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by misaki80sw

防衛費大幅削減!? Part,2・・MD導入と陸海空縮小。

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MD(ミサイル防衛システム)を基点に、
日本の軍事戦略を見つめてみたいと思います。


防衛費削減のニュースが世間を騒がしてます。
正面装備もバッサリ削られ、
虎の子の護衛艦・戦闘機・戦車も削減の嵐。

さて、今回の正面装備削減の原因は2つ。

1、財政自体が厳しい状況であり、
  予算をケチらざるをえない。

2、MD費をひねり出すため。

1の財政の厳しさは理解できる。
これだけ国が借金を抱えてれば、
ケチる気持も分からんではない。

で、2の「MD費」。
いわゆるミサイル防衛システム。
弾道ミサイルが飛んできたら、
これを迎撃ミサイルにより空中で撃ち落とす。
米国生まれのシステム。
米国がレーガン政権時代から巨額の国費を投じて開発。
2004年から本格的な実戦配備に入る。

敵の弾道ミサイルをレーダーなどで探知し、

1,発射直後の上昇時(ブースト段階)
2,大気圏外を飛行中(ミッドコース段階)
3,大気圏に再突入後(ターミナル段階)

の、3段階で迎撃する。

日本では98年の「テポドン・ショック」以来、
こいつを導入するか否かで激論が繰り広げられ、
ついに小泉・石破コンビのゴーサインで導入開始と相成った。

日本のMDは本家米国の簡素バージョンで、
敵弾道ミサイルの軌道を確認後、
大気圏外を飛行中(ミッドコース段階)に
海自のイージス艦がSM3ミサイルで迎撃する。
これを撃ち漏らした場合は、
大気圏に再突入後の着弾前(ターミナル段階)に
空自の高射部隊がパトリオットPAC3ミサイルが迎え撃つ。
二段構えの戦法。

なんだか面白そうなMDシステムだが、
これがべらぼうに金を食う。
米国の本格バージョンが10兆円。
一方、日本の簡素バージョンが1兆円である。

このうち、05年度の予算には1068億円が計上された。
で、05年の防衛費全体は4兆9028億円。
このうち武器等の正面装備が約8100億円。

つまり8100億のうち、
約1000億円がMD費に消えるわけね。
もともと少ない正面装備費のうちの
15%程度をMDに使うわけだから、
これじゃあ、
「戦闘機削れ!」「戦車削減!」ってなるよな~。

このMDはカタログデータだけ見れば、
なかなかけっこうなミサイルシステムだけど、
実際にどれだけ使えるのか疑問視されている。
MDの開発の特徴は、
言わば「研究しつつ実戦配備」という感じで、
前のめりに導入を急いでいること。
本場の米国でも「MDは使えないのではないか」
との識者のコメントが何度もニュースで流れた。
まあ、こういうシステムなんですよ、MDって。

これを巨額の歳費を使って導入するのは
一種の博打だと思うし、
私は、仮にMDが100%保証付きで、
カタログデータどおりに性能が発揮できるとしても、
こういう形での導入には反対なんです。


第一次大戦後、フランスは莫大な国費を投じて、
ドイツとの国境沿いに要塞群を構築した。
これぞ世に名高い「マジノライン」。

第一次大戦において大激戦地となった独仏国境地帯。
熾烈な塹壕戦の果てに多くの若年層を失ったフランスは、
ドイツの脅威に対抗していくには、
国境線をハリネズミのように固めるのが上策と考え、
当時の陸相マジノの名前をとって
要塞群マジノラインを建設した。

マジノラインはフランスの東部国境線760キロのうち、
独仏国境沿いの140キロを覆う長大なもので、
分厚いコンクリートの保塁が立ち並び、地下は鉄道で結ばれ、
その正面は対戦車用の鉄骨障害物が配置されていた。
108の主要塞が15kmごとに配置され、
小さな要塞と防御火点がその隙間を埋めた。

当時、マジノラインは難攻不落とされ、
正面からの攻撃には無敵を誇っていたが、
唯一の欠点は、東部国境のうちドイツ国境のみに張り巡らされ、
ベルギーとの国境には構築されなかったこと。
これは中立国ベルギーを刺激しないという政治的配慮と、
財政面からの理由だった。

1940年、ドイツ軍はフランスに雪崩れ込んだ。
一部の囮部隊をマジノラインの正面に貼り付けて、
大部分はベルギー国境を突破し、
アルデンヌの森林地帯を踏破してフランス領土内に侵入した。
ドイツ軍はそのまま首都パリを陥落させ、
フランスを降伏に追い込んだ。

この間、5月10日のドイツ軍侵攻から
フランス降伏までがわずかに一ヶ月間。
結局、難攻不落の要塞は全く役に立たなかった。
そればかりか要塞守備用に配置された8個師団は遊兵と化した。

他の兵器生産や配備までをも犠牲に建設したこの要塞線は、
莫大な国費を無意味に費やし、
後世、マジノラインといえば「無用の長物」の代名詞となった。


私は、一国の軍備体系・軍事費の中で、
一つのハードウェアや
単一のハードウェア体系への過度の傾斜は危険だと思う。

それは一種の博打に似ている。
博打を賭してまで
他国と張り合わなければならない小国ならいざしらず、
日本がこういう予算配分をする必要があるのか?

戦争とは、当たり前だけど相手がいるわけであって、
相手がまともな思考能力を持った人間ならば、
MDが待ちかまえているところに、
ミサイルを突っ込ませるような馬鹿馬鹿しいことはやらない。
逆に敵の軍備体系の裏をかこうとするでしょう。

戦略の原則の一つに、
「敵の主戦力を遊兵化させる」というものがある。
将棋で言うならば「遊び駒」を作るということ。
相手の主要な装備なり、主部隊なりを
全くの役立たず状態にしてしまえばいい。
敵国が営々と国費を投入し続けた軍備が、
そこでパァとなってしまう。


じゃあ私がMDに反対かというと
そうじゃないんですよ。
MDの必要性は認めます。
あれがカタログデータどおりの威力を発揮するのならば、
これほど頼もしい存在はない。

「対ミサイル防衛」は、
これからますます重要性が増してくる分野だと思っている。
「弾道ミサイル+核兵器」のセット装備が
北朝鮮・イラン・パキスタンなどをはじめとして、
世界各国に広がりつつあるためで、
米国はこれに神経を尖らせているが、
この流れは止まらないと思う。

まあ、上記のマジノラインに関して言えば、
あれをMDと対比させるのは、
いささか強引だというのは私も分かってます。
マジノラインは建設の時点で、
すでに旧弊の軍事思想に過ぎず、
「要塞固守」という発想自体が時代遅れだった。

要は予算配分の問題です。
単一の装備体系への過度の傾斜は危険だということ。

自衛隊の陸海空の予算配分は
陸:37%
海:23%
空:24%
残りが防衛施設庁その他の防衛庁予算。
冷戦期からずっとこの状態が続いてきた。

いかにも硬直した予算配分の見本のような話しだが、
ここにMDという金食いの要素が新たに加わった。

◇MDは必要である。
◇でも、防衛費は増やしたくない

じゃあ、どうしたかと言うと、
正面装備費の15%前後をMD費として捻出し、
その減った分を
陸海空、それぞれが均衡縮小するというやり方を取った。

戦車を944台から約600台に削減。
護衛艦を54隻から47隻に削減。
戦闘機を300機から250~260機に削減。

で、日本を取り巻く国際環境は、
平和で呑気かと言えばそうではない。
自衛隊の「業務量」自体には変化はない。
でも、装備は均等に縮小させるとのこと。

嗚呼、見事なまでの硬直配分。
陸の三割五分、海と空は二割五分。
これは不動の黄金比なんでしょうかね?
これの合理的根拠を伺いたいですな。

結局、MDを導入するならば、

1,その分の防衛費を別途増額する。

2,増額が無理ならば、
  陸海空三軍の装備や組織体系を、
  もっと日本の国家戦略や国際環境に
  合致したものに改変していく。
  費用対効果のスリムダウン。

3,1と2ともに無理ならばMDを諦めろ。

これが私の結論。

ところが現実は、

◇MDという単一のシステムに予算を傾斜させる。

◇他の分野は、重要度は変化してないのに、
 単なる均衡縮小。

この二重の愚を犯している。


MDを見つめていると、
日本の防衛戦略の愚劣な一面が見えてくる

石破前防衛庁長官が、
周囲の反対を押し切ってMDを導入したのは、
卓見だったと思うよ。
これは重要な分野だから。

でも、組織や装備体系の変更をせずに
MDだけを在来の防衛費に押し込んで、
他分野を安直にグッと圧縮したのは明らかに愚策。

防衛費が増大している時は、
総花的に組織と装備を拡張させ、
防衛費が減少するや、総花的に縮小させる。

結局、日本の問題点は、
軍事組織・装備体系というものを、
国家戦略と財政状況に合致したしたものに
改変できる人間が不在であること。
グランドデザインを描く人間の不在。
優れた軍政家の不在。
本来、ここの部分は政治家の仕事なんだけどね。


さて、次回以降に、
この「軍政のグランドデザイン」の問題を書きます。



<新防衛大綱>決定 ミサイル攻撃に弾力対応
 安保政策転換


弾道ミサイル防衛システム
 (Ballistic Missile Defence)


日本のミサイル防衛システム(BMD)

マジノ線


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by misaki80sw | 2004-12-10 19:34 | 日本(政治経済)