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by misaki80sw

米国、情報機関の再編統合・・初代長官はワルの武闘派。

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初代はネグロポンテ氏 米国家情報長官

 ブッシュ米大統領は17日、
 米中枢同時テロを未然に防げなかったことを教訓に
 昨年12月に新設が決まった初代国家情報長官に
 ジョン・ネグロポンテ駐イラク大使(65)を、
 また同副長官には国家安全保障局(NSA)の
 マイケル・ヘイデン局長を指名した。
 上院の承認が必要。
 
 長官は、中央情報局(CIA)など
 米国の15の情報機関を統括するポスト。
 今回の決定により、
 米国の防衛に向けたブッシュ政権の新体制が整った。
 
 同ポストは、2001年の中枢同時テロを検証した、
 独立調査委員会の最終報告書の勧告を受け、
 ブッシュ大統領が進めた情報機関改革の目玉。

   (共同通信)


去年の7月22日。
2001年に起きた9・11テロをめぐり、
事実関係を検証してきた米議会の独立調査委員会が
最終報告書を発表した。

独立調査委員会は、
9・11テロの犠牲者遺族の要望で02年11月に設置。
メンバーは元議員や元州知事らの計10名。
9・11テロの事実関係の検証と
今後の安全対策を練り上げるために
現職の主要な閣僚らを含む約150人を
公聴会によんで徹底的に調査した。
ブッシュ大統領、チェイニー副大統領からも直接聴取。
面接調査はのべ1000人以上に及ぶ。
こういう執念というか徹底ぶりは、いかにも米国らしいね。

そして発表された報告書は、
567ページにもおよぶ分厚いもの。
クリントン前政権時までさかのぼり、
情報機関をはじめ米政府が
テロの脅威への理解が欠如していたと批判した。

この内容に米国民は衝撃を受ける。
政府のテロリストに対する安易な判断、
政府機関同士の縄張り争い、
そしてCIAやFBIなどの情報機関同士の確執。

その中で最も衝撃的な部分は、
クリントン・ブッシュ両政権が十回にわたって
テロ計画を事前に防止する機会を逃していたことだった。

たとえば、

◇CIAはウサマ・ビンラディンの
 居場所を数回正確につかんだが、
 暗殺権限がないと断念していた。

◇FBIはテロ直前に容疑者の1人を逮捕しているのに
 本格的な捜査を怠った。

◇CIAの工作員は、
 容疑者がアメリカに入国したことを知っていたのに
 FBIに通報しなかった。

◇実行犯の入国ビザ申請の不実記載を見逃し、
 一部実行犯の偽造旅券も見抜けなかった。

報告書ではこれらの失態を
事前に犯行を抑止できた「10回の機会」と呼んでいる。

結論として、
クリントン・ブッシュ両政権ともに
「脅威の重要性を認識していなかった」とし、
CIAとFBIの連携ミスなど、
「深刻な組織的欠陥」が重なったとしている。

さらに今後の対策として、
対テロ情報を集約するため国家対テロセンターを再編し、
CIAなどを含めて現在全部で15ある情報機関の
縦割りの弊害を無くすため、
閣僚級の国家情報長官(NID)の設置を提言した。

そうなんです。
上記ニュースの「国家情報長官」とは
これがきっかけで生まれたものなんですね。

現在、米国の情報機関は主なもので15存在し、
総額約四百億ドル(約四兆四千億円)の予算を使っている。

私が知ってる主なやつでも、

◇CIA:中央情報局

◇FBI:連邦捜査局

◇NSA:国家安全保障局

◇DIA:国防情報局

◇NRO:国家偵察局

◇INR:国務省情報調査局

ざっとこんな感じで、
まあ、確かに多すぎだし、
非効率ちゃあ非効率ですわね。

この国家情報長官(NID)は
年400億ドルの情報関連予算と
各情報機関の人事権を持つ。
実際の情報収集・分析は傘下の各機関が行うが、
情報長官の下に新設されるテロ対策センターが
各機関からの情報を集約し、一元管理を行う。

長官の権限はハンパじゃないね。
米国と世界のあらゆる情報を
ほとんど一人の人間で握ることになる。

ただ、不意透明な部分も多い。
情報収集はいいとして、
問題はこれら情報機関の陰の部分、
すなわち諜報工作の領域だね。
ここまで長官が統率するのか?

さて、この初代長官に指名されたオジさんですが、
この人物がなかなかに興味深いんですよ。

ジョン・ネグロポンテ氏。
1939年7月21日、ロンドン生まれ。
米エール大卒。
米外交官としてアジア、欧州各地に赴任。
国務次官補などを経て2001年から国連大使。
04年6月から駐イラク大使。

まあ、額面上はピカピカのエリート高官なんですが
実はこの人、かなりの札付き。
海千山千の強者なんですな。

2001年。
ネグロポンテ氏はブッシュ大統領によって
国連大使に指名された。
しかし、上院の猛反発を受けて、
半年間承認を得ることが出来ず、
身分が宙ぶらりんのままだった。
 
その原因は彼のホンジュラス大使時代にあった。 
ホンジュラスの反体制派狩り・人権弾圧に
ネグロポンテ氏が関与していたかが問題になったわけ。

米政府は80年代に、
ニカラグアの左翼政権を潰す秘密工作を展開していた。
ホンジュラスはその工作の本拠地のひとつで、
1984年にはニカラグアの反体制ゲリラ、
「コントラ」を訓練する施設も米国によって建設されている。
米国はホンジュラスに軍事援助を行い、
援助額は400万ドルから7740万ドルにはね上がった。

ネグロポンテ氏がホンジェラス大使を務めたのは
この秘密工作真っ盛りの1981年から85年にかけて。
この間、ホンジュラスでは反体制派狩りの嵐が吹き荒れ、
アメリカの教会関係者を含む多くの人が犠牲になり、
200名近くが行方不明となった。

ホンジュラス軍事政権による残虐行為を
ネグロポンテ氏が知らなかったはずはない。
彼の前任の大使は
軍事政権による人権弾圧を強く批判していた。
ネグロポンテ氏は虐殺を黙認していたわけね。

むしろ、黙認していたというよりも
彼は、この軍事政権に積極的に加担すべく、
米政府が送り込んだ人材なのだろう。

このネグロポンテ氏の「臭気」を嫌い、
米議会は半年に渡って国連大使就任を承認しなかった。
ところが、ここで時勢はガラリと転換する。
9・11事件である。
米議会はこの2日後に彼の国連大使就任を認めた。

そしてイラク戦争勃発とフセイン政権の崩壊。
バクダットに置かれた要塞のような米大使館に
彼らは初代大使として赴任した。
 
で、今回の初代国家情報長官に指名。
ブッシュ氏にはかなり買われているみたいだね。
何故なら、第二期のブッシュ政権の要職は
はやばやと人選が決まっていったが、
この国家情報長官だけは最後まで決まらなかった。
おそらく、イラクの議会選挙が
落ち着くのを待っていたんでしょう。
そして駐イラク大使のネグロポンテ氏を外して
初代長官に持ってくると。

このネグロポンテという男。
ホンジェラスといい、イラクといい、
必ず戦乱の巷に派遣される。
そして9・11以後の初代情報長官に指名。
修羅場に強く、荒芸をバリバリ行うタイプなんでしょうね。

私は今、日本の情報機関について
あれこれと調べている真っ最中なんですが、
この米国の情報機関の統合集約と再編。
そして初代長官のキャラクター。
なかなかに興味深いニュースですな。



論説:米テロ調査委報告書
 情報機関改革し戦略再考を


Ishikawa-News.com:
 米、57年ぶりに情報機関大再編成へ

by misaki80sw | 2005-02-19 13:14 | 米国関連