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by misaki80sw

ローマ法王死去・・ソ連を脅かした反共の総本山。

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ローマ法王が死去、東西冷戦終えんに貢献

 東西冷戦の終えんに重要な役割を果たし、
 宗教間の和解に努めたローマ法王ヨハネ・パウロ2世
 (本名カロル・ボイチワ)が2日午後9時37分、
 バチカン市国内の居室で死去した。
 84歳だった。

 3月31日夜に泌尿器系の感染症で高熱を出し、
 その治療中に心臓発作を起こして以来、
 重篤な状態が続いていた。
 後任の法王は、近く開かれる法王選出会議
 (コンクラーベ)で選ばれる。

 ポーランド生まれのヨハネ・パウロ2世は、
 前法王ヨハネ・パウロ1世の急死により
 1978年10月に58歳の若さで264代法王に選ばれた。

 イタリア人でない法王の誕生は455年ぶりで、
 スラブ民族としては初だった。

 就任直後から、
 祖国ポーランドでの民主化運動を精神的に支え、
 東欧諸国で共産主義政権が次々と崩壊する後押しをした。

 また、104回の外遊をこなし、
 「空飛ぶ聖座」と呼ばれ「法王外交」を展開した。
 81年には訪日している。
 米国によるイラク攻撃に強く反対するなど、
 国際政治舞台で発言を続けた。

 ヨハネ・パウロ2世は、社会問題では保守を貫き、
 同性間の結婚、人工妊娠中絶や、
 神父の結婚には反対し続けた。
 このため、ローマ法王庁内には
 「先進国の若者のカトリック離れを食い止められない」
 との批判もくすぶった。

   (読売新聞)


法王の死去。

亡くなられた当日に
こんなもの書いていいのかどうか迷ったのですが、
日本のマスコミはほとんど伝えないので
サラリと書いておきます。
「P2事件」とバチカン銀行についてです。


1982年6月18日、
ロンドンのテムズ川にかかるブラックフライアーズ橋で、
イタリアのアンブロジアーノ銀行頭取ロベルト・カルヴィが
首をつって死んでいるのが発見された。

彼は前年にイタリア当局に
不法な資金輸出の罪で逮捕され、取り調べを受けていた。
そして国外逃亡後の不可解な自殺。

1981年、イタリア財務警察の手によって、
リチオ・ジェッリなるイタリア右翼の大物が逮捕され、
ジェッリの事務所から一通の「会員名簿」が押収された。
これがイタリアのみならず
欧州各国を震撼させた「P2事件」のはじまりである。

この「P2」とは、
「ラグラバメント・ゲリー・プロパガンダ2」の略。
秘密結社フリーメーソンのイタリア支部の会員たちが、
非公式に作ったメーソン組織。

この押収されたP2会員名簿には
イタリアの政官財を網羅する962名の人物名が載っていた。
現閣僚・政府高官をはじめ、30人の軍の将軍たち、
シークレット・サービスのチーフ、
財政検査官のトップ、判事、多くの銀行家、
テレビ会社の取締役、マフィア幹部、米CIA関係者、
さらにはバチカンの高官たち。

これは一大スキャンダルとなり、
フォルラニ内閣は総辞職に追い込まれ、
イタリア政財界、そしてバチカンに根を張った、
P2の人脈と不法行為が次々と暴露されていった。

アンブロジアーノ銀行頭取ロベルト・カルヴィは
このP2の財務責任者であり、
バチカン銀行の資金を不法に輸出した罪で逮捕された。

彼のアンブロジアーノ銀行は、
バチカン銀行(IOR)の庇護のもとに、
全世界の「反共産主義」の活動組織に資金を提供していた。
カルヴィは「法王の銀行家」として、
巨額の裏金を調達するヤミの顔を持っていた。

彼は事件について黙秘し続けた。
そして国外逃亡と不可解な死。
カルヴィは、ポケットの中にレンガを入れ、
15000ドルを所持した状態で首を吊っていた。
彼は8人のポデーガードを連れ、
防弾仕様のアルファロメオに乗り、
イタリア最高の警備システムを雇っていたが、
誰も彼を守る事は出来なかった。

この死が自殺だったのか、他殺だったのか、
誰かに口を塞がれたのかは未だに不明である。


東西冷戦真っ盛りの時期に
バチカンはアメリカと並ぶ反共の総本山だった。
世界のカトリック信者総数は8億5千万人。
資産3千億ドル。
ヨハネ・パウロ2世は世界各国を飛び回り、
共産主義の非道を訴えた。

その傘下のバチカン銀行は
全世界の信徒から巨額の寄付金を集め、
世界各地の反共組織に資金を流していた。
かつて、ポーランドの反政府労組「連帯」に
米CIAと共に巨額の資金援助を行っていたのは有名な話し。

ちなみに、バチカン市国はローマ市内にあるが、
イタリアの司法権が及ばない別国扱いとなっており、
バチカン銀行にはイタリアの警察も介入できない。
そのため、資金洗浄を狙ったイタリアマフィアなどが
この銀行をよく利用している。

この法王の一連の行動は
「バチカンの東方戦略」と呼ばれ、
ソ連はこれを一大脅威と捉えていた。

1981年の
ヨハネ・パウロ2世の暗殺未遂事件の背景には、
このソ連のバチカンに対する焦慮がある。

ローマ法王暗殺未遂、KGBや「東」側機関が関与?

暗殺未遂の黒幕は共産国 法王が自伝的新著で示唆


さて、バチカンとローマ法王。
このヨハネ・パウロ2世は高徳な方だったと思うけど、
日本のマスコミが訃報ニュースで伝えるような
ただの「善良な宗教家」ではない。
国際政治の激動の中で
ローマ・カトリックの理念に基づく国際戦略を展開した、
したたかな政治家の面も併せ持つ。

まあ、本当にサラリと書きましたが、
上記の陰謀史観的な事柄に興味を持つ人は、
「バチカン・ミステリー」という本や
「法王の銀行家」という映画を見ればいいと思う。

さらに「ゴッドファーザー・パート3」なんかも、
このP2事件と前法王の暗殺疑惑にヒントを得て、
コッポラ監督が作ったもの。
「バチカンの深み」を感じるには、いい作品だと思います。



バチカン・ミステリー

法王の銀行家 ロベルト・カルヴィ暗殺事件
by misaki80sw | 2005-04-03 20:51 | その他諸国・国連