米軍、占領統治の公式とは?・・「日本」体験の束縛。
2004年 12月 28日
☆「戦闘本位」から「復興」に…米国防総省の諮問委提言
米国防科学委員会(国防総省の諮問機関)はこのほど、
アフガニスタンとイラクで行われた戦争および
戦後復興の経験から、
米軍は戦闘本位になっている取り組みを改め、
復興局面に必要な計画立案と遂行能力を
強化すべきだなどとする提言を発表した。
また、過去の戦争の事例などから、
治安回復に必要な兵員数・政府職員数・民間契約業者数など、
占領機構全体の人数を算出、
戦後も秩序が維持されている国が相手であれば
人口1000人あたりに5人、
秩序が乱れた国では20人が理想とした。
人口約2400万人のイラクでは、
単純計算で48万人程度の占領統治組織が必要になるが、
現在のイラク駐留米軍は約15万人で、
米政府関係者や他の多国籍軍部隊を加えても、
人数は不足していることになる。
(読売新聞)
ラムズフェルド流のトランスフォーメーションも、
侵攻戦には抜群の威力を発揮したが、
ゲリラ掃討、占領統治には不得手だったというわけか。
戦後も秩序が維持されている国が相手であれば
人口1000人あたりに5人、
秩序が乱れた国では20人が理想とした。
この数字は興味深いね。
こういう具体的な数値を出してくるところが、
いかにも米軍ですな。
第二次大戦中に、
オペレーションズ・リサーチを用いて、
戦争を統計学的に分析した連中だもんね。
人口約2400万人のイラクでは、
単純計算で48万人程度の
占領統治組織が必要になるが、
現在のイラク駐留米軍は約15万人で、
確かに必要人数からすると過小だと思うよ。
それは素人目にもハッキリと分かる。
第二次大戦後、
米国は日本を占領統治したが、
当初の進駐軍の総兵力が43万人。
ただし、日本国内の治安が良かったため、
後に兵力は20万に減らされた。
当時の日本の総人口は7千万人弱。
上の数式を用いるならば
本来、日本占領に必要な兵力は、
◇治安が維持されてる状況:約35万人
◇治安が悪化した状況:約140万人
となる。
終戦直後の日本の軍事力は、
陸軍225万3千人、海軍125万人。
陸海軍合せて航空機1万機を保有しており、
そのうち作戦可能なものが六千機以上。
海軍は、空母2隻、巡洋艦3隻、駆逐艦30隻、
潜水艦50隻という兵力を温存していた。
この状況で43万人で進駐してきて、
治安が良好なために20万に減らす。
でも、占領統治はトントン拍子にうまくいき、
日本は米国の忠実な同盟国となったとさ。
私は思うんですが、
米国が他国を総攻撃し、降伏させ、
占領統治のうえ、自らの描いた構想のもと、
自国にとって都合のいい国家を作り上げていく。
その原体験が日本とドイツだったことが、
米国にとって不幸だったと思う。
ドイツの事情はよく知らないけど、
日本に関しては、天皇の玉音放送のもと、
マッカーサー率いる進駐軍に対し、
一部を除き、陸海軍の大半は一斉に武装解除した。
この統制のとれた動き、保たれた秩序。
そしてその後の占領統治と戦後復興。
米国にとって原体験がうまくいきすぎた。
こういうものだと思ってしまったのだろう。
彼らが荒廃した他国を復興させる時、
決まって言うセリフが「日本とドイツのような・・」。
違うよ、ちゃいますがな。
日本とドイツはそうなるべき条件が、
国民の価値観や文化・歴史に浸透してるが故に、
統制・秩序回復・復興へと道が開けていった。
だから米国も彼らの「国民性」に乗っかった形で
小規模の兵力だけで円滑な占領統治が行えた。
「日本やドイツでやれたんだ。
だから、ベトナムやイラク、
あるいはソマリアでもやれるだろう。」
・・・甘いですな。
世の中、そんなに甘くないよ。
まあ上記ニュースにもどるけど、
戦後も秩序が維持されている国が相手であれば
人口1000人あたりに5人、
秩序が乱れた国では20人が理想とした。
この公式は妥当だと思うよ。
今のイラクの状況では
どう考えても50万前後の軍は必要。
全土を制圧できるぐらいの人員規模がないと、
治安回復なんて夢の夢だと思う。