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by misaki80sw

「北朝鮮始末記」その2・・中朝の間隙。

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核保有宣言をした北朝鮮ですが、
親分格であり、朝鮮戦争以来の
「血で打ち固めた友誼」である中国との関係は
日増しに悪化しています。
今日はこの両国の関係について。


私の愛読メルマガ「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」に
以下の記事が載っていた。

☆「きちがいに刃物を持たせるな!」と
 中国のチャット・ルーム

 中国は北朝鮮の六カ国無期中断を
 最初特筆して報道したが、
 核保有宣言を報じなかった。
 ようやく核保有も報じたものの、
 扱いは小さく、テレビなどは批判していない。
 ところが中国国内のインターネット世論に
 微妙な変化が出てきた事実を
 ニューヨークタイムズが見逃さなかった。
 
 舞台は2月13日の「SINA.COM」である。
 通常、中国のインターネットのチャット・ルームは
 二十四時間監視されており、国家公安部の検閲が厳しく、
 政府の方針いがいの投書は削除される。
 すべてがモニターされている状況に
 次のような投書が載ること事態が異常である。
 中国は北朝鮮の態度を腹に据えかねている証拠でもある。

 「台所のナイフは料理用であり、
 子供やきちがいが持てば、
 それ以外の目的に使用される懼れがある。
 われわれは北朝鮮が核保有することを許せない」

 むろん、北朝鮮を擁護する投書も
 SINA.COMには散見されたが、
 「敵の敵は味方であり、
 米国に挑戦する北朝鮮を我々は支援しよう」
 といった程度の感情的反米的な投書が多かった。
 
 中国の北朝鮮支援は食糧が90%、石油が50%、
 それでも金正日体制をかろうじて支援してきたが、
 最近は金体制崩壊の軍事クーデタがおこっても、
 中国は金王朝擁護に廻らないだろう、
 とする観測が強くなっていた。
 中国人の心理の変化、これは定量化できないが、
 巨大な変化への要因になりうる。

   (2月15日:通巻 第1038号)


ここで両国の関係史をおさらいしときます。

1950年の朝鮮戦争。
中国義勇軍の支援を得て、
マッカーサー率いる国連軍を
38度線までかろうじて押し返した北朝鮮。
古来からの宗主国中国と「藩国」の関係そのものだが、
この後、北朝鮮は中国一辺倒に傾斜することなく、
ソ連と中国に二股をかけ、したたかな外交を展開していく。

両者を天秤にかけ、際どいバランスを保ちながら、
中国にはソ連カードを、ソ連には中国カードをちらつかせ、
双方から援助と支援を引き出す。
ここらへんの芸当は半島国家の宿命とはいえ
見事なお手並み。

しかし、中国が文革期に突入し、長い停滞期に入ると、
ソ連に対する傾斜を深めていった。
これが逆転するのがゴルバチョフ登場以降で、
「ソ連は修正主義に堕した」と路線を転換し始める。

そしてソ連邦の崩壊。
北朝鮮は中国一辺倒となる。
いや、ならざるをえないよね。
頼れる旦那は貴方お一人よ、と。

しかし、すり寄られた中国も、
改革開放路線によって「疑似資本主義化」していく。
そして1992年、中国は韓国と国交樹立。
「この浮気者!」と怒った北朝鮮だが、
他に頼れる旦那がいるわけでもなく、
やはり中国に頼らざるをえない状態が続いている。

さて、いまだに表面上は「血の締盟」と称する両国だが、
腹の中は全く別。
特に中国の北朝鮮に対する醒めっぷりが激しい。

上記の宮崎メルマガ。
これを見ていると中国の北朝鮮に対する冷えた感情が
よく分かるね。

中国にとって北朝鮮の核開発は
飼い犬に手を噛まれた心境でしょう。
米国は中国のその種の感情を見透かした上で、
「北朝鮮の不始末は貴国の責任」と圧力をかける。

2003年2月。
中国は北朝鮮への石油パイプラインを
「事故」と称して3日間遮断して圧力をかけた。

そして2004年4月。
北朝鮮北西部の竜川駅で、
中国訪問から帰途の
金正日が乗る列車が通過してから九時間後に
謎の大爆発が起きた。

北朝鮮当局の公式発表によると、
事故で燃料タンク列車と
肥料となる硝酸アンモニウムを積んだ列車が衝突、
横倒しとなった電柱の電線がショートして火災が起き、
大爆発が起きたということだけど、
果たして本当かね?

あれの衛星写真を見たけど
大型爆弾が落ちたようなもの凄い爆発が
そういう都合のいい偶然で起きうるか?
すくなくとも金正日にしてみれば、
首のあたりがヒヤっとしたでしょう。
そして中国と自国軍部の関係を疑ったでしょうね。

結局、あの事件の真相は闇の中だけど、
私は中国が仕組んだ可能性が高いと見ている。

今、中国のネットや言論界では、
従来の北朝鮮との関係を見直す発言が盛んだとのこと。
特に両国の「血の締盟」の元となった朝鮮戦争、
これに対する中国参戦の是非をめぐり、
論戦が巻き起こっているとのこと。

参戦懐疑派の主張。

 「朝鮮戦争への参戦によって、
 中国は国連から20年にわたって排除され、
 世界との交流に重大な影響を受けた。
 中国の経済や社会進歩は著しく阻害された。」

 「朝鮮戦争以降、
 米国は戦略方針を変えて台湾擁護の姿勢を取り、
 台湾統一の目標は無期限に延期された」

要するに北朝鮮を守るために、
経済成長と台湾を捨ててしまった、ということ。

これに対して保守派は、
従来の「抗米延朝」の共産党公式見解で反撃している。

ただ、ネット上では懐疑派の意見が大勢を占めている。
特に文革期に苦難の青少年時代を過ごした世代が、
あの北朝鮮の重苦しい国家体制を嫌悪している。


さてさて、実は中国と北朝鮮は、
「中朝友好協力相互援助条約」という、
長ったらしい名前の条約を1961年に調印している。

この第2条。

 中国と北朝鮮、
 いずれかの一方の国が武力攻撃を受けた場合、
 他方の国が全力を挙げて
 軍事上その他の支援を与える。

すなわち軍事援助条項。

この条約の存在によって
北朝鮮は米韓両国に睨みをきかせてきたわけだが、
1992年の中韓の国交正常化の際に、
中国は一方的に
「北朝鮮との関係は一般的な国家関係である」と宣言し、
事実上、この第2条を死文化させてしまった。

慌てた北朝鮮は何度も繰り返し繰り返し、
この軍事援助条項の確認を求めているが、
中国は明確な回答を避け、うやむやの状態にしている。

今後、半島情勢の激変によっては、
この条項を中国は最大限利用するでしょう。
米国に対して。
韓国に対して。
そして北朝鮮に対して。

それは共通の敵に対する防衛条約でもあり、
北朝鮮に軍事介入する絶好の口実ともなる。
中国がこの条約を廃棄するわけでもなく、
死文化状態の冷凍漬けのまま放っているのも、
己の都合のいい局面で、
これを利用しようという思惑の表れでしょうね。

血の締盟から打算と制圧へ。
かつての隋や唐、そして元と清。
大陸の王朝は半島に干渉と侵入を繰り返す。
それが歴史のパターン。
今、大陸国家は半島国家に冷厳な目を向けつつある。



宮崎正弘の国際ニュース・早読み

中国「新富人」支配―呑みこまれる共産党国家
 清水 美和 (著)



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by misaki80sw | 2005-02-17 21:45 | 韓国・北朝鮮関連