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by misaki80sw

防衛費大幅削減!? Part,3・・軍政のデザイン(前編)

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「防衛費大幅削減!?」シリーズのパート3です。

パート1では、財務省VS防衛庁の抗争と、
官僚主導の防衛体制構築に疑問を投げ、
パート2では、MD(ミサイル防衛)導入と、
そのしわ寄せの正面装備均等縮小について書きました。

さて、自衛隊の組織と装備体系について書きます。

「財務省VS防衛庁」の削減バトルの中で、
保守層の間ではどっちかというと
同情をかっている防衛庁側ですが、
私は防衛費削減には大いに反対だし、
財務省の役人が自衛隊の装備体系を定めてしまう、
この国の馬鹿馬鹿しさに腹が立ちますが、
だからといって今の自衛隊の組織体制が
いいと思ってるわけじゃない。

削減には反対だけど、
「防衛費は聖域」というぬるま湯に浸って、
冷戦期の軍事思想を引きずってるような
今の自衛隊のあり方は大いに疑問です。


パート1でサクッと触れましたが、
軍隊の組織編成や装備を決める際には
以下の流れがあります。

政治と軍事と国家戦略の関係を具体的に書くと、

1,国家理念
   ↓
2,国家戦略
   ↓
3,軍事戦略
   ↓
4,軍事費及び組織編成・装備の策定

国家理念の追求のために国家戦略を構想し、
国家戦略の一部として軍事戦略を策定し、
軍事戦略に準拠した軍事費と組織編成を定める。

これが正しい流れですな。

分かりづらいかもしれないので
ここで100年前の日本の状況を例にとってみましょう。

1904年12月。
ちょうど日露戦争の真っ最中。
有名な旅順要塞の要衝203高地は陥落し、
要塞攻略に弾みがついた頃。
満州では日露両軍数十万が睨み合い、
ロシア軍は黒溝台への冬季攻勢の動きを見せつつある。

海上では、ロシアの極東艦隊は
旅順港に閉塞したまま全滅し、
この危難を救うべく、本国バルチック艦隊が
はるか欧亜の地から前人未到の大回航を行っている。
一方の連合艦隊は旅順沖を去り、
来るべき海戦に備えつつあった・・・。

という状況の中で、
当時の日本の、
「国家理念」
「国家戦略」
「軍事戦略」
「軍事組織・装備体系」
は、いかなるものであったか?

◇国家理念:1904

 欧米列強の脅威から国家の独立を維持する。
 内においては殖産興業によって国力を富ませ、
 外にあっては精強な国軍を編成し、国を守る。

 *この時代の日本は、
  国勢の拡張よりも、列強からの防衛的な発想が主であり、
  海外への勢力伸張を明確に志向しはじめるのは、
  日露戦争後である。
 
  維新後わずか30年にして、
  満州の荒野にて世界最大の陸軍国と激突した日本は、
  まだまだ欧米列強から比較すると
  小さな小さなアジアの新興国家に過ぎない。


◇国家戦略:1904

 外交・軍事上の最大の脅威はロシアの南下政策である。
 極東において利害を共有する英国と同盟を結び、
 ロシアに対抗する。

 
◇軍事戦略:1904

 ロシア軍の南下に対し、朝鮮半島を防衛ラインとする。
 
 いざ開戦後の戦略としては、

 陸軍:ロシア軍主力の撃滅

 兵を二軍に分け、第一軍は朝鮮半島に上陸、
 半島内のロシア駐留部隊を撃破する。
 第二軍は遼東半島に橋頭堡を立て旅順要塞を孤立させる。
 両軍は満州にて合流し、ロシア軍主力と一大会戦を行い、
 これを撃滅する。

 海軍:制海権を握り、陸軍部隊の補給戦を確保

 旅順港を母港とするロシア太平洋艦隊を撃滅し、制海権を確保。
 ロシア本国より回航する第二太平洋艦隊を迎撃殲滅する。


◇軍事組織・装備体系:1904

 陸軍:常備兵力20万人
    13個師団

 海軍:軍艦の総排水量・約26万トン
    戦艦6隻、一等巡洋艦6隻他


ざっとこんな感じですな。

反復すると、
○国家理念・・国家の独立維持。
○国家戦略・・英国と同盟し、ロシアの南下を防ぐ。
○軍事戦略・・ロシアを仮想的とし、
       朝鮮半島を防衛ラインとする。
       陸軍:満州での敵主力の撃滅
       海軍:制海権の確立、陸軍の補給線維持。
○軍事組織・装備体系・・13個師団・戦艦6隻。

これを見てると、
国家理念から軍事組織構成に至るまでの流れが、
目的主義的に先鋭化されているのが分かる。
実に無駄の無い流れだと思う。

当時の日本は新興の貧乏国であり、
乏しい国力と人的資源をやりくりせねばならず、
軍事組織に余計な予算と人力や
余分なエネルギーを使う余裕など無かった。
それゆえの目的思考のスリムな軍政だった。

兵力の13個師団と戦艦6隻体制は、
当時の日本の国力ギリギリの限界。
ロシアとの開戦が不可避との見方から、
乏しい国家予算をやりくりして編成した。


では、現代日本のパターンを考えてみましょう。

まず前提として言っておきたいのは、
以下に記すことは私自身の考えや希望じゃなくて、
日本国民の最大公約数の発想を書きます。


◇国家理念:2004

 自由主義・民主主義の国家体制と、
 資本主義経済と自由貿易による繁栄の維持。

 *他の覇権国、米国や旧ソ連のように
  自国の理念を他国に輸出しようとか、
  中国のような覇権の拡張を希求するとか、
  そういう意味のアクの強さは無いね。

  自国の事のみに汲々としてるというか。
  良く言えば「覇権を求めない」
  悪く言えば「自国のことしか考えてない」

  
◇国家戦略:2004

 米国との同盟関係を主軸とし、
 国際的地位と発言力の保持に務める。
 外交や経済協力によって友好国を増やし、
 経済交流や通商の発展に努める。

 *これが「戦略」に該当するのか分からないけど(笑)、
  取り合えず、これが国家戦略。


◇軍事戦略:2004

 柱として3つで、
 領土・領海・領空及び国家権益の防衛。
 海上通商路(シーレーン)の確保。
 日米同盟による米軍の救援。


だいたい、こんなとこでしょうか。

では、この「国家理念」「国家戦略」
「軍事戦略」に基づいて、
日本の現国力と経済規模を勘案しつつ、
「軍事組織・装備体系」を検討してみましょう。


ちょっと雑談から入ります。

今回、防衛費は大幅削減となりましたが
最後までもめたのが陸上自衛隊の定数。
防衛庁は16万人超を要求し、
財務省は12万人と譲らない。
結局、どこでどう妥協となったのか
15万5千人で落ち着いた。

で、防衛庁側は財務省案の削減に反論する根拠として
以下の3つをあげたとのこと。

1,北朝鮮の特殊部隊の脅威。
  特殊部隊対策は人員の頭数が無ければ無理

2,地震等の大規模災害時に支障が出る。

3,PKOなどの国際貢献の際に、
  12万人体制ではやりくりがきかない。

私はこれを見て思ったんですが、
薄弱たる根拠ですな。
特に2と3は理由になってないよ。
自衛隊の主任務は国家と国民の軍事的防衛でしょう。
それが本筋であって、
地震やPKOなんか理由にならんよ。

国家が膨大な金を払って軍隊を雇用しているのは、
いざ戦時に備えるためであって、
地震やPKOのためじゃない。
小銃や戦車を持ち、ミサイルや魚雷をぶっ放して
戦車や潜水艦を買い与えているのも
軍事的な防衛のためでしょう。

災害出動やPKOなんて、それは支目的に過ぎず、
だから16万じゃなきゃ嫌だって言うなら、
本末転倒だよ。
ほとんど、組織防衛のためのこじつけですな。

さて、残りの1の北の特殊部隊対応ですが、
防衛庁側は例として、
1996年の韓国での北朝鮮工作員侵入事件をあげたという。

1996年9月、韓国北東部に北朝鮮の潜水艦が侵入し、
北朝鮮の特殊部隊員ら26人が韓国に上陸した。
これに対して韓国軍は50日にわたり
約6万人を投入して包囲したが、
特殊部隊員らの反撃によって16人が殺された。

防衛庁は、この事件で少数の特殊部隊員に対し、
韓国軍が6万人を動員したことを例に挙げ、
特殊部隊対策には人員の頭数が必要との見解。

事実、ここ数ヶ月ほど、
誰かが意図的に情報を流してるのか、
「北の特殊部隊の脅威」
「それに対する自衛隊の包囲作戦」
に関する報道がけっこう流れている。

朝鮮半島有事の日米共同作戦判明
 工作員の侵入想定


日本海沿岸に警備部隊 北の侵攻想定 伊丹に移動監視隊

陸自が北朝鮮テロ対策 2500人侵入想定
 原発など135施設防衛


北朝鮮特殊部隊、5%は内陸部潜入
 十数人包囲に6千人-防衛庁シミュレーション


私は思うんですが、
逆に防衛庁に質問してみたいことが2つあります。
一つ目は、
仮に北朝鮮の特殊部隊の脅威が無いとなった場合、
陸自の定数はいくら必要だと思いますか?
10万人ですか、12万人ですか?
それともやっぱり16万人ですか(笑)?

もし、「12万人だ」との答えが返ってきたなら、
じゃあ、4万人分が特殊部隊対策なんですか?
それと、今後、北朝鮮情勢が落ち着いたら、
12万人に減らしていいわけですね?

まあ、意地の悪い質問かもしれないけど、
さらにもう一つ。
26人の特殊部隊を鎮圧するために
6万人が必要だったとのことですが、
単純な疑問で申し訳ないけど、
いつ来るか来ないか分からない26人のために、
国家は毎年、営々として6万人の軍隊を
常備し続けなければならないわけですか?

当たり前の話しをするようだけど、
国の予算は無限じゃない。
限られた金をやりくりしなきゃいけない。
これは国に限らず、企業や個人の家計もそうであって、
あれもほしい、これも必要だではきりがない。

北の特殊部隊対策のための
一定の人員が必要だとの「必要性」は理解するよ。
でも、26人に備えるために
6万人を常備するという論法は、
どう考えても効率が悪いと思うんですが・・。
軍事予算の合理性という観点からしても
無駄が多すぎだよ。

金の使い方の基本は「優先順位」でしょう。
何を優先して、何を劣後におくか。
優先度の高いものから使うべし。

日本が国家の存亡をかけた脅威にさらされるのは、

◇国土に対する正規軍の直接侵攻

◇シーレーンの途絶

◇主要都市に対する核攻撃

この3つ。

であるならば、この3つにまず備えるべき。

北と開戦して、特殊部隊が数十から数百侵入しても、
国家が滅亡するわけじゃない。
あれこれ被害は出るでしょうけど、
国の死命を制さるる状況じゃない。

で、今の国際環境からいって、
「国土に対する正規軍の直接侵攻」は考えづらい。
せいぜい、尖閣諸島に少数の中国軍が
政治的な目的で上陸する程度のオプションに過ぎない。

問題とすべきは、
「シーレーンの途絶」
「主要都市に対する核攻撃」
この2つ。
優先順位から考えれば
こっちに重点を置くべきでしょう。

もちろん、北の特殊部隊の脅威は理解できます。
私が言いたいのは、
「16万人必要」との理由付けを、

1,北の特殊部隊対策
2,災害対策
3,PKO要員の確保

な~んて、枝葉末節を挙げるなってこと。

結局、陸自自体が、
冷戦期の対ソ防衛とソ連軍侵攻への防御を
主眼とした体制から抜けきれてないんですよ。
「16万人云々」は陸自の組織防衛でしょう。

じゃあ、防衛費を削減した方がいいのか?
冗談じゃございません。
日本の地理的条件と
上記の国家戦略・軍事戦略の根本に立ち返り、
海空主体の布陣に切り替えるべし!


さて、本日はここで稿が尽きました。
今回は「前編」としておきます。
次回「後編」において
実際の自衛隊の組織体系・装備を検討してみましょう。



陸上自衛隊 - Wikipedia

陸自定数15万5000人 新防衛大綱

北朝鮮の軍事素顔1:フグ戦略 特殊部隊・兵器も選別

首相官邸:安全保障と防衛力に関する懇談会

日露戦争 - Wikipedia


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by misaki80sw | 2004-12-25 22:00 | 日本(政治経済)