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by misaki80sw

イラク情勢再激化・・移行政権と米国の泥沼

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イラク情勢が再び激化してます。

激化たって
「テロで被害」とか「米兵3名死傷」とか、
イラク発のその種の情報に
ある意味、日本人は慣れすぎてしまって
不感症気味になってる部分がありますが、
ここ数ヶ月小康状態を保っていたイラク情勢が
再び激化しつつあるのは間違いありません。

ここ数ヶ月の情勢を
ざっとおさらいしておきますと、
まず、1月末にイラク国民議会総選挙が行われ、
最大勢力であるシーア派が6割以上の議席を確保し、
第二勢力であるスンニ派は選挙をボイコット。
漁夫の利を得たのは第三勢力であるクルド人で、
シーア派に次ぐ議席を確保した。
人口比20%のスンニ派が議席数は2%、
人口比15%のクルド勢力が議席数28%。

それから3ヶ月以上もかかって組閣人事が行われ、
すったもんだのあげく5月3日に
シーア派+クルド人の二大連合による新政権が発足した。

移行政権の当面の課題は
2005年8月15日までに、
現在のイラク基本法に代わる正式・恒久憲法を
起草・発効すること。
そしてこの憲法に基づき同年12月15日までに
総選挙が実施され、正式政府が誕生する。
ここにイラク戦争後の同国復興プロセスは、
終了するというスケジュールになっている。

だが、暫定憲法である現在のイラク基本法は、
国内18州のうち3州で3分の2以上の反対がある場合、
新憲法が承認されないとの条項を持つ。
そのため各勢力が協調しなければ新憲法の承認はあり得ず、
これは数的に優位であるシーア派の権力保持を防ぐための
米国の苦肉の策でもある。

ジャアファリ首相は
4月28日に移行国民議会に閣僚名簿を提出したが、
石油相や国防相など重要ポストの人選をめぐり、
各勢力間の調整が難航。
結局、首相が国防相、
チャラビ副首相が石油相を暫定的に兼務し、
見切り発車の状態で移行政権はスタートした。

移行政権は首相を含めて計37のポストから成り、
シーア派の統一会派「統一イラク同盟」と
クルド人の統一会派「クルド同盟」のメンバーが閣僚となり、
選挙をボイコットしたスンニ派は
一部の傍流の人たちが少数加わっただけ。

イラク、閣僚宣誓式 移行政府が始動
 石油相ら先送り


で、ここから内戦が激化。
不満たらたらのスンニ派がシーア派を攻撃し、
従来からの反米武装勢力がそれに乗じるかっこうとなった。
移行政府発足後のテロによる死者は、
とうとう430人を超えてしまった。

イラク:シーア派×スンニ派、相次ぐ惨殺は憎悪の連鎖
 宗派間戦争、強まる懸念


宗派対立扇動のテロ激増 移行政府に早くも試練

イラク、3人の聖職者が暗殺される

憲法起草は「反イスラム」スンニ派参加を批判

イラクで武装勢力の攻撃激化、24人が死亡

これに危機感を抱いたライス米国務長官は
イラクを電撃訪問し、
バグダッドでジャアファリ首相と会談した。

ライス米国務長官 イラク訪問
 スンニ派取り込み促す


会談では、イラクの国内治安や憲法起草問題を協議し、
スンニ派勢力の政権への取り込みを促したとのこと。

米国としては
シーア派ではありながら世俗色の強い、
アラウィ暫定政府首相の続投を望んでいた。
しかし、アラウィ氏の「連合会派イラク」は第三党にとどまり、
閣僚には一人も加わっていない。
ここらへん米国としては失望そのものだろう。

一方の駐留米軍は、7日から14日にかけて、
シリア国境の町カイム周辺に、
海兵隊約千人と航空兵力などを投入して、
「マタドール(闘牛士)作戦」と称する大規模作戦を実施。
武装勢力125名を殺害し、39人を拘束した。

米軍がイラク西部で1週間の掃討作戦
 武装勢力125人死亡


米軍は、カイムから中部ラマディに通じる、
ユーフラテス川沿いの街道が
武装勢力の武器弾薬、資金の流入経路とみており、
今回の掃討作戦で、同経路を遮断できたとしている。
 
だが、15日も首都北方バアクーバ中心部で、
地元ディアラ県の県知事の車列を狙った、
自動車爆弾による連続自爆テロが発生。
知事は無事だったものの、計五人が死亡した。

イラク知事襲撃で犯行声明 イラク聖戦アルカイダ組織

さらに、イラク北部から
トルコへの原油パイプラインが破壊され、
原油輸出が全面的に停止した。

イラク北部からトルコへの原油輸出
 破壊攻撃で全面的に停止


また、イラク政府の高官も狙い撃ちされており、

<イラク>車で通勤中の貿易省高官が銃撃され死亡

イラク石油省高官、バグダッドで暗殺

テロリスト達の標的となっている。

このように武装勢力の活動は全く衰えておらず、
これに慌てたジャアファリ首相は13日、
北部のクルド人自治区を除く、
全土に出している非常事態宣言をさらに30日間延長した。

イラク、非常事態を再延長 半月で死者420人以上

さらに英紙「サン」に
フセイン元大統領の下着姿の写真などが掲載され、
イラク人の間で反発が強まっている。

フセイン元大統領下着姿、英紙が掲載
 「捕虜」条約に違反も


「サン」に写真を流したのは駐留米軍人とされ、
大統領を神格化して抵抗する武装勢力に
打撃を与えることが目的とのこと。
しかし、これにより反米感情が盛り上がりを見せ、
ほとんど逆効果となってしまった。

当然のことながら米軍の泥沼状態は続きそうで、
マイヤーズ統合参謀本部議長は4月12日の記者会見で、

 「武装勢力はイラクの新政権打倒を目指して攻撃している。
 この動きが3年、4年、あるいは9年か、
 いずれにせよ長く続く」

と語り、混乱の長期化という見方を示した。

もともと米軍は
ここのところ情勢が小康状態を保っていたこともあり、
イラク情勢に関しては楽観的な見方が支配的だった。
アビザイド米中央軍司令官は3月1日の上院軍事委員会で、

 「武装勢力は一般市民の支持を得られず、
 その力は衰退しつつある」

 「2005年末には、イラク政府の治安部隊が力をつけ、
 治安維持を担うことになるだろう」

と楽勝の予測をした。
まあ、大外れに外れたわけね(笑)。

この治安の悪化とシーア派・スンニ派の確執を横目で見つつ、
第三勢力であるクルド人は独立への動きを一層強めている。
彼らはその過程として自治権の強化を要求している。

その要求の内容とは、

◇10万人の兵力を持つクルド人民兵の維持。

◇民兵の指揮権をクルド自治政府が持つ。

◇中央政府の軍隊が自治区に入る場合は
 自治政府の許可を得る。

◇自治政府が徴税権を持ち、
 中央政府への納税額も自治政府が決める。

◇クルド居住区の境界沿いにある油田地帯、
 キルクークのクルド自治区への編入。

◇石油開発と輸出の主要な権限も自治政府が持つ。

これにはシーア派・スンニ派共に反発しており、
治安の悪化のからみもあって、
自派民兵集団の強化に走っている。

イラク政府はこの対応に苦慮しており、
米国も民兵集団の存続には猛反対している。


さて、就任したばかりのジャファリ首相は
早速、トルコを訪問し、
治安や経済問題を協議したとのこと。

ジャファリ首相がトルコ訪問 治安や経済問題協議

世俗的イスラム国家として
トルコが新生イラクのお手本になるということだろうか。
あるいはクルド人絡みで密約でもかわしたか。

また、隣国イランは
イラク国内のシーア派勢力の伸張にホクホク顔で
早速、外相をイラクに派遣し、
ジャアファリ首相ら移行政府幹部と会談。

イラン外相、関係改善へイラク訪問 移行政府を全面支援

イラン国境からの武装勢力の流入を阻止する、
国境管理の強化を約束するなど、
移行政府への全面支援を表明した。


さてさて、我々日本人にとっては
イラクの人名や組織名ってのは
あまりにもなじみづらく憶えづらい。

よって、ここで付録として
イラクのデータ、
主要人物名などをざっとまとめておきますね。

まず、イラク三大勢力の人口比率ですが、

◇シーア派:60%

◇スンニ派:20%

◇クルド人:15%

となってます。

次に議席の配分ですが、

◇統一イラク同盟(シーア派):140議席

 *イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)と
  アッダワ党、イラク国民会議の統一会派

◇クルディスタン同盟リスト(クルド人):75議席

 *「クルド愛国同盟」と「クルド民主党」の統一会派

◇連合会派イラク(シーア派):40議席

◇イラク人(スンニ派傍流):5議席

総議席275のうち、
シーア派が圧倒的多数です。

最後に各勢力の内訳を書いておきます。

<シーア派>

*最高権威はシスタニ師
 米軍の早期撤退を要求している。

◇イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)
  
 ◎リーダーはハキム師。

 ◎自派から副大統領としてアブドゥルマフディ氏を輩出。

 ◎親イラン

 ◎私兵集団バドル軍を抱える。

◇アッダワ党

 ◎リーダーはジャアファリ氏
  
 ◎ジャアファリ氏は移行政権の首相に就任。

 ◎私兵集団を抱える。

◇イラク国民会議

 ◎リーダーはチャラビ氏。

 ◎チャラビ氏は移行政権の副首相に就任。

 ◎弱小勢力
  
◇連合会派イラク(イラク・リスト)

 ◎リーダーはアラウィ前首相

 ◎シーア派だが世俗色の濃い政党

 ◎親米派

 ◎一人も閣僚に登用されていない。

◇サドル派

 ◎リーダーはサドル師

 ◎反米急進派

 ◎私兵集団マハディ軍を持ち、ナジャフで米軍と戦闘。

 ◎一部が「国民エリート団」として選挙に参加し三議席を獲得


<スンニ派>

*選挙はボイコット。

◇イラク・イスラム聖職者協会

 ◎イラクのスンニ派宗教指導者の連合体
 
 ◎スンニ派の最高権威機関。

◇イラク・イスラム党

 リーダーはモフセン・アブドルハミド氏

◇スンニ派宗教財団

◇旧フセイン派残党


<クルド人>

◇クルド愛国同盟(PUK)

 ◎リーダーはタラバニ氏

 ◎タラバニ氏は移行政権において大統領に就任

◇クルド民主党(KDP)

 ◎リーダーはバルザニ氏

 ◎自派からタイフール国会副議長を輩出

 ◎タイフール氏は、
  1996年にクルド民主党がフセインと手を結んで
  クルド愛国同盟を攻撃した時の司令官

◇クルド人の民兵組織は「バシュマルガ」
 兵力は10万人。


ざっとこんな感じですな。

それぞれの勢力も
かならずしも一枚岩ではなく、
穏健派・急進派に割れています。



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イラク:Terrorist or Resistance ?:
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by misaki80sw | 2005-05-23 01:52 | 中東関連・対テロ戦争