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by misaki80sw

ウズベキスタン暴動・・上海シックスの衝撃!

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無差別発砲を正当化 ウズベク暴動で大統領

 ウズベキスタンのカリモフ大統領は14日、
 記者会見し、東部アンディジャンの反政府暴動について、
 流血回避を目指し反政府勢力と交渉したが決裂、
 武力行使はやむを得ない措置だったと
 無差別発砲を正当化した。
 
 また、カリモフ政権の弾圧を恐れる数千人の避難民が
 キルギスとの国境に集結、1000人以上が越境した。
 混乱は隣国にも拡大する様相を見せている。
 
 避難民は
 キルギス南部オシ州との国境の町イリイチェフスクで、
 地元行政幹部を人質に取り、集会を開催。
 国境の川を渡るため以前に破壊された橋の修復を進めた。
 
 アンディジャン中心部では14日、
 市民数千人が再び集結。
 犠牲者の遺体を並べて政権への抗議の意思を表明した。
 市内での銃撃戦は同日朝までに終息した。

   (共同通信)


ウズベキスタン情勢は13日から
もの凄い急展開を見せている。

もともとこの事件の発端自体は
11日に市民団体が不法逮捕者の釈放を求めて
アンディジャン市の市庁舎前に座り込みを始めたのが始まりだが、
遠い中央アジアのことなので
日本のマスコミは北朝鮮と中国に忙しくて
ほとんど伝えなかった。

だから13日からいきなり、

 イスラム急進派の刑務所襲撃
      ↓
 市民5万人が市庁舎を占拠
      ↓
 治安部隊の突入と発砲
      ↓
 死者・犠牲者が多数
      ↓
 避難民がキルギス国境に殺到

これらのニュースが連鎖のように飛び込んできて
私なんか目が白黒。
「ええっ、何がどうなってんだよ!」って感じ。

もともとウズベキスタンは
カリモフ大統領の独裁長期政権で知られてきた。
この国は旧ソ連邦時代からの
旧共産党の党組織や官僚機構がほぼそのまま存続し、
共産党は「人民民主党」と名前を変えただけ。
強権政治のスタイルを継承している。

また、カリモフ政権は
イスラム急進派の弾圧でも有名で、
かねてより欧米諸国は、
この国のイスラム勢力に対する人権弾圧を非難してきた。

このウズベキスタン自体も
イスラム教スンニ派が優勢な国なのだが
アラブ諸国のようなイスラム教=国教ではなく
あくまでも世俗政党が国権を握るという図式になっている。
これは周辺諸国のキルギスやカザフスタンなども同じ。

旧ソ連時代の宗教抑圧政策で、
イスラム教の影響力は弱まり、
ソ連崩壊の時点では
これらの諸国ではコーランすら売られておらず、
サウジとイランが大量にコーランを寄付した経緯がある。


さて、この事件は
これから終息するのか、
拡大するのかは分からないけど、
その背景にあるものを観察してみましょう。

まず、カリモフ大統領としては
反政府暴動が起こった時に
彼の頭に想起したのは、
グルジア・ウクライナ・キルギスと続いた、
一連の旧ソ連諸国での革命劇でしょうね。

これについては前にも書きましたが、

キルギス革命とロシアの憂鬱・・米民主化謀略戦。

米国の謀略が背後にあることで知られている。

特にキルギスで革命が起きた後は、
ウズベキスタンを含む中央アジア諸国は
皆、疑心暗鬼に陥った。
明日は我が身か、と。

キルギス政変 周辺「独裁」国家に危機感

もともとウズベキスタンは
ロシアの影響力を薄めることが国策の一つとなっており、
米国のアフガン攻撃以来、
米軍が同国内に駐留するのを認めている。

ところが同じ米軍が駐留するキルギスでも
米国が糸を引く政変が勃発。
米軍の駐留許可程度では
米国様は許してくれないことが明らかになった。

今回のウズベキスタンの暴動に
米国が絡んでいるか否かは
今のところは情報が少なくて、なんと言えない。

また、米国発の陰謀路線とは別に
中央アジア諸国はイスラム急進派の勢力拡張に怯えている。

もともとこれらの諸国では
アフガニスタンのタリバン政権とアルカイダから
国内のイスラム反政府勢力への援助が行われ、
政権側と戦いを繰り広げていた。

ところが、米軍のアフガン侵攻で
タリバンとアルカイダが政権から追われたため、
ようやく一息つくことが出来た。

このイスラム急進勢力の封じ込めのために
中央アジア諸国がロシア・中国と結成したのが、
俗に言う「上海シックス」、
正式名称を「上海協力機構」という国際機関。

上海協力機構は
中央アジアにおける加盟各国間の
政治的安定、軍事協力、経済協力を行うことを
謳っている。

その結成への過程を書くと、

◇1996年4月

 ロシア・中国・カザフスタン・キルギスタン、
 そしてタジキスタンの5カ国は上海で首脳会談を開催し、
 各国国境地域における敵対的行動の禁止、
 軍事演習の頻度・規模の制限などを主眼とした、
 「国境地帯における軍事分野での
 信頼強化関する協定」を締結した。

 当時、これらの五ヶ国は
 通称「上海ファイブ」と呼ばれた。

◇1997年、モスクワでの会合

 「国境地帯の兵力削減に関する協定」を締結。

◇1998年、アルマトゥイでの会合

 域内各国の分離独立運動、民族的・宗教的急進派、
 テロ活動に一致して反対することで各国が合意。

◇2000年、ドシャンベでの会合

 五ヶ国以外にウズベキスタンのカリモフ大統領が
 始めてオブザーバーとして参加。

◇2001年4月、六ヶ国の外相会談

 上海ファイブへのウズベキスタンの加盟が承認された。
 これで通称「上海シックス」となった。

◇2001年6月

 上海シックスは、
 常設機関「上海協力機構(SCO)」を
 発足させることで合意。
 あわせて、テロ活動、分裂主義、宗教過激派の
 取り締まりに関する「上海条約」に調印した。

◇2002年6月、ペテルブルクでの会合。

 加盟六ヶ国首脳が「上海協力機構憲章」に調印。
 事務局を北京に置き、
 キルギスに地域反テロ機構総本部を設置することを採択。

◇2003年5月、モスクワでの会合

 反テロ協調や国連重視をうたった共同声明に調印。
 正式の国際機関への格上げを最終的に決定。
 そのために必要な意思決定機関や予算などの規定を承認し、
 初代事務局長に張徳広・駐露中国大使を任命。

 ウズベキスタンを除く5カ国は、
 反テロ合同軍事演習の実施に関する覚書に調印。

◇2003年8月

 上海協力機構による初の多国間合同反テロ軍事演習が
 カザフスタン東部の中国国境付近で行われた。
 参加将兵は千人以上。

◇2003年9月、北京での会合

 経済貿易協力や機構の機能強化を盛り込んだ文書を採択。
 域内の貿易、投資環境の改善などを盛り込んだ、
 「多国間経貿綱要」など一連の合意文書に調印した。

◇2004年6月、タシケントでの会合

 「タシケント宣言」に調印。
 タシケントに常設の「地域テロ対策機構」を設置。


まあ、こんな流れです。

見ていて、この六ヶ国が矢継ぎ早に会合を重ね、
着々と機構強化の布石を打っているのが分かるでしょう。

この上海協力機構の目的は、

1,経済協力

2,軍事協力

3,イスラム急進勢力の拡張防止

この3点にある。

特に加盟国の共通の利害となっているのが
イスラム急進勢力への対抗処置で、
上海協力機構とは何か?と問われるならば、
「イスラム対策」と単純に答えていいと思う。

ただし、加盟国には
それぞれの思惑の違いや温度差があり、
たとえばウズベキスタンは
イスラム急進派対策では一致しているものの、
これ以上の地域でのロシアの影響力増大を好まず
加盟国間の軍事協力に関しては消極的だし、
ロシアに対する牽制材料として
中国をダシに使ってる部分がある。

中国に関して特に書いておくと、
彼らが上海協力機構を熱心に進めている理由は、

◇国内のイスラム系独立運動対策
 
◇中央アジアのエネルギー資源確保

この2つ。

まず、「イスラム系独立運動対策」ですが
これは新彊ウィグル自治区での
「東トルキスタン独立運動組織」の弾圧。

カザフスタンには
東トルキスタン独立運動の秘密基地があったが
中国は上海協力機構を通じてカザフスタンの協力を得て、
独立運動の運動家達をあぶり出してきた。
現在、多くの「東トルキスタン独立運動組織」は
中央アジアを追われ、イスタンブールなどに逃れている。

次に「エネルギー資源確保」ですが、
これも中国は猛烈な勢いで進めている。

カザフスタン第二の油田の「ウゼン」。
ここで中国は、米国系石油メジャー数社と油田開発権を争ったが、
最終的に中国が入札に成功した。

このウゼン油田からは、
三千キロのパイプラインを敷設して中国西北部へ運ぶ予定。
しかも、このパイプラインを将来的には
韓国と日本まで延長する構想とか。

これ以外に中国は
カザフのアキチュビンスク油田もおさえ、
現時点でカザフスタンから鉄道輸送で
毎日9万5千バーレルの石油が中国へ輸出されている。


さて、この上海協力機構だが、
現在、瓦解か否かの瀬戸際に追い込まれている。
それは米国による一連の民主化革命で
キルギスがあっさりと陥落してしまったこと。
これに加盟各国は衝撃を受けた。

キルギス革命には米国が援助した市民団体の他に、
キルギス南部のイスラム急進派勢力が絡んでいるが、
地域の安定と各国独裁政権の相互安定、
そしてイスラム勢力の封じ込めを狙った上海協力機構が、
もろに負けたかっこうとなった。

中央アジア諸国やロシアのショック状態は
先日、記事に書きましたが、

キルギス革命とロシアの憂鬱・・米民主化謀略戦。

中国も大きな衝撃を受けている。

中国はキルギスとは直通道路が繋がっており、
キルギスでの金鉱利権を得ていた。
ちなみにキルギスのGDPの40%は金の産出で得ている。

そして中国は上海経済協力機構を通じて
キルギスへの経済援助を行っており、
02年8月には97万ドルの武器援助を実行している。

さらにキルギス政府は中国との国境地帯のうち
367平方マイルを中国に売却割譲した。
このスキャンダルはアカエフ政権の特権乱用と批判された。
また、タジキスタンも
中国へ国境の386平方マイルの土地を売却している。

この、ここ数年に渡る、
中国の中央アジアへの投資と勢力浸透が、
米国の民主革命構成と地域の不安定化によって
ふいになる可能性が出てきている。

そして今回のウズベキスタンの暴動事件。
中国は慌てただろうね。


私としては、この地域の政情と
上海協力機構が今後どうなるのか見物だと思ってるけど、
ここでシビアな言い方をさせてもらえば、
この地域の混乱は、
中国とロシアの裏庭の不安定化となり、
特に中国と対峙し始めている日本にとっては
国益的にプラスだと思う。

日本としては、
東アジア方面、台湾・東シナ海・朝鮮半島などを
中国が主攻方面と見なし、
ここに政治力・軍事力を投入している現状は好ましくない。

彼らの裏庭に当たる中央アジアの不安定化は
まさしく日本の利益となる。
こちらで中国がエネルギーを消耗することが
日本としては望ましい。



日本で報道されないアジアの動向(1)
 上海協力機構と中央アジア・新疆ウイグル自治区・その1


宮崎正弘の国際ニュース・早読み:
 中国からみた「新グレート・ゲーム」とは?


ジェトロ:加速する経済協力強化の動き
 経済的相互補完を目指す上海協力機構


現代中国事典:上海協力機構

外務省サイト:
 ウズベキスタン共和国(Republic of Uzbekistan)



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by misaki80sw | 2005-05-15 16:50 | その他諸国・国連