イラク戦争の様々な観点:大量破壊兵器とユーロ建て決済
2004年 10月 16日
☆「石油プログラム」悪用、仏露中へ不正資金
米政府のイラク大量破壊兵器報告書
米国政府がこのほど発表したイラクの
大量破壊兵器に関する報告書は、
フセイン政権が一九九〇年代から
米国主導の攻撃を受ける二〇〇三年三月まで
国連の「石油食糧交換プログラム」の悪用など
石油を使って得た約百十億ドルの不正資金を
国連幹部や安保理常任理事国のフランス、ロシア、
中国の官民への影響力行使のほか、
大量破壊兵器開発準備や通常兵器購入に
使っていた証拠を提示した。
イラク攻撃を阻止するためのこの買収工作が
フランスなどの攻撃反対を強めた効用は否定できず、
イラク開戦をめぐる国際対立の実態に
新たな光を当てたといえる。
「イラク大量破壊兵器に関する、
CIA(中央情報局)長官特別補佐官の包括的報告書」は
主眼を大量破壊兵器の備蓄の調査としているが、
全体約一千ページのうち三百ページほどは
「政権の財政と調達」とされ、
フセイン政権が国連の経済制裁の下で石油を密輸したり、
国連の「石油食糧交換プログラム」を悪用して、
不正に資金を調達し、自国への攻撃の阻止や
兵器の調達の工作に費やした実態を詳述している。
九六年末に始まった同プログラムは
イラクの石油の一定量の輸出を認め、
その代金でイラク国民の食糧や
医薬品を買うという趣旨だったが、
石油の売り手の選択はイラク側に一任され、
売買の内容を国連側が監督することもなかった。
(産経新聞)
けっこう長文のニュースなので
興味ある方は元記事をどうぞ。
このニュースに関して
2つの見方が出来ると思う。
1つは、10月6日に発表されたこの報告書が
「結局、イラクに大量破壊兵器は無かったんだ!」と
米国のイラク戦争の正当性を疑わせる結果となったため、
当初からイラク戦争賛成派だった産経新聞が、
「いや、この報告書には
他にも重要なことが書いてあるんだよ」と、
その一つとして「イラクの石油プログラム悪用」に
焦点を当てたということ。
まあ、実際に報告書の趣旨をかいつまんで言うと、
1,イラクに大量破壊兵器は無かった
2,だが、大量破壊兵器を備える意志を持ち、
そのために様々な手段を行使していた。
この二本立てなんだよね。
日本の報道は「1」の部分のみを
クローズアップしがちだったから、
別に私はイラク戦争賛成派じゃないけど、
公正を欠くのであえて書いときます。
そしてもう1つの観点は、
戦争反対国だった仏露中も、
別に、米の不義を追求する、
白馬の騎士じゃなかったということだね。
彼らにしてもこういうドロドロした裏面があったわけで、
日本の報道は、こういう側面を
もっと言わないと片手落ちだと思う。
「イラクの石油プログラム悪用」と
国連の腐敗・仏露中の不正に関しては
まあ、前々から言い尽くされてきたことで、
すでにイラク戦争前からニュースになっており、
今さら新味のあるネタではない。
米軍がバクダットに侵攻した時に
真っ先にイラク石油省の建物を押さえたのは、
単に石油関係の資料を確保するためだけではなく、
この「石油プログラム悪用」の動かぬ証拠を
握ってやろうとの意図があったと言われている。
私は、米国によるイラク侵攻の動機は
様々な意図が複合してると思ってるけど、
その中で最大の要因は、
「イラクが石油の決済をドルからユーロに切り替えたこと」
これに尽きるんじゃないかな。
2000年11月、イラクは突如として
原油取引をドル建てからユーロ建てに切り換えた。
このユーロ建て石油輸出は他国にも波及し、
イランやベネズエラにも広がっていった。
これは米国にとって大きな衝撃だったと思う。
ヨーロッパ諸国を統合して誕生したEUは
将来的に米国の大きなライバルになると見られていたし、
実際に仏独などはその意志を明確にしていたからね。
原油確保のために各国はドルを必要とし、
米国向けに財・サービスを輸出してドルを調達する。
そのドルは米国債などの購入を通じて米国に投資される。
こうやってドルを環流させることによって
製造業の衰退した米経済はなんとか成り立っている。
いわばドル循環帝国。
これが米国の現状であり、同時に弱点でもある。
サダムフセインに明確な戦略意志があったのか、
それとも単なる嫌がらせだったのか、
彼は石油の決済をユーロ建てにすることで
米国の虎の尾を踏んでしまった。
ここに戦争開戦の大きな要因があったと思う。
あらら、ニュースの趣旨から
完璧に話しがそれちゃいました。
スンマセン (^_^;)
*大量破壊兵器なかった 米イラク調査団
最終報告書、脅威の存在は認める
*石油・食糧交換プログラム 欧州企業代表が証言
「構造的な欠陥あった」
*米国を震え上がらせるイラク原油のユーロ建て輸出
*イラク侵攻とドル暴落の潜在危機