動>
ここでフジサンケイグループ傘下の
各会社に対するホリエモンの言動を
報道・媒体からまとめておきます。
まず、フジテレビについて。
「今やっている方々が一番良い方法を知っていて、
考えていると思う。」
「見ている人が喜ぶような番組を作ればいい。
我々がこういう番組を作れ、というものではない。」
「視聴者の意見を聞いて、視聴者が役に立つと感じる、
視聴者本位でやっていけばいいと思う。」
ここは割に殊勝ですな。
ただ、この「視聴者本位」の取り方が、
前々から書いてるように
彼の市場本位、需給本位に通じるように思う。
次に、スワローズとベイスターズ。
「会社の経営というものを考えると、
同業他社が親会社の球団の株を
持つと言うことについては
考え直した方が良いのではないかと考える。」
「どっちかに統一した方が良い。
グループでマイナーシェアな野球球団を
2つ持っている件については
考え直した方が良いと思う。」
両球団のファンはたまったもんじゃないでしょうが。
ポニーキャニオン。
「単体で持っていてもしょうがない。
それを核にして他のレコード会社や
音楽出版社をM&Aで増やしていく。」
「ポニーキャニオンを大きくしたら、
僕らは音楽配信のところで関わっていく」
さらに、フジサンケイグループの資産。
「一等地の不動産を持ってる必要はない。
東京大手町のビルやフジテレビの社屋などは
売り払えばいい。
家賃を払うことにすればいい。
売却によって得た資金は、
M&Aなどの事業投資に回す」
お台場の華麗なビルも賃貸になるわけね。
そして、産経新聞及び扶桑社。
「夕刊フジ・サンスポ・SPA!、
そういうのを合わせてエンタメ系の
強力な新聞・出版社にしたい」
「(産経は)金融・経済情報の
ニュース配信というビジネスが考えられます」
「あのグループにオピニオンは異色でしょう。」
「新聞がワーワーいったり、
新しい教科書を作ったりしても、
世の中変わりませんよ」
まあ、あれこれ言ってますが
私は別に彼の発言の全てを否定する気はない。
経営的に合理的な判断もあると思うし、
それについてはとやかく言う気はない。
問題は産経の部分です。
「正論」路線の否定です。
これが大問題です。
<ニュースの情報収集について>
ニュース報道ってものは
単純に言うと二段階に分かれる。
1,情報の収集
↓
2,情報の加工(分析・解説・批評)
もちろん、1どまりのものもある。
「A県B市の車道で、車が衝突しました。
死者は無し。怪我人一名」
こういう単純な情報は1次情報のみの解説無し。
情報の収集には一定の組織力がいる。
日本の新聞社のほんとんどが
大なり小なり通信社配信の記事に依存しているのも、
情報網が全世界に及ばないため。
おそらくホリエモンが
「産経を経済紙に」と言うのは、
この情報網を一から整備するのが難しいからでしょうね。
前々からライブドアは
「東京産業新聞」という商標を登録しているから、
経済紙を作ろうという意図は
以前から持っていたのだろう。
でも、自前の情報網構築は金がかかる。
既存の情報網をそのまま使った方が早い。
だから、産経を経済紙にしたいのでしょう。
もちろん、ライブドアは
自前の「記者」というのを採用して
あれこれとニュースを書かせちゃいるけど、
この連中は要するに「情報加工」が主。
身近な地域の情報とかは別だけど、
世界的な諸問題・世界中の情報に関しては、
記者個人でバリバリ収集できるものではない。
ライブドアの記者は投稿に対する投稿料をもらうだけ。
それ以上は何も無し。
やはり情報収集には一定の組織力が必要となる。
そこで既存の産経を改造する狙いなんだね。
<情報の重要性とは?>
ここで前回紹介したジャーナリスト江川紹子さんの
ホリエモン・インタビューを一部再掲する。
**江川紹子ジャーナル:
「新聞・テレビを殺します」~ライブドアのメディア戦略
「市民記者」を募集したりして、
新しいメディア作りに乗り出しているが、
何をやろうとしているのかを伺いたい
「あんまりそんな、肩肘張ってないんですけどね」
編集方針とかはどうするのか。
「そんなもん、何もないですよ。」
事実が確認されれば、あとはどんな話も載せる、と?
「紙面が許す限りですけどね。
あとは人気ランキングだけですよ。」
人気?
「注目度が高い記事はアクセス数が多くなる。
それを紙にする時に、見出しを大きくする。」
ある程度の方向性がないと、
何でも載せますというわけにはいかない。
「世の中の意向は
アクセスランキングという形で出てくるんですから、
その通りに順番並べればいいだけでしょ。」
例えば、イラクのこととか、
新聞ではもうあまり載らない。でも……
「いいんですよ、
(そういうことは)みんな興味ないんですから。」
ランキングは低くてもいいから入れていこうとか、
そういうことはないのか?
「ゴミみたいな記事を
無理矢理載せたってしょうがない」
フリージャーナリストで
イラクなどを取材している人がいても、
今ではなかなか大きなメディアには載らない。
そういうのを入れていこうとは思わないのか
「(この話は)重要だといって、
あえて能動的に吸い上げようと?
それって、メディアの意思が入っているじゃないですか。
人気がなければ消えていく、
人気が上がれば大きく扱われる。
完全に市場原理。
我々は、操作をせずに、
読み手と書き手をマッチングさせるだけだから。」
これを再読して思うんだけど、
この人は情報の値打ちってものが分かってない。
「人気優先」
「ランキング優先」
これを記事の掲載順位にしたらどうなるか?
ハッキリ言えるのは、
世間が好む情報が取り上げられ、
好まない情報は取り上げられない。
世間が注目する情報は取り上げられ、
世間が軽視する情報は日の目を見ない。
この観点から言うならば、
2流の情報と3流の情報の選別にはつながるでしょう。
だれがどう見てもしょうもないアホらしいニュースは
掲載されなくなってくる。
まあ、これはいいでしょう。
問題は1流の情報までが掲載されなくなること。
では、1流の情報とは何か?
それはある時点においては
その重要性が分かる人間には分かるが、
多くの人々には理解されない希少性を持った情報。
たとえば、2001年9月11日以前に、
アルカイダの組織力と戦略性を見抜いた人間がどれだけいたか?
その種のニュースが流れても
どれだけの人間がそれに振り向いたか?
少数の人間がビン・ラディンとアルカイダについて
悲鳴のような警鐘を鳴らしていたが、多くの人間は無視した。
つまり需要が無かった。
北朝鮮の核問題・拉致問題。
70年代から80年代・90年代にかけて、
この件に問題意識を持ってる人間がどれだけいたか?
中国の軍拡・覇権の伸張。
かつて日中友好の雰囲気の中で、
警鐘を鳴らす情報は無視され続けた。
そして今になって中国の脅威に怯えている。
日本のバブル崩壊と経済の低迷。
かつての80年代の絶頂期。
ハードの効率的生産と日本式経営。
貿易で稼いだ膨大な富が
行く先を失って土地になだれ込み、地価は上昇し続けた。
誰もが繁栄に酔っていたあの頃に、
警鐘鳴らすニュースや明日の停滞を予測する情報を
人々はどれだけ受け入れられたか?
例を挙げればきりがないよ。
人は往々にして現在の延長線上で未来を計る。
しかし、時として歴史は大きく転換する。
今日の常識は明日になれば
単なる固定概念に過ぎなかったと気づく。
未来への種子はあちこちに転がっている。
しかし、それは種子ゆえに
大輪の花を咲かすのか、
道ばたの雑草に過ぎないかは
なかなか分からない。
眼力を持った人間でなければ分からない。
未来の怪物は卵に潜んでるかも知れない。
それは外見だけでは分からない。
卵から孵化し、幼獣が成長し、
社会と国家を暗澹たる結末に陥れなければ、
人々はそれに気づかない。
宝石の如き1流の情報は
それを見抜ける認識力がある人間でなければ
その価値は分からない。
千人の好む情報と十人が好む情報の
どちらが価値があるか?
情報の価値とは人気で決まるものではない。
ホリエモンの言うとおり、
人気の高い情報は金銭を生む。
しかし、それが真の意味において
重要な情報とは限らない。
この人物の欠点は、
「金銭的に価値が高い=重要度が高い」
と思っていること。
私は、この人物の不明さを嗤う。
ホリエモン流でいくと
最もジャーナリズムにとって重要な役割である、
「先覚者としての警鐘」
「時代への警鐘」
というものが顧みられなくなってしまう。
ホリエモンが人気とランキングで
2流の情報をかき集め、
自前のマスメディアを作り上げるのなら
それはそれでかまわない。
勝手にすればいい。
そういうマスコミの選択肢もあっていい。
だが、それをやりたければ
新たに報道組織を作ってやってくれ。
自前で一から作ってくれ。
産経を2流マスメディアに変えるなどと
阿呆なことはやめてほしい。
質を劣化させ、金銭を生んで
あんたの懐は増えるかもしれないが、
日本のメディアは貧しくなる。
金を銀に変えるなかれ。
玉を河原の石に変えるなかれ。
黄金に銀メッキをして
劣化を喜ぶなんて馬鹿なことはやめてくれ。
*読売新聞:ライブドアVSフジテレビ
*ニッポン放送の株式買付け記者会見レポート!
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娘通信♪関連過去記事
*週刊「ホリエモン考察」vol,01・・市場という神。
*ホリエモン「産経新聞を経済誌に変える」 (-_-#)
*ライブドア社長、進取と饒舌と野心と。