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by misaki80sw

「ベルリンの壁復活を望む」・・ドイツ、東西統合の蹉跌

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多くのドイツ人が「ベルリンの壁」復活を望む

 土曜日に発表された調査結果によると、
 冷戦の間、東西のドイツを分けていた壁が
 撤去されてから15年以上たった今、
 およそ4分の1の旧西ドイツ人と、12%の旧東ドイツ人は、
 「ベルリンの壁」を復活させて欲しいと
 思っていることが明らかになった。

 この世論調査は、西側では生活水準が低くなり、
 東側では経済混乱が起こっている状況は、
 東西ドイツ統一がもたらした高い代償だという、
 根強い抵抗感を反映している。

 また、世論調査によれば、
 旧東ドイツ人の47%が
 「西ドイツは東ドイツを植民地かのように手に入れた」
 という表現に同意している。
 これに対して、58%の旧西ドイツ人は、
 「東側は自己憐憫に浸っている」と答えている。

   (Excite ニュース)


2004年4月、
ドイツ政府は「旧東独復興の中間決算報告」を発表した。

それによると、1990年より2003年の13年間で、
旧東独復興に使われた予算は1兆2500億ユーロ。
しかし、東独側の生産性は全く高まっておらず、
経済成長は横ばい状態。
*1ユーロは約138円。

一方の旧西独側は
毎年GDPの4%、年間約830億ユーロを
東独復興のために費やし、経済は疲弊状態にある。

ドイツの経済成長率は
ここのところ4%を下回っているため、
ドイツ全体のインフラの整備や公共投資などに
重大なしわ寄せが出始めている。
ドイツは、約435万人にもおよぶ失業者を抱えており、
旧東側の失業率18.3%で
旧西側の8.4%の2倍以上と深刻な状態である。

つまり、この報告書が言わんとしてしていることは、
 
 「旧東独復興は失敗に終わった」

と、いうこと。

この事実はドイツ国民を震撼させた。
東西それぞれの国民が衝撃を受けたが、
中でも、投資元であり、
金を一方的に払い続けた西側の住民にとっては
ショックだっただろうね。

何故、失敗したか?
1990年のドイツ統一時に話しはさかのぼる。
統一前の東西ドイツの通貨レートは
1西独マルク:6東独マルク。
公式のレートはあくまでも1:1だったが、
闇の実勢レートは1:6だった。
また、東独マルクは東独内でしか使えず、
外国に持って行けば単なる紙切れでしかなかった。

それが東西ドイツ統合時に
時のコール政権の政治的配慮から
1:1の交換レートと定められた。
東独住民達は喜んで消費し、西側の文物を買いあさった。
「紙切れ」が西独マルクと同価値となった。

また、東独住民の雇用賃金や
公的保障(生活手当・失業手当等)は
同じドイツ国民であるという建前から
生産性の低さなど関係なく、西側と同一と定められた。

◇東西マルクの通貨レートは同じ

◇雇用賃金は同じ

◇公的保障も同一。

しかし、旧東独地域の生産性は低かった
東西の生産性の格差は45%の開きがあった。

で、何が起こったか?
東独の企業は資本主義社会に組み込まれ、
生産性の低さからバタバタと潰れ、
東側では失業者が急増した。

40年間、社会主義体制下にあった東独住民は
資本主義社会特有の勤勉さやタイムマネジメント、
その種の発想に欠けていた。
かつて、国が雇用の面倒をみてくれた。
100人の仕事を千人で分かち合った。
働き者も怠け者も等しく国が面倒を見てくれた。

西独側の企業にしてみれば
何を好きこのんで東独地域に進出する必要があるのか?
西側と同一賃金・同一保証で生産性の低い東独住民を雇う。
馬鹿馬鹿しい。
これならポーランドやチェコに進出した方が
よっぽど人件費が安くていい。

かくして東側企業の倒産は相次ぎ、
西側の企業は東への進出を見送った。
残ったのは東側の失業者の山である。

本来ならば、
東西に格差をつけるべきだった。
特に東側の雇用賃金を生産性に見合った形で低く抑え、
西側企業の誘致を行うべきだった。
一国の内部に先進国地域と途上国地域が
突如として生まれた状況では
「一国二制度」が取るべき選択ではなかったのか?

結局、この統一時の経済統合の失敗が
後になって響いてくる。
彼らは建前を優先させすぎた。
あるいは経済的実情よりも政治的配慮を優先した。

「基本的人権」と「同じドイツ国民」
この理念と建前のために
全てを同一にしたことの失敗である。

2004年9月、
ドイツ大統領ホルスト・コーラーは、

 旧東独地域に対しては、西に対して
 賃金などを差別化することもやむをえない。

と発言した。
ちなみにコーラーは元経済専門家である。

この発言にドイツ国内は騒然となり、
他の政治家や新聞各紙は以下のように論評した。

 「適当でない発言」

 「思慮に欠けた発言」

 「正論を述べることと、
 正義の側につくことは同一でない」

 「政治家は何を言おうが
 どんな約束をしようが許されるが、
 ただ一つ、国民のさらされている状況が
 本当はどうなっているのかという、
 真実だけは決して述べてはならない」

つまりコーラーは
言ってはならない真実を公言してしまったわけである。
誰もが人権の名の下に目を塞いでる真実を言ってしまった。
「王様はハダカ」だと。

現在、旧東独地域から西側へ、
若年層と技術者の流出が続いている。
1991年には1810万人だった東独の人口は、
今や1700万人にまで落ち込んだ。

ドイツ政府は報告書の発表後、
東独復興政策を見直し始め、
東独にまんべんなく投入していた援助金を、
政策の成功が見込まれる経済成長地域に
重点的に投資すべきだ、という意見も出始めた。

この東西ドイツの経済統合の失敗は
多くのことを示唆してくれる。
経済的実情を無視して、
「人権」を優先させることの危うさ。
政治的配慮を優先させることの危うさ。
それは、今後にあり得るかもしれない、
朝鮮半島の南北統合にも多くのヒントを与えてくれる。

かつて、かの鉄血宰相ビスマルクは

 愚者は経験から学び、
 賢者は歴史から学ぶ

と言った。

ドイツは、この手痛い「経験」から学び、
今後の復興策を転換させるべきでしょう。
また、同一の境遇にある韓国は
この「歴史」から学ぶべきでしょう。



「ドイツは苦悩する―
 日本とあまりにも似通った問題点についての考察」
 川口マーン惠美 (著)


外務省:ドイツ連邦共和国


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by misaki80sw | 2005-03-28 13:24 | その他諸国・国連