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by misaki80sw

仏国民、EU憲法を拒否・・統合化と国家主権

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EU憲法、フランス国民がノン

 欧州連合(EU)憲法の是非をめぐって
 29日に行われたフランスの国民投票は即日開票の結果、
 賛成45%、反対55%の大差で憲法批准を否決した。

 同憲法の否決はEUで初めて。
 EU憲法は全加盟国が批准しないと発効しないため、
 憲法は見直しまたは破棄に追い込まれる可能性もある。

 過去半世紀、
 欧州統合をドイツとともにけん引したフランスが
 国民投票で同憲法を否決した影響は大きく、
 欧州統合の停滞でEUは政治危機に直面することになった。

 30日未明(日本時間同日朝)に
 内務省が発表した最終集計結果(確定)によると、
 賛成は45・13%、反対は54・87%。

 今回の国民投票では、
 憲法の内容自体より、EUの行方が問題になり、
 投票率はマーストリヒト条約をめぐる国民投票、
 (1992年9月、70・51%)と
 同程度の69・74%に達した。

 有権者は、国際競争力向上のための構造改革で、
 社会福祉制度の質が低下することを恐れたうえ、
 EU拡大で中・東欧諸国からの安い労働力が流入すれば、
 現在10%超の失業率がさらに高まる、と懸念。
 特に工場労働者や農業関係者らが多数、反対に回った。

   (読売新聞)


フランスでEU憲法否決。

これにはEU統合派の面々はショック大きいだろうね。
なんせフランスはEUの先駆けにあたる、
EUSU(欧州石炭鉄鋼共同体)の頃から、
欧州統合の牽引車として統合を引っ張ってきた存在。
そのフランス国民が否定しようとは・・。

EU=欧州連合 (European Union) は
欧州統合の中心的な役割を果たしている超国家機構。

加盟国は25ヶ国。
アイルランド、イギリス、イタリア、オーストリア、
オランダ、ギリシア、スウェーデン、スペイン、
デンマーク、ドイツ、フィンランド、フランス、ベルギー、
ポルトガル、ルクセンブルク、エストニア、キプロス、
スロバキア、スロベニア、チェコ、ハンガリー、
ポーランド、マルタ、ラトビア、リトアニア。

設立に至る経緯は以下。

◇1951年:欧州石炭鉄鋼共同体 (EUSC)
        ↓
◇1958年:欧州経済共同体 (EEU)
        ↓
◇1967年:欧州共同体 (EC)
        ↓
◇1992年:欧州連合 (EU) *マーストリヒト条約

この流れで拡大してきた。

その組織構成は、

◆欧州理事会(加盟国首脳会議):最高意志決定機関

◆欧州議会:立法

◆欧州委員会:行政

◆欧州裁判所:司法


さて、今回否決されたEUの新憲法。
そもそも、どういう内容なのか?

その骨子をあげておくと、

◇欧州理事会の政策決定方式の変更

◇ヨーロッパ大統領と外相を常時設置。

◇欧州議会に一定の立法権を与える。

◇EUと加盟各国の主権の範囲を規定

◇ヨーロッパ市民基本権憲章を付記。

この5つ。

それぞれ細かく解説します。

<欧州理事会の政策決定方式の変更>

欧州理事会ってのは
EU加盟各国首脳による会議。
EUの最高意思決定機関。

ここで、EUの
外交・軍事・司法・財務・教育等の
政策を決定する。

ここは今まで全会一致で物事を決定してきた。
しかし、EU憲法では
「二重多数決方式」と言うものに変わる。

◇加盟国数の55%の賛成

◇賛成国の人口がEU総人口の65%以上

この2つをクリアしないといけない。

今、EUは25ヶ国だから
55%ってことは14ヶ国以上の賛成が必要。
さらに、この賛成各国の総人口が
EU総人口の65%以上であること。
今のEUの総人口が約4.5億人。
つまり、約3億人は必要ってこと。

この人口加味の多数決方式がミソで
大国が有利になるということ。


<ヨーロッパ大統領と外相を常時設置>

今は各国輪番制の議長のみだが、
新憲法下では大統領と外相を設置。

大統領と外相は欧州理事会の多数決により、
2年半の任期で選ばれ、1回だけ再選が可能。

大統領たって
それほどの権限があるわけではないが
対外的な顔となるし、
欧州理事会の多数決で選ばれることから
EU内の大国(仏・独・英・伊など)の影響力が増す。


<欧州議会に一定の立法権を与える>

欧州議会はEU国民の直接選挙で
選ばれた議員によって構成されている。
732議席で、任期は5年。

今までは議会に予算承認権は与えられていたものの、
政策に関しては単なる諮問機関にすぎなかった。

これが新憲法下では、立法権が与えられる。
ただし、欧州理事会の同意が必要。


<EUと加盟各国の主権の範囲を規定>

1,EUの管轄分野

  ◎ユーロ圏の通貨政策
  ◎共通通商政策、国際通商協定
  ◎関税同盟
  ◎共通漁業政策の下での海洋生物資源保護

2,EUと各国政府の共同分野

  ◎城内市場政策
  ◎自由・安全・裁判の分野
  ◎農業および漁業政策(海洋生物資源保護を除く)
  ◎運輸政策、汎欧州ネットワーク
  ◎エネルギー政策
  ◎社会政策
  ◎経済・社会・地域結束政策
  ◎環境保護政策
  ◎消費者保護政策
  ◎公衆衛生

3,EUが各国の政策の支援、調整、
  補足的な活動を行う分野

  ◎産業政策
  ◎健康保護・増進政策
  ◎教育、職業訓練、青少年保護、スポーツ
  ◎文化
  ◎市民保護


<ヨーロッパ市民基本権憲章を付記>

新憲法では、ヨーロッパ市民の基本的人権を定めた。
刑事上の適正な手続き、死刑の廃止、
プライバシー権、知的財産権の保護など。


ざっとこんなもんでしょうか。

まあ、見て分かると思うけど
この新憲法は、

 「一層の統合を深めましょうね!」

 「大国主導で運営するよ!」

という2つが眼目。

今、EUは25ヶ国に増えてしまって、
その意志決定に、いちいち全会一致でやってたら
それこそ決まるものも決まらない。

これに危機感を感じた仏・独あたりが
新憲法の制定に動いたわけだけど、
肝心のフランス国民がこれを拒否したわけね。

この後、オランダ・イギリス・チェコ、
さらにポーランドで国民投票が行われる。
ここらへんも要注目だけど、
この新憲法草案は、仮に拒否されたとしても
別に廃案になるわけではなく、
そういう規定があるわけではない。

一部を軽く修正した上で
シラクさんあたりが来年に
「もういっぺん投票やりましょう」と言っても
別段、法的には何の問題もないわけで
たぶん彼は、ほとぼりが冷めた頃に
また再投票をしようと思ってるだろうね。


さて、取りあえず、統合化の流れが
いったん頓挫してしまったEUですが、
今度は国際情勢の観点から見てみましょう。

まず、EU自体は統合が遅れるか、
あるいはこのまま中途半端な状態で固定してしまうか、
どっちかだね。

仏での国民投票による否決だけでなく、
隣国のドイツでは、シラク大統領と二人三脚で
EU統合を進めてきたシュレーダー首相が、
今、支持率が急落し、政権存亡の危機に襲われている。
これなんかもEU統合へのマイナス要因となるでしょう。

意外に、各国の国民にとって統合ってのは
国家主権制限への危機意識が強いみたいね。

私は、EUと各国のエネルギーの方向性からすると、
分裂するか中途半端に固定する可能性が半分だと思うし、、
これ以上の統合が進捗するならば
かなり中央集権的な超国家が現出すると予想します。

結局ね、各国の主権意識が強いわけです。
だから失敗する可能性も高いし、
逆に統合化に進むならば
この主権意識や各国の利害を統制しないといけなくなるから、
極端な中央集権国家が出来上がると思うよ。
案外、戦慄の強権ヨーロッパが
誕生するような気がします。

次に各国の思惑ですが、
米国とロシアはニヤリ、中国ガッカリ、
ってとこでしょうか。

米国は、EU統合化に伴い、
欧州に対して自分のコントロールが
効きづらくなることを恐れている。
イラク戦争あたりから独仏がでかい顔してるのも
このEUをバックにしてるわけで
EUの拡大・統合は米国にとってはマイナス。
さらにドルの基軸通貨の座を
ユーロに取られかねないとう恐れもあるもんね。

ロシアは自分の版図であった東欧やCIS諸国が
次々とEUに加盟していき、
自分の勢力圏が浸食されていくのを恐れている。
ロシアは自分が一方の雄だと思ってるからね。
他人の軍門に下るという発想はない。

中国は、EUの台頭により米国を牽制し、
世界を多極化の方向に持って行こうと思ってたわけで、
今回の投票結果はショックだったでしょう。
ことに武器と宇宙では
この両者は盟友の関係ですから。

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では、日本はどうか?
う~ん、難しいですね。
米国の衰退に備えて
ユーロという一時避難場所があることは望ましいけど、
EUがあんまり強力になるのも困る。
ことにEUの中枢たる仏独は
中国と密接な関係にあるわけで、
今回の投票は痛し痒しといったとこでしょうか。



欧州連合 - Wikipedia

外務省サイト:欧州連合

駐日欧州委員会代表部

EU(欧州連合)の基礎知識:All About

EU憲法草案と「小国」の懸念:
国際貿易投資研究所


EU憲法:日本国際問題研究所

ニュースにみる21世紀のヨーロッパ:
 EU憲法案の全貌



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by misaki80sw | 2005-05-31 00:08 | その他諸国・国連