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by misaki80sw

ドイツ、苦悩の少数民族問題・・自由と権利の旗の下に。


先日、川口マーン恵美さんの
「ドイツは苦悩する」という本を読みました。

現在、ドイツが直面している課題・問題点を書いた本で、

◇高福祉予算の重圧

◇教育問題、マイスター制度の崩壊

◇離婚の激増

◇外国人移民問題

◇東独復興問題

などについて書かれてました。

この本をタネ本にして、今日はその中から、
ドイツの「外国人移民問題」について書いてみます。


ドイツは高度成長期に
トルコから多くの労働者を受け入れた。
今、そのトルコ人たちの多くは国に帰らず、
ドイツに定住し、故国から妻子・親兄弟を呼び寄せ、
さらにドイツで子供を産み、
その数は合計で260万人となっている。
そのうち、ドイツ国籍を取得した者は50万人。

この在独トルコ人だが、
積極的にドイツ社会に溶け込もうとする人と、
閉鎖的なトルコ人社会の中で暮らす人とに分かれる。
後者のトルコ人の多くがドイツ語が出来ず、
在来のドイツ人と一線を画する形で、
トルコ人租界を形成し、そこで生活している。
彼らはドイツの社会に馴染もうともせず、
たいていがドイツの「堕落した」文化を軽蔑してるとのこと。

言葉が話せなければ
ドイツ人から差別を受けることもあるだろうし、
逆に実際は差別じゃなくても
被害者意識で差別と感じてしまうことが多いだろう。
こういう土壌の中から勢力を伸ばそうとしているのが、
反西欧文化を掲げるイスラム原理主義団体。
彼らは在独トルコ人の中で一定の勢力を獲得している。

彼らはドイツ憲法の謳う自由・平等・人権の擁護には
何の興味も持とうとしない。
ただ、彼らはこの理念を利用し、
イスラム系住民の文化や慣習を認めさせ、
彼らの権利を拡張するのに熱心である。

2003年、フランスのシラク大統領が
教育の場における政教分離を徹底させるため、
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの
宗教的シンボルを公立学校で身につけることを禁じた。

これがイスラム教徒の猛反発をかった。
イスラム女性が身につけるスカーフも禁止となったためで、
フランス各地でイスラム教徒による反対デモが
繰り広げられた。

ドイツでも同様の問題が起きている。
ドイツでは州ごとに
教育現場での宗教的衣服の可否を定めているが、
1998年、バーデン・ヴェルテンベルグ州で、
このイスラムのスカーフを禁止したところ、
ドイツ国籍を持つイスラム系女教師が
この決定に反発し、訴訟沙汰となっている。

この女教師を在独トルコ人たちが支援していて、
州政府の施策に反発しているのだが、
実は驚くなかれ、トルコの学校でも
スカーフの着用は禁止されているとのこと。

トルコは第一次大戦後、
ムスタファ・ケマル・パシャの指導により、
国家の近代化と政教分離を推し進めた。
学校でのスカーフ着用禁止は
その時以来の措置だとのこと。

自国で禁止されているスカーフ着用を、
他国に来て執拗に訴える。
そんなにスカーフ着用禁止が腹が立つのなら
まず自国で訴訟を起こすのが先ではないのか?

ここらへん日本国内の某民族系団体の
参政権の主張と構図が似ていて、
私も読んでいて苦笑してしまった。

トルコ人たちがドイツにおいて、
周囲の環境にそぐわないトルコ風のモスクを建てようが、
そのモスクからコーランがボリューム全開で聞こえ、
周りに喧噪をまき散らそうが、
周辺住民の反対運動は必ずといっていいほど
裁判所の「信教の自由です」の一声で却下となる。

これはドイツ人の
ナチス時代の贖罪意識も多く関係していて、
彼らは外国人の文化・権利・価値観の尊重となると、
諸手をあげてひれ伏してしまう。

教育の場においても、イスラム教徒の親が、
学校に宗教の時間があるのなら、
キリスト教だけではなく
イスラム教も教えないと不公平だと言いだし、
いくつかの州ではイスラムの授業が始まったとのこと。

私のような門外漢から見れば
ドイツは紛れもなくキリスト教文化で成り立った国。
ドイツがイスラム化すれば、
それはもはや「ドイツ」と言えるのだろうか?
似て非なる国ではないのか?

こういう移民問題・少数民族問題・イスラム教問題は、
多かれ少なかれ欧州各国が抱えてる問題。
フランス・イギリス、さらにオランダ。
過去の植民地支配の負の遺産と左翼的な多民族主義。
そしてドイツの如く、高度成長期に安易に移民に頼ったツケ。
自由と平等と基本的人権の旗のもと、
自由民主主義国家が抱える宿命的な問題なんでしょうね。

このドイツの現状は
日本とだぶってる部分もあれば、そうでない部分もあるけど、
在日の地方参政権要求の問題や、
少子化にからむ労働移民の受け入れ問題など、
かの国の現実は日本にとって実に示唆深いものがあるね。



「ドイツは苦悩する―
 日本とあまりにも似通った問題点についての考察」
 川口マーン惠美 (著)



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by misaki80sw | 2005-02-07 22:59 | その他諸国・国連