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by misaki80sw

マレーシアVSインドネシア・・石油と領土とプライド

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インドネシアとマレーシア、領有権問題で緊急外相会談

 カリマンタン島沖合の石油ガス鉱区の権益を巡り、
 インドネシアとマレーシアの両国が
 領有権を主張して艦船を派遣するなど対立している問題で、
 両国政府は9日夜、ジャカルタで緊急の外相会談を開いた。

 「平和的な話し合いで解決を図る」ことで合意、
 今月下旬から事務レベルでの外交交渉に入る。

 両外相は国際法に基づいて
 領有権問題について協議することで一致。
 専門チームを発足させ、具体的な話し合いを始める。
 問題となっているのはカリマンタン島東沖にある海域。
 両国政府が領海内と主張していたが、
 2月にマレーシアが英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルと
 同海域内の石油ガス鉱区の権益譲渡契約を結んだため、
 インドネシア側が反発。
 同国軍は艦船を出動させた。
 一方、マレーシア軍も監視を強化。
 両国の緊張関係が高まり、
 インドネシアでは抗議デモが相次いでいる。

   (日経新聞)


一応は沈静化に見えつつある両国の対立。
ざっと経緯を書いておきます。

問題となっているのは、
カリマンタン島東沖のセレベス海にある石油・ガス鉱区。
マレーシア領のシパダン、リギタン両島と
その周辺のアンバラット海域。
下記の地図を見てくださいね。

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対立はマレーシア国営の石油会社が2月中旬、
国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェル等と
鉱区の一部権益を付与する契約を結んだことがきっかけ。

もともとシバタン・リギタン両島は
マレーシア・インドネシア間で
領有権をめぐって争っていたが
2002年に国際司法裁判所の判決で
マレーシア領と認められた経緯がある。

じゃあ、マレーシア領だから
石油開発しようが何しようが
マレーシアの勝手じゃないかとなりそうなものだが、
そうはいかないのが世の中の常。

◇インドネシア:
 「裁定は領海の変更にまでは及ばない」

◇マレーシア:
 「同海域は裁定で領有権が認められた、
 2島につながる大陸棚に属し、権益譲渡は合法」

と主張は真っ二つに分かれている。

反発したインドネシア軍が艦艇4隻を現場周辺に急派、
マレーシア軍も艦艇2隻を海域に停泊させている。

事態悪化を受けてインドネシアのユドヨノ大統領は7日、
マレーシアのアブドラ首相に電話をかけ、
外相間で打開策を協議することで合意。
マレーシアのサイドハミド外相がインドネシアを訪問し、
上記ニュースの合意と相成った。

両国首脳は割合冷静なんですが、
問題は軍ですな。
ここまで緊張が高まった背景には
インドネシア軍の強硬姿勢がある。

今月7日、インドネシア軍は
「われわれは一片の領土も、
一滴の領海も外国人の手には渡さない」と強調し、
追加で艦艇3隻とF16戦闘機4機を急派した。
インドネシアは軍の力が強いからね。
特にスハルト大統領時代は、政権と軍は一体化していた。

これは単なる領土問題や資源開発問題だけじゃなくて
その背景には、2つの要因があります。

1,スハルト政権崩壊以降、東ティモールも失って
  領有権問題に神経過敏になっているインドネシア

2,出稼ぎ労働者問題により、
  両国の国民感情が対立していること。

特に2ですな。

両国は人種的には
同じマレー系を主体とする国で
言語も比較的似ている。

経済的にはマレーシアの方が一歩リードで
一人あたりのGDPは
マレーシアが約4000ドル。
インドネシアが約1000ドル。
4倍の経済的格差がある。

ただし、人口や領土の大きさは
インドネシアが圧倒的に多く、
国力的にはインドネシアの方が上であり、
そもそも同国はスカルノ大統領時代から
潜在的な「大国意識」を持っており、プライドの高い国。

しかし、経済格差というものは正直なもので、
労働力が不足しているマレーシアに
インドネシアは200万人以上の出稼ぎ労働者を送り込み、
経済的に低迷しているインドネシアにとって、
ここから得られる外貨の価値は非常に大きい。

ところが、ここ数年、
マレーシアの経済事情も悪化。
失業率も増大し、低賃金労働のインドネシア労働者の
締め出しが行われるようになった。

実は、マレーシア国内のインドネシア人労働者のうち、
その多くが不法滞在。
まあ、それを承知で雇っているマレーシア企業も悪いけど、
それやこれやを含めて
マレーシア国内での外国人犯罪は
インドネシア人が歴代トップとなっている。
なんか、こういう話しを書いてると
日本とどっかの国を連想してしまいますな(笑)。

特にマレーシア人の顰蹙をかったのが、
2002年1月の
マレーシアのヌグリスンビラン州の繊維工場で
インドネシア人労働者約500人が暴動を起こした事件。
詳細はこちらでどうぞ↓

海外労働時報:マレーシアの繊維工場で
 インドネシア人が暴動、雇用削減発表と労相謝罪


この手のインドネシア人労働者による暴動は
過去数回起きている。

マレーシア政府は、
同国内の不法滞在者の一掃を図ろうとして
昨年10月、外国人違法出稼ぎ者に対する恩赦期間を
11月14日に設定し、
それ以降の逮捕者には、禁固6月と罰金1万リンギット、
50歳以下の逮捕者にはそれに加えて
鞭打ち6回の刑を課す方針を示して帰国を促したが、
インドネシア政府が大統領選挙の実施や
準備不足を理由に延長を求めたため、12月末まで延長。
さらにスマトラ沖地震の発生で1月末までに再延長した。

逮捕者には、
禁固+罰金+鞭打ち刑というのも凄い。
ちなみにマレーシアの鞭打ち刑は悪名高く、
もともとはイギリスが植民地時代に持ち込んだ刑罰で
薬剤を滲みこませたラタン(蔦)で編んだ太い鞭で
背中を思いっきり叩くもので、
一撃されるとたいがいは失神し、
しかも一生その傷が残るといわれている。

結局、今月2日から
マレーシアは不法滞在者の一掃を開始。
警察や入管職員、ボランティア約50万人を動員して
同国内のインドネシア人も含む違法労働者の摘発に乗り出した。
これに誇り高きインドネシア国民は反発し、
さらに上記ニュースのような領土権紛争と相まって
最近、両国関係は急速に悪化した。

まあ、政治家上層部あたりは
同じASEANの友誼ってことで
事態を穏便に済ませたいんだろうけど、
問題は国民感情で、これを無視するわけにはいかない。
特に経済格差と出稼ぎ、そして不法滞在。
マレーシア国内での労使の摩擦や暴行事件は数多く、
その都度、経済的に劣位にあるインドネシア人は
屈折したものを感じている。

ところで、この両国の領土紛争だけど、
仲介者として全く日本の名前が上がってこないのは
何とも寂しい限りですな。
ASEANの枠内で解決をってことなんでしょうが、
両国共に日本の大事な友好国だし、
将来の国家戦略を見据えれば、
東南アジアの安定と、ASAN諸国との連帯は
日本の命題だと思うよ。

もし、中国あたりが仲介者として出てきて、
解決の方向に持っていったならば
日本は赤っ恥だね。
アジアの大国の名が泣くよ。



違法出稼ぎ者帰還問題:恩赦期間の延長を要請

【マレーシア】 きょう期限発表か、労働者訴追免除延長

外務省資料:マレーシア(Malaysia)

外務省資料:インドネシア共和国(Republic of Indonesia)
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by misaki80sw | 2005-03-14 21:43 | その他諸国・国連