激動のウクライナ情勢:その陰には・・・。
2004年 11月 29日

☆ウクライナ国会 大統領選無効を決議
選管委員更迭、再投票へ
大統領選をめぐる混乱が続くウクライナで二十七日、
最高会議(国会、四百五十議席)が緊急招集され、
先の決選投票では大規模な不正が行われたとして
開票結果を無効とするなどとした決議を採択した。
与党側が支配する最高会議が選挙無効を宣言したことで、
当面、流血の事態は回避され、
再投票に向けて動き出すことが確実な情勢になった。
二十七日招集された同会議には、
四百三十三議員が出席した。
「決選投票の無効」の決議に次いで、
中央選挙管理委員会のメンバー十五人をすべて更迭し、
クチマ大統領が十二月一日までに与野党と協議を重ね、
新メンバーを選び、任命することを勧告した。
一部報道では「十二月中の再投票実施」が
決議に盛り込まれたとしているが、
出直し選挙については投票日の日程を含め、
決議には入れられなかったもようだ。
また、野党側が求めていた、
「十二月十二日再投票」については否決されたが、
「十二月中」とする方向で
検討が進む可能性が強いとみられている。
決議では、大規模不正の
原因のひとつとなった不在者投票を
今後は認めないよう求めている。
(産経新聞)
ウクライナ。
日本とはあんまり馴染みのない国だけど、
今回の事態でにわかに注目が集まっている。
あのチェルノブイリの原発事故と、
そしてソ連邦崩壊の元となった、
1991年8月の独立宣言以来の出来事。
構図は、
◇ヤヌコビッチ首相(54):親露派・与党候補
VS
◇ユシチェンコ元首相(50):親欧米派・野党候補
という対決。
先日のウクライナ大統領選挙。
結果はヤヌコビッチ首相の僅差の勝利だったけど、
これにユシチェンコ元首相が待ったをかけた。
「選挙結果が不正である」と。
実際に、与党派の不正はひどかったらしいね。
メディアを握っている与党は、
繰り返し自派の宣伝につとめ、
上記ニュースにあるように、
ロシア国内在住のウクライナ人のために
ロシア内に投票所を設け、不在者投票を実施した。
ロシア内に住むウクライナ人は、
大多数が親露派の与党贔屓。
これにプーチンのロシアが便宜を図り、
ロシア国内各所にウクライナ人用の投票所が作られた。
逆にポーランドなどに多数居住する、
親欧米派のウクライナ人には
全く不在投票の機会が与えられなかった。
そして、あの混乱。
大統領選後のユシチェンコ派の
◇臨時政権の樹立
◇政府主要施設の封鎖。
◇自衛軍の創設。
これにビビったヤヌコビッチ派が
妥協のために、
上記ニュースにあるように選挙の無効を宣言した。
欧露の間に挟まれたウクライナは、
それぞれの勢力の力に引っ張られ、
分裂の様相を見せ始めている。
国内西部の親欧米派と、
東部の親露派との対立の構造。
嗚呼、地政学的宿命とはこのことか・・。
・・・とまあ、これがここまでのウクライナ情勢の粗筋。
マスコミ情報のまんま(笑)。
さて、ここからが独自の巻でござい。
<ユシチェンコ元首相の毒殺疑惑>
ユシチェンコ元首相は大統領選直前の9月、
背中の激しい痛みなど原因不明の症状を訴え、
ウィーンの病院に入院した。
治療の結果は原因不明。
時が時だけに「すわ毒を盛られたか!?」
とのニュースが世界中を駆けめぐった。
実際にどんな感じかというと、
この毎日新聞の画像を見てください↓
*ウクライナ:ユーシェンコ氏の顔腫れ上がり
毒物説流れる
もっと極端なやつだと、こういう写真も。
明らかに何かがあったんでしょうね。
毒かどうかは分からないけど、
ロシアならやりそうだしね。
チェチェン問題を果敢に報道したジャーナリストが
毒を盛られて殺されたのは有名な話し。
さらにウクライナの現クチマ大統領も、
2000年に新聞記者の殺害を命じ、
その会話がネット上に晒されて窮地に陥ったことがある。
まあ、こういう国だし、
近隣のロシアもああいう国だし、
毒を盛られたって別に不思議でもなんでもない。
<大国の利害・ソロスの暗躍>
構図として、新欧米派VS親露派。
特にロシアの現政権側への肩入れも凄まじい。
ロシアとしてここは西側への最前線。
この外堀を埋められるわけにはいかない。
現に2003年、黒海の要衝グルジアで、
米国に後押しされた反体制派が、
当時のシェワルナゼ大統領を退陣に追い込んだ。
シェワルナゼは事変後、
「私は米国にはめられた」と語った。
ここのところ、黒海・カスピ海周辺の
石油・天然ガス埋蔵地帯への米国の進出は急で、
ロシアは警戒を強めている。
実はこのグルジアの政変に関しては、
私の愛読メルマガ、
「田中宇の国際ニュース解説」4月29日号に
詳しく書かれている。
*田中宇の国際ニュース解説:コーカサス安定化作戦
この中で、シェワルナゼを退陣に追いやったのは、
米国政府の策謀だけではなく、
ヘッジファンドで有名な投機家、
ジョージ・ソロスが絡んでいたとのこと。
ソロスはヘッジファンドで巨万の富を作った人物。
アジア通貨危機の際には、
その裏でソロスの投機資金が大量に動き、
マレーシアのマハティール首相に、
「悪魔」と罵られたことがある。
このソロスとグルジアの政変劇の関係は、
田中メルマガのみならず、
多くの本やネット上の論文が指摘しているところ。
ソロスはハンガリー出身のユダヤ人だが、
かねがね東欧諸国の民主化を訴えており、
その巨額の私有財産で作った、
オープン・ソサエティ財団の事務所を、
東欧諸国や旧ソ連諸国各地に作っている。
グルジアでソロスは、
財団を通じて反体制派に資金支援を行った。
これが後にグルジアの政変劇での、
反シェワルナゼ運動へと転化していった。
さて、ここらで本題に戻るが、
このメルマガ「コーカサス安定化作戦」の中で、
田中氏はウクライナに関して予言をしている。
以下、引用します。
ジョージ・ソロスは最近、
「EUは、コーカサスやウクライナ、
バルカン半島諸国など、
EU周辺の国々が安定して民主化できるよう、
支援を強化すべきだ」とする論文を発表している。
ソロス自身は、グルジアの次はウクライナで
市民組織を動員した政権転覆を
狙っていると指摘されている。
ウクライナでは今年10月に選挙があり、
これまで10年間、
政権の座にあったクチマ大統領は満期で辞任し、
後継者として首相のヤヌコビッチを
当選させようとしている。
これに対し、市民運動が推す、
若手の改革派ユシチェンコ(元首相)が
対抗馬として立候補する予定で、
世論調査ではユシチェンコが有利だが、
選挙で不正が行われて
ヤヌコビッチが勝つのではないかと懸念されている。
ソロスは、すでにセルビアとグルジアで成功した、
不正選挙を逆手に取った政権交代を、
ウクライナでも実施しようとしている。
グルジアのサーカシビリは、
ウクライナのキエフ大学の卒業で、
同級生にはウクライナの反政府運動の幹部たちが
何人もいる。
ウクライナには、
現政権を支持する愛国青年もいるようで、
3月末にソロスがキエフを訪問したときは、
「ウクライナ万歳。ソロスは出て行け」と叫ぶ若者から、
糊のようなべとべとした液体をぶちかけられている。
ソロスは、現政権が
若者をけしかけてやらせたのではないかと示唆した。
ウクライナでは最近、地方選挙が行われたが、
その選挙監視をした欧米のグループが
選挙不正があったと訴え、
アメリカ政府は「10月の大統領選挙で再び不正が
行われないように望む」という声明を発表した。
グルジアの政権転覆劇と同じ筋書きが、
ウクライナでも始まっている。
これは今年4月の記事ね。
う~ん、ドンピシャじゃないの!
田中氏のメルマガは
陰謀論の袋小路にはまりやすいとこが、
いまいち馴染めないけど、
こういう分析の鋭さはピカイチだね。
ちなみに上記の、
3月末にソロスがキエフを訪問したときは、
糊のようなべとべとした液体を
ぶちかけられている。
これは以下のニュースでどうぞ。
*ソロス氏にマヨネーズ攻撃――ウクライナ・キエフ
私はこのウクライナの混乱が報道された時から、
ユシチェンコ元首相が、
臨時政権樹立、大衆動員、議会封鎖、
そして独自軍の創設など、
あまりにも短期間で
手回しよく事を運んでるのに驚嘆していた。
もともと政治能力の高い人だし、
首相在職時は経済改革で大ナタを振るい、
停滞していたウクライナ経済を甦らせた人物。
だけど、この混乱の中の手際の良さは、
ちょっと尋常ではなさ過ぎるね。
大統領選の敗北を視野に入れ、
組織・人材、そして資金を準備していたと
考える方が無難だと思う。
裏で大国の陰あり。
そしてソロスのような怪人物の暗躍あり。
ウクライナの地政学的な位置と、
黒海の資源地帯に隣接した重要性は、
世界中の欲望と視線を集め始めている。
最初のニュースの「大統領選無効決議」で、
事は一旦沈静化するかもしれないけど、
それは一過性のものに過ぎないと思う。
この欧露の狭間の穀倉国家は、
今後、十数年に渡って揺れ続けると思う。
*田中宇の国際ニュース解説
*ウクライナ概況
*東部・南部が首相支持に結集=自治を提起も-ウクライナ
*米大統領、ウクライナ大統領選の見直し求める
*EU・ロシア首脳会談、ウクライナ情勢で見解相違
*ロシア軍特殊部隊が展開説
ウクライナ情勢憂慮か-消息筋